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NO137
2010/3/10掲載
 脳卒中や骨折後の徹底した 
  回復期リハで
 在宅社会復帰をめざす 
▼キーワードはチーム医療
 
高橋洋一先生 

聖テレジア病院院長
・神経内科
鎌倉市腰越1−2−1
TEL467−32−4125
   

 
 

 脳卒中は日本人の死因の3位ですが、寝たきりとなる原因の1位。介護の問題が大変です。
A  そうです。ある日突然大黒柱のご主人が倒れてしまった。今は血栓を溶かす薬など、脳卒中の急性期の治療はすごく進歩しました。しかし、「急性期の治療は終了したのであとは患者さん、ご家族で考えて下さい」では患者さんも家族も困ってしまいます。
 そこでできるだけ早期に、場合によっては急性期の治療と並行して迅速に回復期リハビリ(以下、リハ)を行うことが、マヒなどの後遺症を軽減し、社会復帰などの予後(治療した後の病気の見通し)を左右します。

 聖テレジア病院は、95床もの回復期リハ病棟を開設されましたね。高齢化が進み脳疾患患者さんも多い鎌倉に密着した医療に力を注いでいこうということですね。
A はい。当院は、立地条件や病院の規模などから回復期リハを含めた慢性期医療・福祉の領域で地域の皆様に責献できる病院をめざしています。
 脳梗塞の治療は、まさに時間との闘いで超急性期の治療が終わったら間断無く回復期リハの病院に転院し、徹底的なリハに専念するわけですが、急性期病院との診療レベルを含めた強い信頼関係のもとでの連携が必要ですし、あとを引き継いだ回復期リハ病院もレベルアップしてこそ最善の医療を患者さんに提供できるのです。
 当院では、脳卒中がまだ落ち着いていない場合もありますから、脳卒中のわかる神経内科専門医(2名)と骨折については整形外科専門医が担当医になってリハ医も参加し、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ケアワーカーが専従で対応します。セラピストは4月からは65人になります。
 回復期リハは1人の医者で対応できるものではなく、このようなチーム医療が欠かせません。

 大所帯でスタッフの連携も密にしないといけませんね。
A ですから、入院当日は、このチームの中に患者さん、ご家族、それに担当医(脳卒中は神経内科医、骨折等は整形外科医)とリハ医、看護師、リハセラビスト、ケアワーカー、ケースワーカーや食事を担当する栄養士が一堂に集まって合同の検討会を開き、そこで患者さんや患者さんをとりまく環境の情報を共有します。
 身体的には、急性期病院での治療内容、担当医の診察による障害の状況と、今後どのように推移するかの予測、在宅復帰のためのリハ医の処方と、それに沿ったセラピストのリハ、どういった食事が良いのか、ご家族の介護への状況など皆で評価し合います。
 こうしたことから、患者さん、ご家族に脳卒中や骨折に対する知識を得て病状を受け入れて、納得してもらいます。在宅復帰しても要介護の方には退院後の介護が必要ですし、住宅の改造にも取り組まなければならないことをしっかり理解してもらうということです。
 退院困難と思われた例で、ケースワーカーたちの努力で退院された例もあります。少子高齢化社会の中でケースワーカーや地域連携室の役割は重要となってきました。

 一般的なリハと回復期リハとの違いは?
A 回復期リハは必ずしもリハ室でやるものだけではなくて日々の入院生活そのものがリハなのです。回復期リハ病棟には訓練のために浴槽も右マヒ用と左マヒ用がありますし、セラピストがついて調理、洗濯機や掃除機を使う練習、外に出ると気持ちも晴れやかになりますから園芸療法、江ノ電の協力により障害者が安全に電車に乗る練習など…、それはたくさんあります。


 すると、リハ室から戻った患者さんがベッドで寝ているなどの光景はないわけですね。
A ほとんどありません。現在施設内のスペースを使って園芸療法を行っていますが、ゆくゆくは音楽療法や愛犬との面会もできるようにしたいのですよ。(笑)これらは患者さんの精神面でのリハと、リハへの意欲にもつながっていくものと思っています。
 また、入院中に起こる合併症については患者さんは動けないので、地域の診療所の先生に定期的に来院してもらい治療していただく登録医制度を設けています。
 特に回復期リハではチーム医療が重要です。院外の多くの医療施設との連携や院内各部署の連携です。幸い当院では院内の連携も非常にうまくいっており、皆楽しそうに誇りを持って取り組んでおります。私は当院で院長という立場になりましたが、現在、医師をはじめとした医療スタッフや事務系職員に至るまで全職員がひとつにまとまって私を支えてくれています。非常にすばらしい人たちに恵まれ感謝しています。新たな医療が成功するか否かは結局のところ、そこにいる人″によって決まるものだと思いますね。

 
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