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NO119
2008/5/10掲載

 時間が勝負の病気
冠状動脈の硬化がおこす心筋梗塞 

 
  平出 大 先生

鎌倉ヒロ病院
内科医師
鎌倉市材木座1-7-22
TEL:0467−24−717
▼血管の老朽化を進める動脈硬化は
  心臓、脳、腎臓に起こりやすい
 

 
   対応が遅れると命とりになる、時間が勝負の心臓病というとやはり心筋梗塞ですか。
A  そうですね。心筋梗塞とは、心臓を養っている冠状動脈が詰まってしまう病気ですが、詰まってから6時間経ってしまうと完全にその部分の心臓の筋肉(心筋)は死んでしまいます。逆に詰まっていた時間が短ければ短いほど助けられる心筋の量は増えます。心筋梗塞を起こした方の約2割は病院にたどり着くまでに亡くなり、病院に運び込まれても約1割の方が治療の甲斐なく亡くなってしまいます。ですから生命予後の観点からも時間が勝負の病気と言えます。
  この病気の原因は動脈硬化ですが、動脈硬化が進行すると冠状動脈の血管の壁に油かすが溜まって粥腫と呼ばれるコブができ血管の内径が狭くなって(端状硬化)ゆきます。そしてある日突然その油のコブが破裂し、その部分に血小板が集まって血の固まり(血栓)を作り出して血管をふさいでしまいます。するとその先に血液が流れなくなるので心筋が壊死を起こし、全身に血液を送り出す心臓のポンプ機能が損なわれます。これが心筋梗塞の病態です。
 
 粥状硬化を進行させる危険因子は何ですか。
A 基本的な危険因子としては、最近クローズアップされていたメタポリックシンドローム(内臓脂肪型肥満症候群)、生活習慣病(高血圧、脂質代謝異常症、糖尿病)、それに喫煙ですね。これらの危険因子が1つあれば無い人の5倍、2つあれば10倍、3〜4つ併せ持つ人では31倍に心臓病の発症リスクが増えることが研究の結果わかっています。「人は血管と共に老いる」と言われます。動脈硬化は血管の壁の老化現象なのでどんな人でも止めることは出来ませんが、老化のスピードを遅くすることはできます。顔でも実年齢より老けて見える人もいれば、若く見える人もいるように、血管の壁にも同じことが言えるのです。血管を若々しく保つには、先ほどあげた危険因子を減らしたり、コントロールしてゆくことが大事です

 血管の老朽化度を検査することはできますか。
A 簡単にできるものとしては脈波伝播速度や血管の超音波検査などがありますくその上で必要があれば運動負荷心電図検査、CT、カテーテル検査などを行うこともあります。最近はいろいろな治療法が確立され、心筋梗塞の救命率も上がってきました。
 また、心筋梗塞を起こした後の不整脈や心不全といった合併症に対しても、内服治療や運動療法によって多くの方が普通の生活を送れるようになってきました。しかし、心臓病は再発も多いのです。やはり、予防に勝る治療はありません。

 それには。
A まず、健康診断を受けることです。血液検査で危険因子のチェックを行い、太っている方は標準体重に近づけること。心臓のポンプ機能は、体重に比例しませんから、軽自動車のエンジンでトラックを動かすようなものです。これではエンジンがオーバーヒートしてしまいます。
  それに内臓脂肪は、動脈硬化を進行させる生理活性物質をどんどんつくり出し、悪玉コレステロールを増やして脂質代謝の異常を招いたり、糖代謝を司るインシュリンの働きを低下させたり、血管の収縮性にも影響を与えて血圧を上げるなどのいろいろな悪さをするのです。内臓脂肪を溜めないためにはバランスの良い食事と適度な運動が必要です。
  タバコのニコチンもまた血管を収縮させるので、血圧を上げて動脈硬化を進行させます。もちろん癌の原因でもありますし、酸素と炭酸ガスを交換する肺胞を破壊して慢性の呼吸不全を招きます。タバコは本当に百害あって一利無しなので、これを読んだ方は明日からでも禁煙して下さい。そうすればお小遣いも増えるし健康にもなるし良いことずくめでしょう。

 運動は心筋梗塞の予防になりますか。
A 体を動かさないと筋肉が落ちて基礎代謝が低下し内臓脂肪が溜まります。心肺機能も低下してしまうので、運動は是非とも生活習慣に取り入れていただきたいですね。しかし、ハードにやる必要はありません。軽く汗ばむ程度のウオーキングのような有酸素運動を1回につき20〜30分、これをできれば週3日以上行うとかなり効果的です。
  また、競技性が高くメンタル要素の強いスポーツは血圧が跳ね上がるので心臓にはあまりお勧めできません。ゴルフ場からも発作を起こした患者さんがよく運ばれて来ます。趣味はリフレッシュにはとても良いですが、あまり根を詰めずにゆったりとした気持ちで行った方が心臓にはいいですね。

 
     
 
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