NO111
2007/7/10掲載
 心筋梗塞や脳卒中を起こす 
 メタポリック症候群と言われたら 

  総エネルギーを控え、運動を習慣づける
  桑畑典広 先生

鎌倉ヒロ病院
内科医師
鎌倉市材木座1-7-22
TEL:0467-24-7171
内臓脂肪が減ると高血糖、高脂血、高血圧が改善
 

 
 


 ちょっとおなかが出てきた、血圧や中性脂肪値が高め、食後の血糖値が高いといった症状があると、メタポリック(代謝)症候群と診断されるそうですが。
 原因は主として食べ過ぎと運動不足。なかにはホルモンの異常や遺伝的な要因による肥満もありますが、現代人特有の肥満に起因する病気のことを「メタポリック症候群」 (以下、メタボ)と呼んでいます。
  そして問題となるのは、脂肪をためる場所にあります。

 というと、女性に多いヒップや太ももに蓄積する皮下脂肪型ではないのですか。
 そうです。お腹の中の腸間膜という場所に脂肪がたまる内臓脂肪型が問題なのです。
例えると、内臓脂肪のエネルギーは出し入れの簡単な普通預金のようなもので、すぐ貯まるのですが、容易に燃焼させることができます。ところが皮下脂肪は定期預金型で、いざというときに使うためのエネルギー貯蓄というわけで、それが減少するためにはエネルギーの消費が摂取を上回る時間が長く続く必要があります。

 内臓脂肪はどうして問題になるんですか。
 内臓脂肪というのは、単なるエネルギーの貯蔵庫としての役割だけではなく、血液中の遊離脂肪酸を増やしたり、さまざまなホルモンを出して体に悪さをするのです。その代表的なものにアディポサイトカイン(腫瘍壊死因子等)があります。それらの因子が筋肉を含む糖分を取り込んで消費してくれる組織でのインスリンの効果を減弱(インスリン抵抗性)させ、膵臓よりさらなるインスリンの分泌を促し(高インスリン血症)、インスリンの増加で代償できる範囲を超えると血糖値が高くなり、その結果として糖尿病(2型糖尿病)になります。
  中性脂肪が増加する原因としては内臓脂肪から多量の遊離脂肪酸が動員され、肝臓で再合成され中性脂肪となり血液中に増加します。
  原因は明らかではないのですが、高中性脂肪血症があると善玉のHDLコレステロールも減少します。これらの要因が複雑に絡み動脈硬化を進展させていきます。
  高血圧は、高インシュリン血症、交感神経系の活性化、血圧をコントロールするホルモン系の異常等が原因となり、末梢の毛細血管の抵抗が上昇、血管内の血液量が増加したりして生じます。
  内臓脂肪によるこのような危険因子がいくつも重なると、動脈硬化が進行し、心臓病(狭心症や心筋梗塞)、脳卒中(脳梗塞や脳出血)、糖尿病合併症(神経や腎臓、眼の障害)といった致死性の重大な病気を起こします。

 メタボ対策としては。
 とにかく症状の軽いうちから治療を始めて、動脈硬化をストップさせることです。
  予防医学の時代、当院でもこの7月から「メタポリック検診」をスタートさせました。
  メタボの診断は、まず腹囲(ウエスト)を測り、男性なら85cm以上、女性なら95cm以上。CTで内臓脂肪面積100cm以上。血圧は最大130mm/Hg以上、最少85mm/Hg以上。
血糖は110mg/dl以上、またはHDLコレステロール値40mg/dl未満。これらの項目で1つでも当てはまればメタボ予備軍、2つ以上だとメタボ。
  以上のデータを元に、食事療法と運動療法の具体的な方法を指導します。
  食事は事務仕事で標準体重×25`カロリーまで。ただ同じカロリーでも砂糖は内臓脂肪を蓄積しやすいので、清涼飲料水など甘い物には注意して下さい。
  栄養素の配分は、炭水化物(主食)60%、タンパク質15〜20%(植物性)、脂肪20〜25%(動物性の脂っこい食べ物は避けて、植物油または魚の脂)、食物繊維は25g以上(野菜、漬物)、果物は100`カロリー以内。アルコールは25g以下で、ビールなら1本(大)、日本酒1合。
  こうした食事療法は、生涯続けられるような現実的な内容にすることがポイントです。
  食事の偏りや体質は自分ではなかなかわかりませんから、医師や栄養士のチェックを受けましょう。
  運動療法は、筋トレで筋肉を増やすと基礎代謝が上がり、脂肪が燃焼しやすくなります。週3回、30〜60分の有酸素運動(ウォーキング、水泳など)をしましょう。
  そして、食事と運動は、生涯続けられるような無理のない生活習慣とし、定期的にチェックを受け、常に自分の体の状態を把握しておくことが大切です。

 
     
 
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