2012 2012 2011 2011  
   NO( 〜186) NO (185 〜176) NO (175〜166) NO (165〜156) NO (155〜146) NO (145〜138)  
 
NO.155号掲載

標準的な治療法としてガイドラインにものりました

Q 八尾先生は北里大学と厚労省による研究班でアレルギー性鼻炎に大変効果のある治療法の研究に携わってこられたそうですね。
 はい。きっかけは北大学の私の指導教授であった設楽哲也名誉教授が、フランスの教科書を和訳していたときに、トリクロール酸という強い酸を鼻に塗布すると鼻閉(鼻づまり)が治ると書いてあったことです。さっそくアレルギー性鼻炎の患者さんに試したら、花粉症の典型的な症状のクシャミが約60%、鼻づまりが72%、鼻水は50%改善されたのです。
 しかも、鼻づまりが原因のいびきに悩んでいた患者さんがいびきをかかなくなったという結果も出ました。

Q でも、強い酸を塗ると痛いでしょうね。
 そのまま直に塗ると痛いので、まず麻酔薬を綿棒かスプレーで吹きつける表面麻酔をします。その上で、鼻の片側ずつ塗布して、その日は何もしないでお休みし、次の日から積極的に鼻をかんで、酸で焼灼(しょうじやく)し、変性したタンパクをどんどん取ってしまおうというわけです。

Q 出血しないのですか。
 鼻をかんだ時に鼻汁に少し血液が付着する程度です。それで2週間もすると、どこを治療したのかと思うほどきれいに治っています。

Q 誰でも受けられる治療ですか。
 いや、条件があります。鼻中隔が琴曲している人は、綿棒が入りにくいし、治療後粘膜への刺激も強くなるので向きません。その他、極端に鼻の狭い人(女性に多い)、18歳未満のお子さんも難しいですね。
 この治療は耳鼻科の医師なら誰でもできるので汎用性があると思います。

スギ花粉症は現代病

Q 日本人の5人に1人がかかるといわれるほど花粉症患者は増えていますが、その原因は。
 戦後植えた木が成熱して、スギ花粉をまき散らす環境になったこともありますが、私はもう一つ、その背景にストレス社会があると思います。肉体労働が減って自律神経失調症を起こしやすい生活、成熟社会での飽食、体調に対する過剰反応が不安を増長するなどがその要因です。
 とくに都市部では3人に1人といわれるほど、花粉症に悩む方は多いですね。花粉症はアレルギー反応で外から入った物質が体内のタンパクと結合すると、それを異物と思って自分で自分の体に対し抗体をつくり攻撃し出すのです。花粉症の病態は、このアレルギーの中でも最も単純な反応なんですね。
 治療したところは、アレルギーの関与しない上皮細胞が再生されることも病理学的な検査でわかりました。つまり、免疫学的な環境が変化したと確認できたわけです。
 最も改善率の低かった鼻水には、抗アレルギーのお薬を積極的に使うと事う併用療法をお勤めしています。
 お薬も眠気などの副作用の少ない、1日1回就寝前に飲めばよいといった利便性の高い、いい薬が開発されています。

マスク、ヨーグルは効果がない

Q やはり先手必勝で、シーズン前から治療を始めた方がいいのでしょうか。
 そうした考えもありますが、その年の花粉の状況によって症状の程度も変わり、必ず重症になるといった規則的なものではありません。
 治療は、目にかゆみが出たり、鼻がムズムズし始めたらお薬を飲めばいいと思います。
 しかし、症例によっては鼻汁症状といった単純な症状からはじまる重篤な鼻・副鼻腔の病気が隠れていることもあります。ですから、自己判断で一般用医薬品を使用する前に、まず医療機関の受診をお勧めします。

Q マスクやゴーグルの予防効果は。
 厚労省の研究班で、マスクやゴーグルの効果を調べた先生がいましたが、まったく意味が無いということでした。でも鼻洗は効果があります。

NO.154号掲載

「日本人の死因第1位のがんを除けば脳と心臓病は血管系で、全部血液がからんでいます。糖尿病、高血圧、高脂血症のコントロールが大事です」

軽度認知機能障害の診断
1. 本人もしくは家族から物忘れの訴えがある
2. 年齢による影響以上の記憶障害を認める
3. 全般的な認知機能は正常範囲内である
4. 日常生活動作は障害されてない
5. 認知症の診断基準は満たさない

健康十訓(10少10多)
  @少肉多菜
  A少塩多酢
  B少糖多果
  C少食多嚼
  D少車多歩
  E少衣多浴
  F少煩多眠
  G少恕多笑
  H少欲多施
  I少言多行

脳細胞は毎日10〜20万個壊れる

Q なぜ、歳をとると記憶障害が起こるのですか。
 160億個あるといわれる脳細胞は加齢とともに毎日10万〜20万個位壊れているようです。その結果脳は萎縮し、徐々に脳機能は低下してきます。つまり加齢により神経細胞、特に記憶機能に関係のある海馬の細胞が壊れることが認知症の一番の危険因子ということです。
 認知症の約半分はアルツハイマー型です。脳細胞の機能低下により新しいことが覚えられない、周囲で起こっていることが把握できないので正しい判断が出来なくなります。
 大事なのは記憶障害が老化現象なのか、病気によるものかを見分けることです。

Q 認知症と判定する基準は。
 数値ではっきり表せるものではないので、問診、記憶や計算などのテスト、画像診断などを組み合わせて評価します。
 特に、画像診断技術が進歩し、脳の活動状況を詳しく調べることができるようになりました。
 脳の萎縮や脳血流の状態などから認知症を起こしている原因となる病気を特定することも可能となっています。

早期の治療開始はど効果が高い

Q 早期診断のメリットは。
 脱落したり、血流が滞って死んだ脳細胞は再生しません。ですから現在では認知症は治すのではなく、進行を遅らせるための薬を使います。
 正常な状態と認知症との間に、軽度認知障害(MCI)の時期があり、その50%は認知症に移行すると言われているので、その時点で認知症の治療を始めると認知症患者は減らせます。認知症の後期になるともう進行は止められませんから。
 認知症は進行すると、記憶障害等の症状の他妄想、徘徊、不安、抑うつ等いろいろな症状が現れ、種々の介護が必要になってきます。
 私の外来でも、50代で親の面倒をみるため仕事を辞めた人がいますが、初期段階で治療していれば介護の手間もそんなにかからないで済んだかも知れません。

進行抑制は薬と生活様式の改再で

Q この7月にアルツハイマー病の新薬が発売されましたね。
 12年ぶりに経口薬2剤のメマンチン(メマリー)、ガランタミン(レミニール)と皮膚に貼るリバスチグミン(イクセロンパッチ)、の新薬が出て、治療に広がりが出ました。これらの新薬と従来からのアリセプトで病気の進行具合によって使い分けたり、組み合わせたりし、患者さんに合わせた使い分けができるようになりますからね。
 それに、認知症の患者さんは、薬を飲み忘れたり飲み過ぎるなど、服薬に立ち合わない限り本当に飲んだか確認できないので服薬管理が大変なんですが、パッチ剤は、目に見えるため簡便さがありますね。
 アルツハイマー型認知症では身体機能の低下に関わりなく、認知機能の低下の伴うADL(日常生活動作)障害が見られます。
 米国アルツハイマー協会の調査(1999)より、介護者の大多数がADLに関わる介助を行っている事が示され、ADL障害が介護者の負担の増大につながっていることが知られています。
 パッチ剤を処方してみての感想ですが、入浴、着衣、食事などの日常生活動作に若干の改善傾向が感じられた患者さんも見受けられました。
 アルツハイマー病は原因となるβアミロイド蛋白が10年20年かけてジワジワと脳の神経細胞、特に海馬に蓄積し細胞が破壊されて脳機能が低下して発症します。
 ですが、このβアミロイド蛋白を壊す薬はまだ開発されていないので、海馬を活性化し、壊れるスピードを遅らせることが何より大切です。
 私は、生活様式を改善し、人生を楽しくいきいきと暮らすために古くから言われ、現代にも通用する「健康10訓」を提唱しています。

NO.153号掲載

網膜の中心「黄斑」が老化して視力が低下

Q 製薬会社のノバルティスファーマが行った50〜70代対象の目の病気の意識調査では、白内障を92・5%、緑内障は87・8%の人が知っていましたが、加齢黄斑変性は24・3%でした。どのような病気なのでしょうか。
 私たちの眼球は約24_の大きさで、内側にカメラでいえばフィルムにあたる網膜があり、その中心約2_を黄斑といいます。
 黄斑には、視力や色を感じる細胞が集まっており、ここに当たった光を電気信号にかえて脳に送り、初めて「見る」ことができる、目の要の部分なのです。
 加齢黄斑変性とは、年齢により網膜に老廃物が蓄積するなどして黄斑に障害が起こる病気です。

Q 目の成人病ですね。
 そうです。老化現象なんです。
 症状は、視野の中央、つまり一番見たい部分がぼやける、ゆがむ、全体的に不鮮明、暗く見えるなどです。
 最初は視力もよく症状も軽いため見過ごされることが多いですね。
 しかし、原則的に進行性の病気なので徐々に病状は悪化し、放置すると矯正視力が0・1未満となってしまうこともありえます。

Q 視力を回復させる方法は。
 iPS細胞(人工多能性幹細胞)による網膜再生や移植など、いま盛んに研究されていますが、いったん傷ついた網膜を完全に回復させる方法は現在まだありません。
 ですから、見える状態をいかに長く維持するか、つまり病気の進行を抑える治療を行います。

画期的な網膜断層検査

Q 定期的な検査が大事なのですね。
 そうです。近年眼科領域では、画像診断が画期的に進歩しました。網膜は10層に分れているのですが、その断面像を生体眼で観察することのできる光汗捗断層計(OCT)という検査装置が開発されました。
 これにより、患者さんに負担をかけずに数秒で正確な診断ができるようになりました。

治療は新生血管の閉鎖

Q 黄斑の老化現象ということですが、治療法は。
 加齢黄斑変性には萎縮性(ドライタイプ)と滲出型(ウエットタイプ)があります。
 萎縮性は、進行がゆっくりですが、有効な治療法がありません。
 滲出型は新生血管という異常な血管が発生する比較的進行が速いタイプで、新生血管をどう閉塞するかが治療のポイントです。
 網膜を破壊する新生血管の成長や増殖を抑える薬を眼内に注射する治療や、光に反応する薬を点滴し弱いレーザーで照射する光線力学的療法などがよく行われます。
 これまで全く治すことのできなかった黄斑変性も、これらの治療により進行を抑え視力を改善することが一部の方で可能になりました。
 したがって早期受診による早期診断が何よりも大切です。
 生活上の注意としては、禁煙。そして、高血圧や肥満も網膜の病気を引き起こす危険因子です。一般的な予防法としては、抗酸化作用のあるビタミンA・C・Eと亜鉛、マンガンのミネラルの摂取。
 数ヶ月に1回、アムスラーチャートを使って、必ず片目での自己チェックをお薦めします。

NO.152号掲載

染色体の異常が血液の細胞をがん化

Q 慢性骨髄性白血病はどんな病気ですか。
 血液のがんです。骨髄内の細胞が過形成となり「脾(ひ)腫」が生じます。骨の中の骨髄は血液を造る製造工場で、血液細胞の基になる造血幹細胞が成分により働きの違いがある一人前の細胞に分化、成長して血液中に送り出されています。
 がんは、細胞を造る遺伝子に障害が起こって発生します。慢性骨髄性白血病は、この大元の造血幹細胞の染色体(遺伝子の束)に異常が起きる病気です。通常はありえない9と22番目の染色体が途中で切れてくっついた(転座)フィラデルフィア染色体が造血幹細胞に発生、そこから白血病細胞がどんどん増殖します。脾臓にも同様な異常が起こり、腫(は)れてきます。

Q 患者としては、まずなぜがんになったのかと…。原因は。
 なぜ、染色体の異常がおきるのかはわかっていません。急性骨髄性白血病(いわゆる白血病)は、
放射線の被曝や以前の抗がん剤の治療などが関係するといわれていますが…。
 ただし、白血病が長引いて慢性骨髄性白血病になるわけではなく、病名は似ていても違う病気で、治療法も全然異なります。

Q ではその症状は?
 自覚症状は全くなく、血液検査で白血球数が異常に多いと指摘されて発病に気づく方が多いですね。

イマチニブが働くメカニズム
白血病細胞の発生・増殖

Q 気づかなかったり放置した場合は。
 慢性期の進行はゆっくりです。約3〜4年間はほとんど症状はなく、安定していますが何もせず放っておくと、進行は徐々に速まり、6〜9ケ月で移行期に。白血球はものすごく増え、脾臓も急激に大きくなり、倦怠感、貧血、発熱などが出て、白血病の一歩手前まで進行します。
 次の急性転化期になるとほぼ、急性白血病と同様で治すことはかなり厳しくなります。

新しい治療法分子標的治療薬

Q 治療法は。
 根治的治療法は、造血幹細胞の移植です。しかし、遺伝子のタイプを調べることで新しい治療薬が開発されその効果が期待でき、安全性も確立されている分子(がん遺伝子の産物)標的治療薬のイマチニブ(グリペック)により、治療法が大きく変わって骨髄移植が第一選択の治療ではなくなりました。
 イマチニプはフィラデルフィア染色体が造る異常なタンパクに結合して白血病細胞の増殖を抑えるのに特化した薬です。
 ですから、この病気と診断されたらイマチニブを服用します。途中でやめると再び白血球が増加してくるといわれており、治すためというより、コントロールする薬ですね。
また最近ではイマチニブの他にもっと早期により強く白血球を抑える薬剤が開発されており(ニロチニブ、ダサチニブ)、それらを使用することもあります。
 治療中は、定期的な血液検査と、3ケ月に1度の骨髄検査で白血病細胞の残っている比率を調べます。遺伝子検査でも異常なタンパクが消えているかを調べます。この段階に至ればコントロールは良好ということで、5年生存率も85%以上とされています。

Q 副作用としては。
 頻度の高いものは吐き気、筋肉のけいれん、発疹、むくみ、皮膚の色が白くなる(日焼けしやすい)、下痢、便秘などです。

   
NO.151号掲載

Q 自分は病気じゃないからとか、悪いところが見つかるのが怖いなどの理由で、受診しない人も多いようですが。
 メタポリックシンドローム(以下メタボ)は、内臓脂肪の蓄積により、高血圧や脂質異常症、糖尿病を合併する症候群のことをいい、動脈硬化の進みやすい状態です。

 一つひとつの症状は軽く、従来は病気ではない、また病気であっても軽症だと考えられていた人の中に動脈硬化の進んでいる人がいるんですね。
健診はこういった動脈硬化の進みやすい人の生活習慣を改善することで、心臓病、脳卒中などの病気を予防できるチャンスなのです。

Q でも毎日の行動を変えることは大変なことですが。
 私は、一無・二少・三多の生活を提案しています。
 一無″というのは、タバコを吸わないこと。タバコはがん、慢性気管支炎、肺気腫などの呼吸器疾患、心臓病、脳卒中などのリスクファクターです。
 二少″のひとつは、お酒は少なめ、適量にということ。ピールなら中ピン1本、日本酒1合、焼酎0・6合、ワイングラス2杯が1日の適量です。
 もう一つの少″は、食事量は少なめ、腹八分目を心がけ、摂取カロリーを控えるということです。
 三多″の一つは、体をよく動かしましょうということで、運動のすすめです。20〜30分歩行を1日2回するというのが理想です。また、5分、10分の細切れでもトータルで1日1時間以上歩くという習慣をつけたいですね。
 二つめの多″は、十分に睡眠、休養をとりましょうということ。
 最後の多″は、たくさんの人と接することです。たくさんの人と接することで、前向きの気持ちになります。
 このように、別に目新しいことではありませんが、できることから続けていくことが大事なのです。

Q 健診を受けたから大丈夫と安心してしまいがちですが、受けたからおしまいではないのですよね。
 そうです。健診データをもとに、前回のデータと比較し生活習慣、体重の増減、家族歴(糖尿病家系、高血圧家系など)を参考に今後の方針をアドバイスします。
 アドバイスをするにあたって、メタボの人はもちろん、メタボでなくても動脈硬化が起こり始める40歳以上の男性、閉経後の女性に現在の動脈硬化度をチェックする検査(頚動脈超音波検査、脈波伝播速度(DWV)、眼底検査など)を受けられることをおすすめします。その結果は、服薬を開始するか、経過をみていくかの判断にもなります。

Q いつもと様子が違うときには、いったい自分の体はどうなっているんだろうと心配になります。ひと口に生活習慣の改善といっても生活パターンはさまざまなだけに、アドバイスもいろいろでしょうね。
 はい。仕事や家庭の事情で運動時間がとれない人、夕食が遅くなる人もいます。
 しかし、時間のない人に無理に運動する時間をつくること、そして夕食の遅い人に食後2〜3時間は起きているようにとは言えませんよね。
 そのような方には、その方のライフスタイルを一緒に見直し、食事の摂り方、内容、行動パターンの変容をできる範囲でここまでやりましょうとサポートしていきます。
 健診は、自らの生活を見直す意味でも大切な機会です。そのためにも、1年に1回は健診を受けましょう。

NO.150号掲載

Q 血液中にある糖分(ブドウ糖)は、多すぎても少なすぎてもいけないのですね。
 そうです。体はエネルギー源であるブドウ糖を有効に利用させるホルモン(インスリン)をすい臓のベータ(β)細胞から出して一定の範囲に保とうとします。
 ブドウ糖が血液中で高いまま(高血糖)になっているのが糖尿病です。食べすぎや肥満で血糖が高いままでいると、糖毒性といってベータ細胞の働きがどんどん落ちたり、ベータ細胞が壊れたりして、ついにはインスリンが底をついてしまうようなことがあります。
 日本人の糖尿病患者さんの約95%は、不規則な食事、食べすぎ、運動不足などが原因で起こるタイプで、これを2型糖尿病と呼び、2型糖尿病は年々増加しています。
 しかも、糖尿病患者さんの約半分は治療してない状態なんです。食事や運動、薬などで血糖コントロールを良い状態に保っているのは3割にすぎず、あとはコントロール不良の状態が続きいろいろな合併症が起こるケースが多いのです。糖尿病患者さんの平均寿命は男性で10歳、女性で13歳短いといわれています。

Q 食物の好みや運動といった生活パターンの修正はシンドイことですが、今までの飲み薬と新薬の違いは。
 従来の飲み薬のうち、インスリン分泌を促すタイプの薬は、すい臓を直接刺激してインスリンを出させるのですが、刺激しすぎて低血糖になったりする。そのため低血糖が不安になって敬遠する方も多いのです。
 日本では2009年12月から一般的に使われるようになったのがインクレチン関連薬です。インクレチン関連薬には、飲み薬と注射するタイプとがあります。
 インクレチンとは、食べ物が小腸を通過するときに腸管から分泌されるホルモンで、すい臓に作用してインスリン分泌を増やします。
 従来のスルホニル尿素薬(SU剤)を代表とするすい臓を直接刺激する薬との大きな違いは、食物が入って血糖が上がらないと作用しないので、インクレチン関連薬単独で使う場合には、低血糖の危険性が殆どないということ。
 また、血糖を上げるホルモン(グルカゴン)の分泌を抑えて血糖値を低くする作用もあります。
 インクレチン関連薬のうち注射するタイプは、食欲をかなり落とすので、2〜3週間で体重が3〜5kgほど減ることもあり、肥満で血糖コントロールの悪い人には何より″と喜ばれています(笑)。テレビなどでインクレチン関連薬によって糖尿病が治る″と話題になったのは動物実験で、すい臓のインスリンを出すベータ細胞を壊れにくくする、あるいは増やすという結果が出たからです。

Q ヒトの糖尿病でも効果は期待できるのですか。
可能性はありますが、残念ながらまだわかりません。一般に使われ始めた当初、患者さんにも「テレビでみてすごく良い薬のようなのでその薬を処方して下さい」とよく言われました。また、インクレチン関連薬で注射するタイプは、1日1回の注射ですみ、時間帯は朝でも夜でもいいので融通がききます。

Q 食物の好みや運動といった生活パターンの修正はシンドイことですが、今までの飲み薬と新薬の違いは。
 従来の飲み薬のうち、インスリン分泌を促すタイプの薬は、すい臓を直接刺激してインスリンを出させるのですが、刺激しすぎて低血糖になったりする。そのため低血糖が不安になって敬遠する方も多いのです。
 日本では2009年12月から一般的に使われるようになったのがインクレチン関連薬です。インクレチン関連薬には、飲み薬と注射するタイプとがあります。
 インクレチンとは、食べ物が小腸を通過するときに腸管から分泌されるホルモンで、すい臓に作用してインスリン分泌を増やします。
 従来のスルホニル尿素薬(SU剤)を代表 とするすい臓を直接刺 激する薬との大きな違いは、食物が入って血糖が上がらないと作用しないので、インクレチン関連薬単独で使う場合には、低血糖の危険性が殆どないということ。
 また、血糖を上げるホルモン(グルカゴン)の分泌を抑えて血糖値を低くする作用もあります。
 インクレチン関連薬のうち注射するタイプは、食欲をかなり落とすので、2〜3週間で体重が3〜5kgほど減ることもあり、肥満で血糖コントロールの悪い人には何より″と喜ばれています(笑)。テレビなどでインクレチン関連薬によって糖尿病が治る″と話題になったのは動物実験で、すい臓のインスリンを出すベータ細胞を壊れにくくする、あるいは増やすという結果が出たからです。

Q 副作用は。
 胃腸障害を起こすこと。下痢、便秘、吐き気などです。そのため、注射するタイプは少ない量から使い始めて、注射する量を少しずつ鰭やすようにします。
 ただ、使用し始めてから歴史も浅いので、インクレチン関連薬を長期間使った場合にどういう副作用が出るかについてはまだ十分に解明されていません。
 それと、インスリンの注射を行っている糖尿病患者さんには、今のところこの薬は使えません。飲み薬タイプのインクレチン関連薬は、従来から糖尿治療に用いられるほとんどの飲み薬と一緒に使えるようになりました。

Q 日本人は欧米人に比べて糖尿病になりやすいと言われますが。
 民族的な違いなのでしょうね。どちらかというと欧米人は、インスリンがたくさん出て肥満の程度が強くても血糖を下げることができます。日本人は欧米人に比べインスリンの出が悪いのです。だから食べすぎたり、少し太りすぎると、インスリンが不足しやすくなり、血糖値が上がりやすいため、欧米人に比べればそんなに太っていないのに2型糖尿病になりやすいのです。
 新薬が登場しても、食事療法、運動療法が大事なことは変わりありません。
 不規則な食事や食べすぎを攻を定期的な運動を始めただけで、血糖コントロールがずっと良くなり、患者さんご自身が驚くことがあります。
 今日お話しした新薬による治療以上の効果が現れることもありますね。
 何よりもきちんと通院し、きちんと検査を受け、生活習慣を見直すことを忘れないようにしていただきたいと思います。

 
NO.149号掲載

Q 呼吸が止まる原因と病気のメカニズムは
睡眠時無呼吸症候群 (SAS)には、閉塞性と中枢性がありますが、そのほとんどが閉塞性で98%以上です。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)はのどの奥の上気道が睡眠中に閉塞することによります。
 原因はさまざまでいくつかが合わさって関与することもあります。具体的には形態的異常(小顎、下顎後退)、咽頭軟部組織の異常(巨舌、軟口蓋肥大、扁桃肥大)、鼻閉、甲状腺低下症や末端肥大症といった内分泌の異常、増悪因子として、肥満、アルコール摂取、喫煙、睡眠剤などが挙げられます。
 これらの原因により睡眠時に上気道が閉塞し無呼吸、低呼吸から低酸素血症、高CO2血症、胸腔内圧の低下、覚醒反応、呼吸再開を一晩中繰り返し、このため、交感神経の緊張からカテコールアミンやコルチゾールが流出し、活性酸素の発生で炎症性サイトカインや血管障害性因子を産生し、その結果、高血圧や心血管障害、糖尿病、夜間頻尿などの合併症を引き起こします。脳が覚醒したときに上気道筋が活動を取り戻すため、呼吸は再開しますが脳波は乱れ睡眠は大きく障害されます。このため、日中異常な眠気が表れてきます。
 中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)は中枢神経疾患やうっ血性心不全が原因となり、チェーン・ストークス呼吸(呼吸の深さが周期的に変化する)がみられます。

Q 合併症にはどういったものがありますか
睡眠障害のストレスで交感神経緊張から血管の収縮、ナトリウム貯留により、高血圧の頻度が高くなります。無呼吸、低呼吸の重症度と比例します。努力性吸気による胸腔内圧の低下や低酸素血症により、肺高血圧となり、昼間も持続することもあります。
 また、狭心症特に異型狭心症を合併することがあります。OSASを未治療のまま放置するとさまざまな不整脈が発生したり心不全から死亡するケースもあります。
 また、メタポリック症候群や糖尿病を誘発することもあります。

Q 診断、検査、治療はどのようにするのですか
たいてい大きないびきをかき、そのあと無呼吸がおこるのですが、本人自身は自覚がないことがほとんどで、ベッドパートナーや社員旅行などで同僚に指摘され気付く場合が多いです。
 昼間の眠気は本人の自覚症状ですが、眠気を疲れ、倦怠感、集中力低下と自覚する場合もあります。視診、問診などにより本症が疑われた場合には、客観的に診断するためにポリソムノグラフィー(PSG)を行うことが基本です。しかし、この検査は入院が必要となりますが、鎌倉市、藤沢市の医療機関ではおこなえません。しかし、簡便な自宅でできる簡易睡眠モニターがあり、精度は落ちますが、OSASの診断は可能です。
 簡易検査の結果、無呼吸低呼吸指数(AHI)が40以上あり、OSASと診断されれば保険が適応され、nasalC−PAP (軽鼻的持続気道陽圧呼吸)の治療が受けられます。この器械は睡眠時に一晩中装着しますが、症状、合併症は劇的に改善する場合が多いです。
 ただし鼻閉がある場合には治療の妨げになるので、耳鼻科医との協力が必要です。AHIが40未満の方やnasalC−PAPをおこなえない方は、減量や禁煙、アルコール摂取を控える、側臥位での睡眠を試みます。そのほか歯科医と相談してマウスピースを装着したりします。
鼻の治療、扁桃腺摘出、ホルモン療法なども必要に応じ行います。


 
NO.146号掲載
 
 

 治る認知症もある


Q  いったい認知症とはどういう病気ですか。
  認知症というのは、いくつかの症状が集まってできた症候群ですから、その原因となる病気によっては、脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったりして、生活に支障をきたすことがあります。
 認知症は治らない病気だから医者に診てもらっても仕方ないと考えるのは間違い。治る認知症もあるんですよ。

Q  ということは他の病気と同じように、早期発見、適切な治療を行うことが大切なんですね。どこに相談に行ったら良いのでしょう。
  脳の病気ですから精神神経科、神経内科、脳神経外科などですが、まだ認知症専門医制度はできていません。
 認知症の診断は、初期ほど難しくて、まずはCT、MRI、脳血流検査などの画像検査で脳の萎縮している状態や、血管が詰まって一部の細胞が死んでいないかなどを診ます。あとはご家族や介護者を悩ませる臨床症状である記憶障害や不眠、もの盗られ妄想、夜間せん妄、徘徊、抑うつ状態があるかなどを家族に聞きます。
 こうした検査や記憶力テストなどで、認知症を起こしている病気が客観的につかめる場合があります。ひとくちに認知症といってもいろいろな病気が隠れているんですね。歩行障害や尿失禁の高齢者が、実は正常圧水頭症が原因である場合には、脳神経外科でシャント手術を行えば症状は消えます。神経内視鏡手術で治療できる場合もあります。

Q  治る認知症というのは他にも…。
  脳腫瘍、慢性硬膜下血腫なども手術で、甲状腺ホルモンの異常や薬の不適切な使用による症状は内科的な治療で治ることもあります。
また、最近高齢化が進むに伴いよくみられることですが、仕事を辞め社会的コンタクトがなくなり、急速に気力、体力に自信をなくして落ち込む、または家族が仕事に出て、日中は家に1人でこもりがちになることから、人間はしばしばうつ状態になります。このような社会的ストレス、家庭内ストレスが原因の場合は生活環境を家族が変える努力をしたり、施設を利用することで変化ををつけ、気力、意欲を持たせる援助が大切です。時には一精神科の補助が必要な亡とも起こります。
 しかもこうした状態を長く放置すると、高齢者では気力、体力は急速に衰えて、高次機能障害へと進行して行くことがありますので、一日でも早く受診することが大切です。

 治らない認知症でも症状を軽くできる

Q  治らない認知症は。
  現在はまだ原因不明で、脳の神経細胞がゆっくりと萎縮して行く疾患群で、アルツハイマー病、ピック病などが認知症の約6割を占めます。次に多いのは脳血管疾患で脳卒中(脳梗塞、脳出血)などで、約2割がこの疾患によるものです。

Q  脳障害は進行する一方なのですか。
  いや、早い時期に始よっても進行の非常に遅い人や症状が止まってしまう人もいます。
 経過は、数年から十数年で、歩けなくなり寝たきり、口から食べたり、飲み込むことができなくなって肺炎を繰り返すなど、精神機能だけでなく身体機能も低下します。
 しかし、アルツハイマー型には「塩酸ドネベジル(アリセプト)」という薬を使って進行を遅らせることができるので、早い内から使うようにお勧めしています。
 脳血管性のグループには、脳卒中の再発や環境の変化などのストレスを防ぐ支援が大事です。
臨床症状には睡眠薬、向精神薬、環境の調整などで対処しますが、ご家族や介護者の対応によって症状は良くも悪くもなります。
 在宅での介護では無理なことが多く、現在の国内の対応できる施設は少なく、かつ認知症の程度によって、介護、治療もできる施設がきわめて不足しています。この問題解決は国、地方自治体が、社会問題として対応を迫られているのが、日本の現状であることを知ってもらいたいです。
認知症は誰にも起こりうる脳の病気です。軽症のうちから専門家との信頼関係をつくり、早め早めの対応をすることです。
 そして、福祉医療が公的機関として機能してもらいたいですね。

 
 
   
 
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