軟骨細胞は再生しない細胞
Q ヒザが痛い、股(こ)関節が痛いなどで、立つ、歩くといった日常動作が困難になるというのは。
A 変形性関節症です。立つ、歩くといった動作には体重以上の力が加わります。その衝撃を吸収して体重を支えているのが軟骨なのです。
人間の体は関節の部分で骨と骨がすり合います。そのクッションの役目をするために関節軟骨(以下軟骨)の表面はツルツルで、関節を包んでいる滑膜からは潤滑油も出ています。
ところが、その軟骨の細胞は再生しないために、年齢とともに摩耗し、滑りが悪くなる、陥没するなど軟骨が変形してしまうのです。
Q ヒザや股関節にトラブルが多いのは、それだけ負担がかかりやすいためですか。
A そうです。体重が多いと股関節に負担がかかるし、正座やスクワットなど体重を乗せて強引にヒザを曲げたり、バレーボールやサッカーなど飛んだり跳ねたりして瞬間的にヒザに負担がかかる運動は軟骨を痛めます。ある程度進行すると変形性関節症となり痛みが出てきます。
保存的な治療法は
Q 軟骨は大事に使わなければいけないのですね。軟骨にいいということでグルコサミンやコンドロイチンなどの健康食品も出回っていますね。
A はい。効いたという体験談はあっても科学的に証明されているわけではなく、私はおすすめしません。
それよりも、ヒアルロン酸のヒザ関節内の注射の方がすぐれています。
ヒアルロン酸はドロドロとしたゼリー状で、潤滑性があり、骨と骨の摩擦をやわらげ、軟骨の摩耗を軽減でき、骨細胞に栄養を与えたりすることで関節の変形を止めることができるからです。
痛みがとれる、歩き出しや階段が楽になるということで、何年も注射されている患者さんもおります。連用による副作用の心配もありません。
Q やはり体重を減らして負担を軽くするのが一番なのでしょうが、なかなかやせられない。
A 体重を減らすことも大切ですが、ヒザを
支えている筋力が落ちてくると、ヒザがグラグラと不安定になって軟骨の摩耗が早まります。特に太ももの筋肉を強くするせヒザのぐらつきが軽減されヒザが逢します。
水中歩行やサイクリングなどヒザに負担をかけない運動や、短い距離の散歩などはおすすめです。
人工関節というより人工軟骨のイメージで
Q O脚になってヨチヨチ歩きになるほど進行してし事つと手術ということに。
A そうですね。保存療法で症状が改善しないほど軟骨の変性が進行したら、人工関節を埋め込む手術をします。
術後は痛みが消え、足もまっすぐになり、歩行能力もアップします。寝たきりになることも防げますしね。
手術した方で、ショッピングや旅行を楽しめるようになり、もっと早く手術すればよかったとおっしゃっていました。
Q 昔は、股関節に近い大腿骨の骨折や、変形性股関節症は寝たきりになり命とりの病気と恐れられていましたが。
A 人工骨頭や人工関節の治療は非常に進歩し、10年前とは様変わり。今や高リスクの手術ではなくなりました。
皆さん、人工関節というと、関節を全部取ってロボットみたいな人工の関節をはめ込むイメージを持っているようですが、実は悪い軟骨を全部きれいに削って、薄い卵の殻のようなチタンやコバルトクロムなどの金属をはめ込むのです。
チタンなどは骨と良くなじみ、軽量で、長期に使っても摩耗したりしません。機材や装置も性能が非常にアップし、小さな傷で手術できるようになりました。
クリーンな手術室で安全な手術を
Q 人工関節置換手術で最も気をつけておられることは。
A 感染症です。この手術をされる方は70代が多いのですが、人工関節は人間の体に金属などの異物が入るわけで、周囲の抵抗力も落ちています。そのような状態で、人工関節が入る場所に細菌などが入ると、抗生物質を投与してもなかなか沈静化しない。こうした感染を避けるため、この手術は清浄度の高い、いわゆるバイオクリーンルームであることが要求されます。
そこで、当院では12月よりバイオクリーンルームを開設します。
また、4人の専門医がチームを組み迅速な手術を行い感染率を下げるために努力しております。
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