2012 2012 2011 2011  
   NO( 〜186) NO (185 〜176) NO (175〜166) NO (165〜156) NO (155〜146) NO (145〜138)  
 
Q  うつ状態とうつ病のちがいは。
 例えば長年可愛がっていたペットが死んだら誰もが落ち込むが、その気分がずーっと続くのがうつ状態。ところがさらに続いて、家事もしない、出勤もできないと、生活が立ち行かなくなったらうつ病と考えていい。でも、うつ状態かうつ病かにとらわれるのではなく、心のエネルギーが下がってつらい状態にあることが問題ととらえます。

「おかしいな…」と思ったら心療内科に

Q  そんな心のエネルギーをあげるには。
 大切なのは、十分に休める環境をつくること。とはいっても休めずに疲れ切ってうつ状態が続く人が多い。そんな時には、1人で悩まず、恥ずかしがらずに、まずは医者に相談してみることです。

Q  うつ状態でも診察を受けるのですか。
 そうです。医者はその方の背景とか、今の状態を聞きながら、ご本人にとって最良の方法を考えます。つらさを和らげるために受診なさっていただきたい。アドバイスを受けることによって、ご本人が自分の状態を自覚し、考え方や行動が前向きになっていくことが大切なのです。

Q  心にしまい込まずに話すことが大切なのですね。
 ご自分の苦しみを言葉で表現し、それをしっかり受け止めてもらうことが大切です。医療とのつながりを感じてくださったらうれしいです。

Q  お薬を使いますか。
 ご本人と相談し納得した上で、あまり習慣性のない薬を少量使います。抗うつ剤や抗不安薬は、不安や寂しさを和らげて元気な状態になる手立てです。また薬の服用で熟睡でき、結果的に回復することもある。適切な薬の服用で、本来の自分を取り戻すきっかけになることがありますから。

Q  多くの患者さんを診察し感じることは。
 月に1000人を超える心療内科の患者さんを拝見して思うことは、つくづく人生は関係性だということですね。人間関係の質が良くなっていけば、私たちの状態・コンディションは良くなっていきます。相手を変えることは難しいけど、自分なら、自分の考え方と行動をコントロールできます。それはとても勇気とエネルギーが要りますけどね。うつの患者さんにも、そこに気づいてもらえるようなきっかけづくりをしてさしあげる。診断書によって仕事を免除してもらうなど、休める環境づくりにつながります。そうして回復力を取り戻してもらうのです。





 がんで死亡する人の中で大腸がんの死亡率は、男性で3位、女性では1位。発見される大腸がんの9割は進行がんといわれるが、
罹患率と死亡率の差が大きい。その背景には、1、2カ所の転移でも切除が可能で、
抗がん剤を使えば5年生存率が60%と高く、非常に治りやすいがんなのだ。

大腸がんの6〜7割はポリープから発症

Q  胃のポリープと違って、大腸にポリープがあると取ってしまうのは大きくなるとがんになりやすいからですか。
 そうです。大腸ポリープは最初は良性ですが、大きくなるとがんになる確率が高くなるので悪性化する前に内視鏡治療で切除してしまえばおなかを切らないで治すことができます。
ところが、すべての大腸がんはポリープからできるわけでなく、デノボがんといって粘膜が突然変異してできるがんもあり、陥凹型(かんおうがた)腫瘍で進行が速く悪性度の高いがんです。

転移するのが悪性膿瘍

Q  がんはすべて悪性腫瘍のイメージがあるのですが、良性との違いは。
 それぞれ顔が違うように、その人の持っているがんの性格(組織)にも違いがあります。
良性腫瘍ならどんどん大きくなってもその部分に限局されます。一方、悪性腫瘍の怖さは、ある程度増殖すると血液や血管に沿っているリンパ管の中を流れ、肝臓や肺に着床し、増殖します。


Q  がんが転移する前に、早期発見するということですか。
 そうです。大腸がんは、便潜血検査(検便)等の検診が普及し、早期に見つかることが多くなってきました。
進行の程度でステージ(病期)に分類され、Iは早期段階で、97〜98%は治癒可能です。
Uは進行がんで、リンパ節は遠隔に転移のないもので90%は生存します。
しかしVになるとリンパ節への転移を認める場合で再発する可能性は30%と高くなります。
 Wは肝臓や肺、脳にまで転移している状態です。

症状はがんのできた部位によって異なる

Q  早期発見しやすいがんということですが、自覚症状は。
 自覚症状が出るようになるとがんは進行しています。
小腸で栄養分が吸収され、大腸で水分が吸収され、直腸に便がたまって圧が高まって便意を感じるわけですが、症状はがんができた部位によって違います。
左側の盲腸や結腸は水分がまだ吸収されていないため便は軟らかく腸閉塞はあまり起こしません。ただ、便がこすれてジワジワと出血して慢性的な貧血や大きくなるとしこりに触れるようになります。
右側の結腸では便が固形化してがんが便によってこすれて血便、がんで腸の内腔が狭くなって便通異常(下痢と便秘を繰返す、便が細くなるなど)が起こります。

人工肛門とQOL

Q  がんのステージによる治療法の違いは。
 粘膜の浅い所にがんがある場合は内視鏡で切除しますが、粘膜下組織でも深めになるとリンパ節も切除する必要があるので手術になりますし、ステージU、Vは手術です。
手術は、がんのできている場所と転移のおそれのあるリンパ節をきれいにとる必要があるので、20cm程度の腸管を切除します。


Q  大腸がんイコール人工肛門のイメージがあります。
 直腸がんで肛門との距離が4〜5cmあれば腸管をつなぐ縫い代が残るので、人工肛門にはなりません。しかし、排便機能が落ちて便が1日に10回も20回も出るとか、肛門を締める括約筋が緩んで便がもれてしまう、高齢者で介護が必要などは、日常生活が困難になるので人工肛門の方がQOLは維持されると思います。

Q  体にやさしい外科手術として腹腔鏡手術が注目されていますが。
 開腹しないで、おなかに穴を4〜5か所開けて手術器具を入れ、中に炭酸ガスを入れてふくらませてモニターを見ながら遠隔操作で腸を剥離し、6〜7cm切除します。開腹手術とどちらが良いかは一概に決められません。早期がんには腹腔鏡、進行がんは開腹でという傾向にあります。いずれにしろ、がんの治療をきちんとできることが選択の前提です。

体の部位により異なる呼び名

Q  水虫の正体は?
 真菌(かび)の仲間の白癬菌による感染症で、足に発生した場合に水虫と呼んでいます。
医学的には足白癬といい、9割近くは足に好発しますが、体の他の部位にも生じます。それぞれ棲みつく場所によって爪が爪白癬(爪水虫)、股は股部白癬(いんきんたむし)、体は体部白癬(たむし)、頭は頭部白癬(しらくも)と呼びます。
5人に1人が水虫、10人に1人が爪水虫にかかっているというデータがあります。今回は、受診される患者さんが多い水虫と爪水虫についてお話しましょう。

症状はさまざま

Q  足がかゆければ水虫ですか?
 実は、かゆみのない場合もしばしばあり、要注意です。水虫の症状は足のかゆみや小水疱ができる小水疱型、足の指の間が白くふやけジュクジュクしたり、カサカサする趾間型、足の裏やかかとがカサカサしたり角質が厚くなってひび割れする角化型があります。
爪水虫の症状は、爪全体やその一部が白や黄色に変化したり、肥厚や変形などして爪がポロポロともろくなったりします。

付着してから感染までは1〜2日間

Q  どのように感染するの?
 水虫の人が素足で歩いた床や畳、マット、スリッパなどに白癬菌が付着し、それを素足で踏んだりして菌が付着し感染します。
白癬菌が付着してから感染するまでの期間は1〜2日ほどといわれています。その間洗い流さずに残った菌が傷ついた皮膚から入り込み、湿って暖かいなど菌が繁殖しやすい環境にある場合に感染します。
そして、この水虫の状態が長期間続くと手や足にできた水虫からさらに爪に白癬菌が入り込んで、爪水虫を発症します。

自己診断せずしっかり検査を

Q  皮膚の状態を見て診断するのですか?
 皮膚の症状だけでなく、確定診断のためには、皮膚や爪を少し採取し、白癬菌の有無を顕微鏡で確認することが最も重要です。
足にできる皮膚病には、汗疱、掌蹠膿疱症、かぶれなど水虫と間違いやすいさまざまな病気があります。足に発疹やかゆみがあると水虫と思い込んで、民間療法や市販の水虫の薬を塗っても治らない、悪化したなどの訴えで来院されるケースも多々あります。自己判断せず、病院に来てしっかり検査することをおすすめします。

しっかりと治療を

Q  水虫は治りにくいといわれますが。
 以前は、水虫に効く薬を開発したらノーベル賞ものだと言われましたが、今はよく効く塗り薬がたくさんあります。
薬は自覚症状のある所だけでなく、指の間から足裏全体に最低1カ月、毎日塗り続けることが大切です。
爪水虫は塗り薬では治りにくく内服薬でないとなかなか治りません。薬の副作用(肝障害など)や他の内服薬との飲み合わせなど問題がないか注意しながら内服します。
また最近では爪水虫に有効な塗り薬も発売され、内服薬が使えない人でも、あまりひどくない爪水虫には効果が期待でき、治療の選択肢が増えましたのでご相談ください。



 

病気とは気づきにくい前立腺肥大症

Q  年齢の上昇とともにおしっこのトラブルが増えるようですが、その症状は?
 おしっこのトラブルは、大きく次の3つの種類に分けられます。
@尿をためる際の症状
トイレが近い、夜間に何度もトイレに行く、急ながまんし難い尿意、ためている間に漏れるなど。
A出すときの症状
尿に勢いがない、尿が途切れる、出始めに時間がかかる、おなかに力を入れないと出ない、最期にポタボタたれる、など。
B排尿した後の症状
 終ってもすっきりしない(残尿感がある)、トイレから離れたとき尿がたれるなど。

Q  それは歳のせいでなく病気なのですか。
 当然年齢のためという側面もありますが、生活上困るような排尿障害がある場合は、病気として治療を行います。
最も多い原因は、男性は前立腺肥大による排尿障害が考えられますが、必ずしも前立腺が大きいからおしっこで困るということではありません。前立腺の肥大があり、生活上困らなければ、治療が不要なことも多くみられます。しかし、同じ症状でも、前立腺以外に原因がある場合も多いので、尿検査や前立腺がんのチェックなどの基本的な検査は必須です。
また前立腺の大きさを調べたり、尿の勢いや、排尿の記録をつけてもらうなどの
排尿に関する検査を行い、どのような治療が最適かを検討します。

受診のタイミングは

Q  受診のタイミングは
 直接はありません。しかし、初期の前立腺がんは無症状のため、前立腺肥大の精査で見つかることも多いです。
受診のタイミングは、前述のようなおしっこの症状でQOL(生活の質)が下がって困った時、何とかその症状を改善させたいと思った時でしょう。
ただ、おしっこの症状は進行性であることが多く、進行しすぎると治療が困難になる場合がありますから、我慢のしすぎは禁物です。
IPSSやQOLスコア(表参照)でチェックしてみてください。

排尿のコントロールは薬で

Q  手術よりはお薬による治療が第一ですか。
 薬物による症状のコントロールが困難な場合や尿閉や尿路感染症、血尿、膀胱結石などを繰返す場合に手術を検討しますが、ここからが手術適応といった線引きはとくにありません。
薬物治療としては、前立腺の緊張をとって尿をスムースに出るようにする薬や、前立腺のむくみや炎症をとる薬、前立腺を小さくする薬などを症状に応じて組み合わせて使用します。また、膀胱の過活動を抑える薬も病状によっては使用して、排尿コントロールを行います。気になる症状があったら、お気軽に専門医にご相談ください。



NO.187号掲載 乳がんの乳房温存療法

代表的な大腸の三つの病気

Q  便秘で悩んでいる人は多いですね。
 約半年、下痢や便秘を我慢していたら進行大腸がんで肝臓に転移し手遅れの方もいます。
もっと早く内視鏡検査(大腸カメラ)を受けていたら……と残念です。


Q  とくに便秘はよくある症状なので受診するほどではと考えてしまいますが、下痢や便秘が続く時は大腸がんを疑うということですか。
 他にも炎症性腺疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)や過敏性腸症候群があります。いずれも近年増えている疾患で、その中でも命に関わるのが大腸がんです。
大腸がんでは腸管の壁の一番内側の粘膜にイボやコブのようなものができて、腸が狭くなり通過障害を起こし便秘となります。浣腸で症状がとれても、半年後に大腸カメラで検査したら大腸がんが肝臓や肺にまで転移し打つ手がないというケースもあり、便秘だからと侮ってはいけません。

医療費が一番安い大腸カメラで治療の時期

Q  早期発見の一つが検便ですか。
 はい。検便(便潜血検査)で陽性になると、大腸カメラによる精査をします。当院は、解像度が非常に良く、拡大でき、粘膜の異常を明確に発見できる新機種を導入しています。がんやその他の病気の診断にも威力を発揮し、患者さんもラクです。
医療費の面からも、大腸カメラで治療できる段階での早期発見が安価と考えられます。次は手術、遠隔転移した進行がんになると抗がん剤による治療費が半年で約数百万円かかります。

なぜ、現代病?

Q  下痢が主な症状の病気は。
 炎症性腸疾患で、そのなかでも今増えている潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にただれや潰瘍などの炎症が起こり、徐々に下痢、下腹部痛、粘血便、発熱の症状がひどくなる、炎症が治まったりと経過の長い難病です。
原因は体の中にある免疫システムが過剰に反応して自分の腸の粘膜などを攻撃するためです。
過敏性腺症候群も下痢が主な症状ですが、便秘型もあります。
大腸の働きが悪く便通異常を起こすのですが、いずれも腸管には大脳や自律神経とつながる神経細胞がありますから、ストレスや腸内細菌叢の変化がこういった病気を増やすのではないかといわれております。

 長い間、和食になじんできた腸内細菌叢が食生活の欧米化や、動物性脂肪の多い食事、漬物や根野菜といった食物繊維の少ない食事、さらに、世界各国から入ってくる食材など食の環境変化についていけずにあらわれる症状から、現代病といわれるわけです。

Q  腸を健康に保つ特効薬はないのですか。
 対症療法としては良い薬が出ています。
それに腸には病気に対する免疫系の細胞が50%も集まっていますから、腸を健康にすることでいろいろな病気が予防できます。詳しくは3月28日の講演会では、その辺を詳しくお話しますので、ぜひお出かけください。


NO.186号掲載 乳がんの乳房温存療法
ヘモグロビンA1c (エーワンシー)
(HbA1c)
 赤血球の中の赤い色素(ヘモグロビン)のうちブドウ糖と結合している特殊なヘモグロビン(グリコヘモグロビン)の割合をパーセントで表した指標。
血糖値は変動しやすいがHbA1cは過去1〜2ケ月前の血糖コントロールや合併症の進行の目安となる。
昨年6月に日本糖尿病学会は、HbA1cの目標値を、血糖正常化を目指す6.0%未満、合併症予防7.0%未満、治療強化困難8.0%未満と設定。

血糖値ってなに?

Q  糖尿病の患者さんが増えているとか。
 はい。日本では成人の3人に1人が糖尿病とその予備軍といわれます。

Q  糖尿病は尿に糖が出る病気ですか。
 それはまちがい。尿糖が出なくても糖尿病の場合もあります。
糖尿病治療で大切なことは血糖値のコントロール。
血糖値とは、私たちが食事で摂取した炭水化物が消化吸収によりブドウ糖に細分化し、血液に流れます。ブドウ糖は体の栄養となるものですが、血液中を流れているだけでは栄養にはなりません。筋肉や脳など体の細胞内にとり込まれて初めて栄養として利用されます。この体の中の細胞にあるブドウ糖の入り口を開ける鍵の役目をしているのが膵臓から出るホルモンのインスリンです。
ご飯を食べると血液中のブドウ糖濃度(血糖値)がどんどん高くなり、インスリンが分泌され、ブドウ糖が体にとり込まれ、血糖値は下がります。つまり、血液中のブドウ糖の量とインスリンの作用の強さのバランスによって血糖値は上下しているのです。
      インスリンの作用不足→高血糖→糖尿病
糖尿病とは、血糖が慢性的、持続的に高い状態です。
健康時は朝ご飯を食べると血糖値は上がってもすぐに下がり、70〜120mg/dlで行き来します。昼、夕飯も同様です。 ところが、糖尿病の95%を占める2型糖尿病(以下糖尿病)の場合は、朝食1〜2時間後に血糖がグンと上がり、昼食頃にようやく下がりますが、昼食で夕食頃まで下がらず、夕食で夜にもたれ込む…と、いつも持続的に高血糖状態です。

Q  高血糖になる原因は。
 それは@インスリンが足りない(遺伝的素因)、A食事の多量摂取、Bインスリン抵抗性といって、肥満、脂肪の多い食事、運動不足などがあると、インスリンが大量に出ても細胞の感度が鈍いためにインスリンの働く分野が少なくなる、等があげられます。

血糖コントロールで合併症を防ぐ

Q  高血糖は体にどのような影響を与えるのでしょう。
 血液中のブドウ糖濃度が高くなるため体はそれを薄めようと口渇・多飲・多尿の症状や、体のエネルギー源のブドウ糖が使えないので筋肉やお腹の脂肪を使うための体重減少、加えて疲れやすい、空腹感が強くたくさん食べる、手足がしびれる、足がつる、等の症状が出ます。
でも糖尿病を治療する最大の理由は、高血糖が血管の壁を壊し、神経が侵されて合併症を起こすことです。まず、細い血管では神経障害(
)→網膜症(目・め)→腎不全に陥る腎症()の順に合併症は起こることが多いようです。
太い血管では動脈硬化を進め、血栓をできやすくして足の壊疽
(えそ))、脳卒中()、心筋梗塞などの虚血性心疾患()等合併症は全身に及びます。
糖尿病の治療の基本は食事と運動で血糖をコントロールし、足りなければ薬物療法を行います。定期的に通院し、きちんと検査を受け、日常生活の自己管理がとても大切な病気です。


 
 
 
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