大腸粘膜の慢性的な炎症
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吉田篤史先生 |
吉田 典型的な症状は、便に血液が混じって、白い粘液が付いている粘血便が出て、進行するにつれて下痢、発熱、下腹部痛、貧血が起こることです。
大腸粘膜に潰瘍(腫れてただれる、えぐれて穴があく)ができるためです。
天神 何といっても早期発見、治療が第一ですね。1〜2年前から血便が出るのだが、様子を見ようと診察を受けずにいたら急に重症化して大腸を全摘出した人もいますからね。
吉田 ただ、悪くなる一方ではなく、炎症がおさまり潰瘍の状態が良くなる(寛解)こともあり、ストレスや環境要因で再発するという経過の長い病気でもあります。
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天神尊範先生 |
天神 再発を繰り返し、徐々に悪化して10年も経過すると、大腸がんになることもあります。
吉田 頻度の高い腸管外合併症は関節炎。他に皮膚症状、眼の症状などがあります。
いちばんの検査は大腸カメラ
吉田 診断は、前処置薬(下剤)を飲んで大腸を洗って粘膜をみる内視鏡検査(大腸カメラ)です。当院ではこの検査を年間3、000件行っていますが、急性期に全部をきれいにすることが辛いので、無理をせず炎症がおさまってから行い、CTやエコーの画像検査など苦痛のない方法を併用するよう心がけています。
薬も増え、治療の選択肢が増える
吉田 潰瘍性大腸炎は、体の中にある免疫システムが過剰に反応して自分の腸の粘膜などを攻撃するので、今のところ根本的な治療法はなく、一般的には炎症を抑える薬をのむ薬物療法が主体です。
薬は腸の炎症を抑え再発を防ぐ5−ASA製剤(ペンタサ、アサコール)が主流です。
天神 ステロイドも炎症を抑えるのに即効性がありいい薬ですが、副作用も強いので、急性期に限るなど短期間に使います。
他に過剰な免疫反応を抑える免疫調整薬(イムラン、タクロリムス)や生物学的製剤(レミケード)など薬の種類も増えており、一人ひとりの症状に合わせてこのような強い薬を使い分けています。
また、薬物療法以外に症状を起こす白血球を血液から取り除き、また体に戻す除去療法や腸内細菌叢のバランスを保つビフィズス菌投与で状態が改善する人もいます。
再発を防ぎ寛解の維持を
吉田 以前のように重症で入院、手術で大腸をとってしまうということは少なくなりました。しかし、患者さんは増える傾向にあり、それも20〜40代が圧倒的に多い病気です。
定期的な内視鏡検査で炎症の状態をチェックし、その人に合った薬、治療法で寛解を長く維持することがポイント。腸は脳の神経と連動しておりますから、ストレスがかかると腸も安静を保てません。相性のいい治療法を選択し、専門医と二人三脚で長期戦で治療に取り組むことですね。
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