2012 2012 2011 2011  
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NO.175号掲載 乳がんの乳房温存療法
松下知彦先生

  がんにだけ照射で 合併症を少なく 

Q  前立腺がんは検診で早期発見できれば治せる病気だそうですが、
   その場合もやはり手術が治療法の第一選択ですか。

 いや、前立腺がんの治療には手術だけでなく、放射線治療も非常に良い治療成績をあげています。以前はがんを治療するのに必要な放射線量を浴びると他の部分にダメージが大きく、当然そんなことはできないし、治療も不十分となりがちで、自然と成績も手術より劣る結果となりました。
 しかし、現在ではコンピュータ制御で一人ひとりの前立腺の形に合わせて放射線を照射し、治療上十分な量を浴びせることも可能となり、合併症もかなり軽減できるようになりました。

  逆転の発想で合併症を防ぐ 

Q でも、体の外から放射線を前立腺に照射するかぎり、前立腺に届く前に少しは周りの臓器に当たるということになるのでは。
 そのとおり。そこで発想を逆転して前立腺の中から放射線を周りに出したらどうか? と考えてみてください。
 放射線量は距離の3乗に反比例して減っていきます。少し離れれば放射線は届きません。
 現在は適切な量の放射能を持つ放射線源(放射性同位元素を密封した針)を前立腺内に埋め込んで前立腺の内部だけに照射し、周りにほとんど影響ないように治療することが可能となりました。

Q 放射線療法も進化しているわけですね。
 この方法は前立腺がん小線源治療といわれ実は前立腺全摘術と同じくらい歴史のある古い治療法なのです。
 最近、前立腺内に適切に小線源を配置できるようになって、がんが前立腺内に止まっていて、さほど病理学的にタチの悪いがんでない限り手術と同等以上の成績が上がっています。
 また、タチが悪くても、少々前立腺周囲に広がっていると予想されても、既存の外照射療法と併用することによって手術以上の治療成績を上げ、合併症も以前ほどひどくないということがわかってきました。

Q 健康保険での診療ができるのですか。
 はい。当院でも2年前から開始。今年は30例行いました。
 以前は当院でも前立腺全摘術を行っていましたが、以前の手術に比べて患者さんには非常に楽な治療であると実感しましたので、もう私は手術することはなくなりました。

Q 小線源療法とは具体的にはどのような治療でしょう?
 超音波検査装置で見ながら前立腺の中、主に辺縁部に長さ数ミリの針金状の小線源を肛門と陰のうの間の皮ふから専用の針を使って挿入します。大体十数本の針を使って50〜80個位の線源を埋め込みます。当院では全身麻酔で2時間程度の治療で3泊4日の入院で行っています。
 もし、不幸にして前立腺がんと診断されて手術を勧められたら、前立腺がん小線源治療をはじめとする放射線療法についても主治医にご相談してみて下さい。

 
 
 
NO.174号掲載 乳がんの乳房温存療法
 
大渕徹先生

Q  国内で発症する乳がんは年間6万人と増加中で、しかも40〜60歳代の働き盛りに多い。やはりストレスが関係しているのですか。
 いや、それは全くない。他のがんも同じです。乳がんは、乳汁を分泌する乳腺にできるがんで、女性ホルモン(エストロゲン)との関係が深いがんです。乳がんになりやすい人は、多少お酒を飲む、エストロゲンは脂肪から造られるのでわりあい高脂肪食、初潮が早い、閉経が遅い、出産・授乳をしないなどでエストロゲンにさらされる期間が長い人がリスクが高くなります。

Q とりたてて危険因子ともいえないですね。
 それに鎌倉市の乳がん検診の受診率(24%)をみても欧米に比べると非常に低い。ピンクリボン運動など啓蒙活動はいろいろ行われてはいるのですがね。乳がんは他の臓器に広く転移しやすいので検診で早期のがんを発見できれば、がんのある部分だけを取り除く手術で根治できます。
 でも、乳がんになっても亡くなる方は1/4。早期の発見で8割弱の方は治療後も元気に過ごせます。

  基本は手術だが、治療法の選択肢は多い 

ベテラン医師が
活躍しています

緒方晴樹医師
女性医師も
常駐しています

島 知江医師

Q しこりが心配になったら、まず受診を…。
 そうです。当院の初診は問診と診察、乳房レントゲン検査(マンモグラフィー、乳腺エコーで検査し、しこりはエコーガイドによる細胞診(細い針を痛変に刺して注射器で細胞を吸い取る)で調べます。

Q 当日に良性か悪性か判定できるのですか。
  はい。乳がんの治療は手術、薬物療法(ホルモン、抗がん剤、分子標的薬)、放射線照射といろいろあり、それらをうまく組み合せて治療方針をたてます。

Q 治療方針をたてるための検査は。
  CT、MRIなどの画像検査でがんの広がり、進行度、転移などがわかります。さらに針生検(乳房の組織を太い針で採取)でがんの悪性度、ホルモン感受性、遺伝子変異の有無などがわかるので随時行います。

Q 乳がんの発症を防ぐために米国の女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが乳房切除を公表しましたが、遺伝子の異常による乳がんはどの位ですか。
  乳がんになった方の5〜10%位。しかし遺伝子の異常があっても必ずしも発症するとは限らないし、例えばその人に姉妹や娘さんがいたりするとご本人だけの問題ではなくなるので、専門医のカウンセリングを受けるなどして安易に遺伝子検査などは受けるべきではないと思います。

Q 乳がんの治療は。
  基本はやはり手術で放射線、ホルモン剤、抗がん剤の発達で乳房を温存する手術も可能となっています。ちなみに当院では75%が乳房温存で、乳房全摘出を受ける方のうち4人に1人が乳房再建術を受けています。
 骨、肝臓、肺など遠隔転移した乳がんや再発の場合は、放射線や薬物療法になります。
 乳がんは閉経後でも、または術後10年経っても再発します。自己検診やがん検診で早く見つけて再発しないように治療することが大事です。

 
 

 
NO.173号掲載 乳がんの乳房温存療法
 
杉尾 芳紀先生

  タイプは2つ 

Q  そけいヘルニアってどんな病気ですか。
 「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置から飛び出た状態のことを言います。椎間板ヘルニアの「ヘルニア」もこの意味です。鼠径(そけい)とは、股(また)の付け根のことを言います。「そけいヘルニア」は、お腹の中にある脂肪や腸が、股の付け根にあるお腹の壁の弱い部分から、皮膚の下に出てくる病気です。腸が出てくることが多いので、脱腸(だっちょう)とも言われます。
 そけいヘルニアは直接型(内側型と間接型(外側型)に分けられますが、見た目にはあまり変わりありません。
 お子さんや若い方のヘルニアは間接型です。生まれてくる頃までに本来閉じるはずの腹膜の飛び出た部分(鰍鵬突起)が閉じずに残っていることが原因です。成人以後に症状が出てくることも珍しいことではありません。
 直接型は高齢者に多く、腹壁そのものが弱くなっていることが原因です。体質に加えて、便秘、肺の病気、排尿障害、重い物を持つことが多いなど、腹圧が強くかかる状態が原因になります。その他に、そけいより少し下からでてくる大腿ヘルニアもあります。

Q 症状とその検査法は。
 脱腸は、基本的には特別な検査をしなくても診察でだいたいわかります。一番多い症状は、立ってお腹に力を入れると股の付け根がふくらみ、寝てお腹から力を抜くとへこむというものです。飛び出ているときは、不快感や痛みを感じることがあります。

  命に関わる蕨頓(かんとん) 

Q 治療法としては手術ですか。
 そうです。次第に大きくなることはあっても、自然に治るということはありません。
 脱腸の手術自体はリスクが小さいので、お子さんや若い人なら早めに手術することをお勧めします。しかし、余病をお持ちの高齢者であまり活動的ではない場合は、余病と関連した手術の危険性と、ヘルニアを治療しなかった場合の危険性を天秤にかけて手術の是非を考える必要があります。

Q 放置しておくと危険な場合は。
  飛び出たりお腹の中に戻ったりしていた腸が、いつもより硬く腫れ、横になって腫れた部分を押さえても引っ込まなくなることがあります。これをヘルニアの嵌頓(かんとん)といいます。嵌った腸は血液の流れが悪くなるために壊死しますし、腸の中の物が流れなくなるので腸閉塞状態になります。そのため、お腹が張り、腹痛を感じるとともに吐くようになります。この場合は、至急手術しないと大変です。こうなってしまっては、お腹の壁を修復する(ヘルニアの手術)だけではなく、腸を一部切除する必要があります。

  再発が少ない手術法 

Q 手術法は進化しているんですか。
  昔は脱腸の周りの比較的丈夫な組織を糸で寄せて補強していましたが、術後に痛みが強い上に再発が多くありました。今はメッシュ状シートで腹壁を補強する方法が多いですね。この手術法で再発はずいぶん減りました。そけいの腫れた部分の上を切開してメッシュを入れる方法と、腹腔鏡を用いて腹壁の裏側(お腹の中)から入れる方法があります。左右とも脱腸になっている人の場合は、腹腔鏡の手術のメリットが大きいように思います。
 麻酔は、局所麻酔、腰椎麻酔、全身麻酔を選択できます(腹腔鏡手術は全身麻酔)。
 片側を局所麻酔、反対側を全身麻酔で手術した患者さんに聞くと、全身麻酔の方が楽なようです。

 
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NO.171号掲載 乳がんの乳房温存療法
佐伯 典之先生

Q  肺がんは早期発見しにくいがんだそうですね。
 肺がんは症状が出にくい上に、肺には心臓や骨、横隔膜の陰で従来のレントゲン検査では30%位見えない部分があります。そのため、小さい早期がんは見つかりにくいのです。
それが、CT検査が普及し、この10年ほど前からは性能も良くなり、私達呼吸器の専門医が、早期がんかどうか診断できないほど初期のケースでも見つかるようになってきました。

Q がんの診断では組織検査を行いますが、それでもわからない‥。
  レントゲンで見ることができない場所では、従来の気管支鏡検査では病巣に鉗子(カンシ)が当たっているか確認できない。そのため組織が採れたかどうかは検査結果が出るまでわからないため診断できないケースが結構ありました。それがCTで確認しながら気管支鏡検査ができるようになって、診断の正確さは飛躍的に向上しましたね。

Q 早期診断で治療も早期にできますね。
  最近では、胸腔鏡下手術といってCTガイド下で気管支内視鏡をやってもあまりにも小さいと診断がつかない場合は全身麻酔の手術になりますが、穴を開けてのぞいて、がんであればその本体と周囲の再発を防ぐために広域に切除することが標準治療になっています。70歳代までが対象となりますが、元気な方であれば80歳代でも治療が可能な場合があります。

Q その他に、最近の進歩で可能になったことはありますか。
  慢性の呼吸器感染症などもあげられるでしよう。
昭和30年代に結核に罹った方が、加齢で抵抗力が落ちて再発したり、糖尿病などにより免疫力が低下し、肺結核の後遺症である「気管支拡張症」に結核菌の仲間である非結核性抗酸菌や、緑膿菌という非常に根絶の難しいバイ菌が棲みついてセキや痰、喀血などの症状を起こします。

Q 肺がんの症状とまぎらわしく、高齢の方は心配ですね。なにか対策は?
  血管内治療といって、血管にコイルを詰める(コイル塞栓)、関東では私が最も多く手がけている治療法があります。
問題は、健康診断は1年1回ですが、ご高齢の方や既往症のある方は半年に1回は胸部レントゲンを撮ってほしいですね。放射線被爆量はCTの100分の1ですから心配ありません。診断や治療方針を決める場合は、CT検査をおすすめします。

NO.170号掲載 乳がんの乳房温存療法

早期診断・治療で治るがんだから検診を

遠藤 豊先生

Q  大腸がんはがんになる人の2位ですね。
 そうです。男女ともがんの部位別発生数(罹患数)は2位です。男は胃、大腸、肺、女では乳房、大腸、胃の順です。がんで亡くなった方の順位をみても男で肺、胃、大腸で女性では大腸、肺、胃です。2020年にはがんの罹患数、死亡数とも大腸がんが1位になると予想されています。
大腸がんは身近な病気ですが、怖い病気ではありません。早期に発見すれば90%以上治ります。
早期では便秘、下痢、血便、体重減少などの症状がないので、検診(便潜血反応)や内視鏡を受ける必要があります。
早期診断で治癒するため早期診断の意味が大きいと考えます。

苦痛も少なく、精度も高い内視鏡検査

Q 早期発見するには大腸内視鏡検査ですね。
  はい。病気の発見だけでなく、良性腫瘍など他の病気と区別することができる一番いい方法が大腸内視鏡検査です。

Q 内視鏡検査はまず2g近くの下剤を飲み、挿入するときの痛みなどで敬遠されがちですが。
  そこが最大の問題なんですね。便潜血検査(検便)で陽性と出ても、内視鏡やバリウムを飲んで精密検査を受ける人は、半分以下というのが現状です。胃の内視鏡検査は7割弱の方は受けてくださるのですがね。
私は医者になって25年になりますが、この点はあまり変わりません。
しかし最近では苦痛を抑えるために、内視鏡の細径化や、2段階に曲がるなど工夫されています。発見が難しい平べったいがん(表面型)は普通に見ただけではわからないこともありますが、青い光で観察したり、80倍まで拡大して診断できるようになり、精度は格段に上がっています。
前処置の下剤も今月末には味も飲みやすく、これまでの半分の量で腸もきれいになるタイプが認可される予定です。
検査医の技量も進歩しているので、これまでよりはるかに楽になっています。

まず、2年連続の 内視鏡検査を

Q 大腸は1b以上もある長い臓器だけに病変を見落とすことは。
  大腸にはヒダがあり、そのヒダの裏側の病変は発見しにくいということはありますね。ポリープの見落しを調べた研究では30%程度の小さな病変の見落しがありました。

Q そのようなリスクを減らすためにも毎年内視鏡検査を受けた方がいいのですか。
  2年連続して検査を受けポリープが全くなければ3年ごとでいいと思います。
内視鏡で切除できる粘膜内がんなら、数年間はそのままとどまっている状態にあるといわれ進行はゆっくりです。
ですからその間に内視鏡治療すれば良いでしょう。


 
NO.169号掲載 乳がんの乳房温存療法

北濱 昭夫院長
   時間外24時間対応 断らない救急体制に  

 社会医療法人として大船中央病院に期待されていることの一つに、救急医療があります。
当院は救急隊からの要請を絶対断らないために、医師の教育・経験を普遍化させて、誰もが診れるように受け皿づくりを充実させました。
昨年より救急専門医の稲垣栄次医師を招へいし、心肺蘇生など素早い判断と適切な処置が求められる救急の質を高めています。
また、救急の柱とされる脳卒中など脳神経系の患者さんへの対応には、東大脳神経外科より招へいした高室暁医師が担当し、超早期の発見と治療、再発の予防など脳卒中対策にも力を入れております。

   循環器、呼吸器などの内科系も充実  

 救急にはフォロー体制がしっかりしていなければなりません。内科系の充実は不可欠です。
そこで、心筋梗塞、心不全、不整脈など循環器の病気にもっとも有効な心臓カテーテル治療に造詣の深い三宅省吾医師が赴任しました。三宅医師はまた心臓・血管の専門医として高齢の患者さんの手術のスクリーニングなど、トラブル防止にも一役買っています。
死因3位の肺炎は老人の友″などといわれるほど高齢社会では身近な病気です。そこで、呼吸器内科に榎本達治医師、呼吸器外科に佐伯典之医師と専門医が常勤しています。誤嚥性肺炎と思われていたものが実は肺がんだったりすることもあり、機動力を駆使した適切な処置が可能となりました。
また、現在次々と新薬が開発されている化学療法(抗がん剤)は、外科の手術の後に使われるものとのイメージがあります。当院は血液内科の認定病院で、専門医の田邊寿一医師が常勤しています。白血病、リンパ腫、骨髄腫などは、かつては大学病院でないと難しいとされていた治療も一般病院で行えるようになったのです。
最近の医療は専門化が進み、内科であっても循環器や呼吸器など臓器別に細分化されています。そのような専門医が一緒に1人の患者さんの診断と治療に当たり、質の高い医療を提供するために頻繁にカンファレンスも行っています。
しかし、当院でできることは限りがありますから、より先進的な治療が必要な場合は、出身校の東大、がんセンター、癌研究会有明病院等を紹介させていただきます。
市民の目線からの忌憚のないご意見が病院を進歩させます。改善し、地域から必要とされる病院をめざします。


 
NO.169号掲載  

NO.168号掲載 乳がんの乳房温存療法
榎本達冶先生

Q  タバコを吸う人は吸わない人の5倍も肺がんになるとか。
 肺がん発生の最大の原因は喫煙です。喫煙指数(喫煙年数×1日の本数)で400を超えると肺がんの発生率が上がると言われています。
禁煙をするとリスクは低下しますが、タバコを吸ったことのない人よりリスクが高いことに変わりはありません。また、タバコを吸わない人が他の人のタバコの煙を吸う受動喫煙でも肺がんのリスクは約2倍になると言われています。
肺がんは早期に発見することが大切ですが、初期にはほとんど症状がありません。どんな方でも年に1度は胸部]線検査を受けることをお勧めします。また、タバコを吸う方はもちろん、過去にタバコを吸っていた方、家族にタバコを吸う人がいる等、何らかのリスクのある方は、胸部CT検査と痰が出る方は喀痰細胞診検査をお勧めします。CT検査は、胸部]線検査に比べて、血管と重なる陰影やより小さな陰影を発見することができます。

Q 治療法は手術だけ、とは限らない?
  そうですね。肺がんと診断されたら、がんの大きさ、リンパ節や全身に転移していないか等を調べ病期分類します。一般的な治療法は、肺がん全体の約2割位を占める小細胞がんと残りの非小細胞がんに分けて考えます。非小細胞がんの I 期とU期の患者さんは手術療法、V期は化学療法(抗がん剤)と放射線療法、W期の場合は化学療法になります。がん遺伝子依存症(oncogeneaddiction)のある場合は、分子標的治療を行います。
ところが病期からは手術適応でも、もともとタバコをたくさん吸っていて肺機能が落ちていたり、高齢で全身麻酔の手術は危険という患者さんも多くいます。
そのような場合、大船中央病院では、定位放射線治療を行います。定位とは、コンピュータとCTを使って病巣周囲の正常な臓器に多量の放射線が当たらないようにしつつ病巣だけに効率よく照射、死滅させる方法です。手術より患者さんの負担が少なく、早期発見できた人、リンパ節に転移していない人では、手術した場合と同様の治療成績をおさめています。

Q なぜ死亡率が高いのですか。
  肺の周囲には、血管やリンパ管が多いため、肺がんは血液やリンパ液を通して、ほかの臓器に転移しやすいことが、理由の一つです。
また、初期には症状が乏しいため、遅れて発見される方が多いのです。非小細胞がんのI期で手術できた方の5年後の生存率は約8割ですが、W期で発見された場合は1割以下です。早期発見の重要性が改めておわかりいただけると思います。


リハビリテーション科 その2
作業療法士(OT)篇
作業療法では、主に手のリハビリを実施しており、骨折などの怪我だけでなく脳卒中などの病気によって起こる麻痺やリンパ浮腫の方などへの援助を行っております。直接的に関節を動かす練習なども行いますが、手先の細かい動きの練習や認知機能のリハビリとして皮細工や藤細工といった様々な手工芸も取り入れています。また、片手でも料理を作れるように練習するなど、失われた身体機能の回復を目指すだけでなく、道具や方法の工夫により生活の幅を広げるお手伝いもしております。

NO.167号掲載 乳がんの乳房温存療法
三宅省吾先生

Q  『人は血管とともにに老いる』といわれますね。
 はい、これはウイリアム・オスラー先生の有名な言葉です。日本人の死因2位の心疾患、4位の脳血管障害も血管の病気で、その背景にあるのが動脈硬化、つまり血管の老化現象です。 これが極端な形で進行すると、さまざまな不都合が起こってきますが、その代変が心臓では狭心症でありさらに進めば急性心筋梗塞となります。

Q 動脈硬化と狭心症や心筋梗塞の関係は。
  動脈硬化はコレステロールの結晶や平滑筋細胞などが血管の内側にたまって、まるで下水の土管がつまるような状態になります。そしてだんだん硬くなり最終的には石のようになってしまうこともあります。
心臓を養っている冠動脈にこの動脈硬化が起こって狭くなるとどうなるか。安静時には少ない血流で何とかまかなえるのですが、体を動かすと心拍数が増え血圧も上がり心臓の仕事量が増えるため血液供給が追い付かなくなって胸が痛くなる。これが労作性狭心症と呼ばれる状態です。
一般に血管の内径が75%以上狭くなると胸痛などの症状が出るとされています。なお狭心症、心筋梗塞を総称して虚血性心疾患と呼んでいます。

Q 死亡率は狭心症は低いけれど、心筋梗塞は高い。その前ぶれは。
  症状が安定している狭心症の段階で命に関わることはめったにありませんが、症状が不安定になると急性心筋梗塞の前兆と考えられます。狭心症の典型的な症状は前胸部の締め付けられるような痛みで、通常数分で良くなります。急性心筋梗塞では強い胸痛が15分以上続きますが、糖尿病の患者さんや高齢者では痛みのない無痛性心筋梗塞もありますので注意が必要です。急性心筋梗塞は冠動脈が完全につまることで発症しますが、約14%の患者さんで発症早期に心臓が止まるような悪性の不整脈(心室細動)が発生します。最近はAEDが普及し、一般の皆さんにも心肺蘇生の知識が普及してきたため、救命される方も珍しくなくなっています。
いずれにしても急性心筋梗塞を起こした場合には一刻も早く病院にたどりつくことが大切です。最も有効な治療はカテーテルを用いてつまった血管を風船で拡げ、ステントと呼ばれる金属製の治療器具を植え込んで血流を再開する方法です。
発病からほ時間以内にこの治療を受けることができれば一般に予後は良好です。急性心筋梗塞の死亡率は1960年代には30%に上りましたが、現在は5%程度になっています。

Q 再発予防で気をつけることは
  何より大事なのは動脈硬化を進行させないこと。
動脈硬化を促進する危倹因子には脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、肥満、運動不足、家族歴などがあります。
今は心臓を保護する薬もいろいろ開発されていて、選択の幅も広がっています。男性なら50歳、女性は60歳になってこうした危険因子を持っていらっしゃる方は、かかりつけの先生と心臓の検査の要否ついても良くご相談されることをお勧めします。


 

NO.166号掲載 乳がんの乳房温存療法

大腸粘膜の慢性的な炎症

吉田篤史先生

吉田 典型的な症状は、便に血液が混じって、白い粘液が付いている粘血便が出て、進行するにつれて下痢、発熱、下腹部痛、貧血が起こることです。
 大腸粘膜に潰瘍(腫れてただれる、えぐれて穴があく)ができるためです。

天神 何といっても早期発見、治療が第一ですね。1〜2年前から血便が出るのだが、様子を見ようと診察を受けずにいたら急に重症化して大腸を全摘出した人もいますからね。

吉田 ただ、悪くなる一方ではなく、炎症がおさまり潰瘍の状態が良くなる(寛解)こともあり、ストレスや環境要因で再発するという経過の長い病気でもあります。

天神尊範先生

天神 再発を繰り返し、徐々に悪化して10年も経過すると、大腸がんになることもあります。

吉田 頻度の高い腸管外合併症は関節炎。他に皮膚症状、眼の症状などがあります。

いちばんの検査は大腸カメラ

吉田 診断は、前処置薬(下剤)を飲んで大腸を洗って粘膜をみる内視鏡検査(大腸カメラ)です。当院ではこの検査を年間3、000件行っていますが、急性期に全部をきれいにすることが辛いので、無理をせず炎症がおさまってから行い、CTやエコーの画像検査など苦痛のない方法を併用するよう心がけています。

薬も増え、治療の選択肢が増える

吉田 潰瘍性大腸炎は、体の中にある免疫システムが過剰に反応して自分の腸の粘膜などを攻撃するので、今のところ根本的な治療法はなく、一般的には炎症を抑える薬をのむ薬物療法が主体です。
 薬は腸の炎症を抑え再発を防ぐ5−ASA製剤(ペンタサ、アサコール)が主流です。

天神 ステロイドも炎症を抑えるのに即効性がありいい薬ですが、副作用も強いので、急性期に限るなど短期間に使います。
 他に過剰な免疫反応を抑える免疫調整薬(イムラン、タクロリムス)や生物学的製剤(レミケード)など薬の種類も増えており、一人ひとりの症状に合わせてこのような強い薬を使い分けています。
 また、薬物療法以外に症状を起こす白血球を血液から取り除き、また体に戻す除去療法や腸内細菌叢のバランスを保つビフィズス菌投与で状態が改善する人もいます。

再発を防ぎ寛解の維持を

吉田 以前のように重症で入院、手術で大腸をとってしまうということは少なくなりました。しかし、患者さんは増える傾向にあり、それも20〜40代が圧倒的に多い病気です。
 定期的な内視鏡検査で炎症の状態をチェックし、その人に合った薬、治療法で寛解を長く維持することがポイント。腸は脳の神経と連動しておりますから、ストレスがかかると腸も安静を保てません。相性のいい治療法を選択し、専門医と二人三脚で長期戦で治療に取り組むことですね。


 
 

 
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