2012 2012 2011 2011  
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NO.185号掲載 乳がんの乳房温存療法

進行がんで発見されることが多い

Q  女性のがん死亡率1位の大腸がんですが、発見するきっかけは。
 便潜血検査(検便)をきっかけに大腸内視鏡検査(大腸カメラ)見つかることが多いです。
消化管の中から出血すると便の中に血液が混入しますが、出血が少量の場合には肉眼的な変化に乏しいため、便の潜血反応を行うことで消化管出血の有無を診断します。
 検査方法は簡便で、検診では1日1回、2日間続けて採取する「2日法」が主流です。
 また食事の影響をうけにくい検査方法(免疫法)が有効です。

手術の適応範囲は広い

Q  治療は進行度によって異なるのですか。
 ごく初期で見つかった場合は、大腸内視鏡治療で切除することが可能です。ある程度進行した状態で見つかった場合は外科的切除(開腹手術や腹腔鏡手術)が必要になります。
 また、診断時すでに遠くの臓器に転移が認められた場合には化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の適応となりますが、転移の形態によっては切除可能なケースもあります。


Q  がんは増殖するだけでなく転移するのが怖いですね。
 診断時に遠くの臓器に転移を有する場合の予後は決して良いとは言えませんが、近年の手術手技と化学療法の進歩により大腸がんの治療成約は改善してきています。

人工肛門は進行度よりも肛門との距離

Q  大腸がんの手術というと即人工肛門のイメージがありますが。
 肛門に近接したがんの場合には永久人工肛門にならざるを得ない患者さんもいます。しかし、これも手術手技・機器の進歩により人工肛門を回避できる症例も多くなってきています。

Q  高齢でも手術できますか。
 
 年齢ではなく個体によります。近年は高齢者に手術を施す機会が増えています。特に現在標準治療となりつつある腹腔鏡手術は、開腹手術と比べ術後の回復が早いといわれており有用です。ただし術前検査で肺や心臓に極端な機能低下が判明した場合は手術が難しいと判断されるケースもあります。

Q  開腹と腹腔鏡のメリット、デメリットは。
 全身状態や病気の進行度により異なるため一概には言えません。まずは正確な診断が重要です。
 最後に、検便が陽性と判定された場合でも約半数の人には大腸に病気を認めません。
 また精密検査の結果、大腸がんと診断される人は0.1〜3%であり、そのうち約半数が早期がんと言われています。検便が陽性にでたからといって病気が確定したわけではありませんので、まずは精密検査を受けることをお勧めします。
 また、自覚症状として便通異常(便秘や便の狭小化など)がある場合にも精密検査を受けられることをお勧めします。具体的な検査はかかりつけ医にご相談ください。

NO.184号掲載 乳がんの乳房温存療法

胃がんの大半は腺がん。内側の粘膜から発生

Q  胃がんは欧米では減少しているのに日本は減っていないとか。
 人種間で違いがあるようです。
 日本人ではがんの罹患数で1位、患者数は高齢化に伴い増加しています。死亡率は治療成績の向上もあって減ってきていますが、肺がんに次いで2位ですから、まだまだ重要ながんです。


Q  胃がんになる仕組みは。
 胃がんの大半は腺がんです。胃の内側の壁の粘膜から発生し、外側に向かって粘膜→粘膜下層→筋層→漿膜下層→漿膜とだんだん深くなり、ついに漿膜を超えて胃のまわりの臓器に浸潤(ひろがり)するという進行をたどります。
 早期胃がんは粘膜下層までのがんです。それより深くなると進行胃がんと呼びます。
 また、胃がんが肝臓、肺、腹膜などに遠隔転移するようになるとステージ(病期)4と呼びます。

早期発見には 健診で胃]線検査を
  気になる症状は病院へ

Q  胃がんの原因は焦げた物といわれますが。
 最近言われているのは、ピロリ菌の感染や慢性胃炎と胃がんの発生との関連です。また塩分のとりすぎや野菜、果物の不足といった食生活も原因のひとつとされます。さらに喫煙、過度の飲酒もがんの原因となります。

Q  どのような検査を行うのでしょうか。
 健康診断などのスクリーニング(ふるいわけ)検査では、バリウム(造影剤)をのんでレントゲン(]線)で、胃の形の異常をみつけます。
 がんの疑いがあれば、内視鏡検査(胃カメラ)で粘膜を直接観察したり、病変の一部を取って細胞を詳しく調べ、がんの確定診断をします。
 上腹部痛の痛みや違和感などの自覚症状がある人は、早期発見のために医療機関で検査をすることをおすすめします。

がんのステージに応じて治療法を選ぶ

Q  転移しているか否かも胃カメラでわかるのですか。
 胃がんの診断がされたら、ステージを定めます。転移の有無はCT(コンピュータ断層撮影)が有効です。
 胃がんはステージにより治療法が選択されます。
 ごく早期のがんで限られた症例では内視鏡で治療をすることもあります。
 手術成績もよく、早期胃がんであれば5年生存率が90%以上です。つまりほぼ治すことができ、術後8〜14日で退院できます。
 筋層より深い進行がんであっても、治療の中心は手術です。それに化学療法(抗がん剤)や放射線治療を組み合わせることでよりよい治療成績をあげることが望めます。
 ステージ4になると基本的には根治術ができなくなり、化学療法が治療の中心となりますが、症状を和らげる手術をすることもあります。
 最近では分子標的薬という新しい方法もでてきました。約半分の方に効果があります。


Q  早期がんから進行がんになるまでどのくらいかかりますか。
 一概にいえません。
同じ腺がんであってもがんの進行には個性があるからです。例えば、がん細胞の分化度というものを顕微鏡で観察しますが、未分化であればあるほど悪性度が増します。


Q  ということは早期発見するためには定期的に診察を受けた方がよいのでしょうか?
 そのとおりです。1年前にはなかった早期胃がんが今年みつかることもあるのです。
 職場や自治体のがん検診はもちろん、気になる症状があったら気軽に医師の診察をうけてください。早期に治療ができれば命を落とすことのないがんですから。
尿のトラブル新しい癌検診法 白内障 検診で癌の早期発見を
NO.183号掲載 乳がんの乳房温存療法

便秘イコール痔ではないが

Q  考えてみれば、お尻って便意をがまんしたり、便が固いか軟らかいか、おならをするなどをコントロールしているわけですね。
 そうです。肛門の機能は他の組織と違って豊富な平滑筋や結合組織、血管などで形成されたクッションのような構造によって、繊細にコントロールをされています。
 排便で過度に力んでしまうと、肛門上皮が裂けたり(裂肛=切れ痔)、お話しした支持組織の一部が切れて、肛門のクッション構造がうっ血し伸びて外側に出てきてしまいます(痔=イボ痔)。 結果として、痛みや出血、お尻から痔が飛び出るといった症状がおきます。

Q  そうすると、痔になる原因は便秘ですか。
 便秘は65歳頃から増えてくるのですが、痔のピークは40〜60歳頃といわれます。便秘の方が痔になるケースは多いのですが、便秘だけで説明がつくわけでなく、排便の仕方や食事、生活のリズム、座業、冷えなどの環境要因も大きいと思います。

自己診断は禁物

Q  痔主は男性が多いというイメージがあったのですが、最近、TVなどで、若い女性が登場する痔の薬のCMを見かけますね。
 実は、男女の差はほとんどなく、女性で痔にお悩みの方は決して少なくありません。
 便秘は痔にとって、避けたいことですが、例えば、朝食抜きの生活や、お仕事中などでトイレをガマンする等の繰返しは便秘につながります。
 便秘だけでも、先ほどのクッション構造への負担となりますが、もし便秘だからといって、下剤をむやみに使ってしまうと、不規則に排便回数が増えてさらに負担が大きくなります。
 また、下痢を契機として肛門にばい菌が入って感染を起こす(痔瘻=あな痔)こともあります。
 痔だと思っていた症状が、実は潰瘍性大腸炎やクローン病、直腸がん、肛門管がんなど治療方針が全く異なる病気である恐れもあります。
 まずは最初にきちんと診断をうける事が大切です。恥ずかしいお気持ちはわかりますが、治る病気をかえって難治性にしてしまわないためにも受診をお勧めします。

大画面の肛門鏡を導入

Q  どんな検査をするのですか。
 当院では病気の部分を大きなモニターに映す肛門鏡を用いていますので、患者さんも一緒に観察できます。
 もちろん、奥に他の病気が隠れていないかを内視鏡検査で確認するので、ご安心ください。

Q  治療法は手術ですか。
 病変部を切除する手術もありますが、がんなどと違って一刻を争う病気ではありませんので、即手術ということはありません。
 まずは生活習慣や排便習慣の見直しをしながらお薬の治療を行います。
 その後の病状により、手術や注射で固める硬化療法、焼灼(しょうしゃく)など、患者さんと丁寧に相談しながら、より負担の少ない治療法を行っています。
 痔は一度なると、そのままではなかなか完治しない病気です。その時の体調や、生活リズムによっても症状や病状に波があります。大切な肛門です、末永く仲良くつきあっていかなければなりません。一度の治療で完結すると思わず、調子が悪い時に迷わず受診できる、頼れる医師をもつと安心ですよ。
 
NO.182号掲載 乳がんの乳房温存療法

いびきと無呼吸の関係は

Q  いびきって体に悪いことですか。
 ハイ。いびきは空気の通り道の気道が狭くなるため喉が振動して生じる音です。
 寝ると神経がリラックスして筋肉も舌もダラッとたるんで狭くなった気道を空気が通りにくくなり10秒以上呼吸が止まり、大きないびきをかいて呼吸が再開します。
 重症になると、1時間に30回以上の無呼吸、低呼吸を一晩中繰り返し、夜中にジョギングしているような状態になります。

Q  睡眠中なので、あまり自覚症状もないと思いますが、症状は。
 まず、いびき、無呼吸、中途覚醒、夜間頻尿(5〜6回)、起床時の頭痛、起床時の口や喉の渇き、熟睡感の欠乏など。日中は過眠やいねむり、疲労感や疲れがとれない、胸やけ、肩こり、集中力、記憶力、意欲の低下などです。

Q  喉に脂肪が付くためですか。
 原因は肥満、アゴが小さいあるいは後退しているなどが各35%、アデノイドや扁桃腺が大きいが20%、鼻閉が10%、飲酒、仰向きの睡眠などがあげられます。

Q  睡眠不足の他に合併症としては。
 体内は酸欠状態になって少ない酸素を全身に送ろうとするので、心臓や血管に大きな負担をかけます。健康人と比べると生活習慣病ともかかわりが深く、脳卒中になる危険率は10倍以上、高血圧は3倍、特に薬を飲んでも効きにくい薬剤抵抗性高血圧の合併は高率です。
 この他に狭心症や心筋梗塞、不整脈や心不全なども見られ、糖尿病やメタボとも関連しています。
 社会的には居眠り運転での事故が約7倍、重症度とともに発生率も高くなっています。2003年に新幹線の運転士が居眠り運転した事例や、最近では北陸自動車道での事故などで、睡眠時無呼吸症候群が注目されました。

肥満度によって増える無呼吸の回数

Q  怖いですね。検査や治療法は。
 外来でパルスオキシメーターを指にはめて睡眠時の血中酸素濃度を記録する予備調査をした後、1泊入院してポリソムノグラフィー(PSG)で睡眠中の脳波や心電図、筋電図、鼻と口の呼吸気流、体の酸素の状態などを検査して、呼吸と睡眠状態からどのような治療法がいいのかを選択します。
 軽症なら歯科で作成したマウスピースを口腔内に装着、扁桃腺が大きかったり、ノドチンコが長い場合は耳鼻科で切除手術、重症の場合はCPAP(鼻マスク)を睡眠時に一晩中装着して、鼻から圧力をかけた空気を送り込み気道を広げると、無呼吸やこれに伴う症状が改善されます。
 患者さんが唯一できることはダイエットをすることです。肥満度が上がれば上がるほど無呼吸の回数が増えますから。
 
NO.181号掲載 乳がんの乳房温存療法

Q  胃痛や胸やけといった自覚症状や胃潰瘍を繰返す場合は、胃がんを疑った方がいいですか。
  そのような症状で見つかる場合もありますが、早期胃がんの場合無症状のことも多く、定期的な内視鏡(胃カメラ)検査での診断をお勧めします。
 数ミリの小さなカメラが内蔵された管を口から挿入、胃の粘膜の様子を直接観察します。当院では最先端の胃カメラを導入しており、従来の胃カメラに比べ格段に進歩しております。ハイビジョン画像で80倍まで拡大観察できるので、かなり小さな病巣も発見できます。さらに粘膜表面や毛細血管の異常も観ることができるようになりました。
 当院ではかかりつけの患者さんでなくても胃カメラの検査を受け付けますので、受診していただければ幸いです。

Q  ポリープはがんに移行するのですか。治療はどうするのですか。
  胃のポリープで頻度が多いのが胃底腺ポリープと胃過形成ポリープです。前者はたくさんあってもあまり大きくはならないので6ヵ月から1年の間隔で経過観察し、後者は、時々大きくなることがあり出血しやすいので、貧血予防のために切除することもあります。どちらもがん化はほとんどありません。 しかし腺腫性のポリープは、大きくなるにつれてがん化するケースがあるので、胃カメラで治療することがあります。
 すでにがん化している早期胃がんは、胃粘膜にとどまっている状態なら内視鏡下胃粘膜層剥離術で根治できます。
 お腹を切らずに胃カメラでがん化した胃粘膜を切除するため回復も早く、体への負担が少なく患者さんにやさしい治療と考えられます。

NO.181号掲載 乳がんの乳房温存療法

Q  乳がんは必ずしも若い人のがんではない。
  そうです。乳がんのピークは40〜50歳代です。ただ子育てが終わった後でも発症します。
親御さんの介護など、ご自分以外の事に一番時間をとられやすい年代が一番多く、そのため自分の検診は後回しになってしまい、進行して受診される方もいます。怖いからといって症状があるのに来院をためらう方も多いのですよ。いきなり手術ということはありませんから、検査だけでも受けていただきたいですね。

Q  乳がんは自分でも検査できますよね。
  はい。ご自身で気づかれて来院される方も少なくありません。鏡で見たり、入浴中に触ってみたり、定期的にチェックしてください。
乳房やわきの下のしこり、皮ふのくぼみやしわなど形の変化、乳首から分泌物など、おかしいなと思ったら気軽に受診してください。

Q  マンモグラフィ(乳房専用]線)はギユツと押されて痛いとか。
  厚みのある物を平面的に見るので、圧迫しないと見えません。
また、乳腺がたくさんある若い方はしこりが隠れてわかりにくいこともあり、場合によっては乳腺エコーを行います。

Q  精密検査が必要とされたら。
 まずエコーやMRIといった画像検査を行ないます。さらに必要時には、注射器で細胞を吸い取る検査、針を刺して一部組織をとる検査、さらにしこりをとって全体を調べる検査などを行い、そこで初めて診断がつくこともあります。
 良性か悪性かの判定は数日でつきますし、前処置が必要な検査でもありません。早期発見・治療で治る乳がんはたくさんあるので、検診も含め、何か気になることがあったら受診していただきたいですね。

NO.180号掲載 乳がんの乳房温存療法
杉尾 芳紀医師

大腸がんは治りやすいがん

Q  女性のがん死亡率1位の大腸がん。なりやすい人は。
 直系の親族に大腸がんの人がいる、太っている、お酒をよく飲む、ハム、ベーコン、ソーセージ等をよく食べる、運動不足、喫煙などは大腸がんになる可能性を高くするようです。

Q  大腸がんにならないようにするには難しいとなると早期発見法は。
 大腸がんについて正しく知ることです。大腸がんは大腸の壁の一番内側の粘膜に発生します。粘膜から直接がんができることもありますが、多くの大腸がんは、この粘膜細胞が異常に増殖して盛り上がってできた良性の腫瘍(ポリープ)を経てがんになります。

Q  大腸内視鏡検査でポリープが見つかると取るのはそのためですか。
 そうです。良性のポリープのうちに切除しておけば、がんの芽≠摘むことになり治ります。ここが他のがんと違うところです。
 がんは、大腸の壁から血管に沿ってリンパ節に転移し、肝臓や肺に遠隔転移します。進行がんでもリンパ節、肝臓、肺などへの転移がなければ、8割以上の人が治ります。
 転移がある人でも、手術だけでなく、抗がん剤、放射線治療などを組み合わせて、以前より治療成績が良くなっていますから、早く見つければ、大腸がんで命を失わないで済みます。

Q  ポリープからがんになるまでの期間は。
 年の単位がかかります。ですから、検診を受け無症状のうちに発見することが大事なので。

精度が高い大腸内視鏡検査

Q  検便と内視鏡のどちらがいいのですか。
 内視鏡検査に勝る検査はありませんが、検便(便潜血検査)は誰にもできる簡単な検査で、ポリープやがんがあると出血しやすいため、便に混じった血液からがんを発見するものです。
 出血していない大腸がんもあるので、すべて陽性になるわけではありません。それでも、早期がんの5割、進行がんの9割は陽性に出るので、ぜひ受けてみるべき検査です。そして、検査結果が陽性だったら、必ず受診し、内視鏡検査を受けてください。
 内視鏡検査は大腸の粘膜を直接観察し、組織の診断もできます。ポリープがんの多くは、内視鏡で切除できます。

症状に早く気づくこと

Q  検診以外の対処法は。
 検診を受けない方は、せめて症状に早く気づいて下さい。まず便の色を見て、便に血が混じったときに、安易に痔のせいにしないこと。便秘、あるいは下痢と便秘を繰返すなどお通じの習慣が変わった、便が細くなってきた、便が残る感じがするなどの変化は放っておかないこと。おなかが張る、腹痛、貧血、体重減少も重要なサイン。  これらの症状は、大腸のどこにがんができるかによって出方が違います。 (図参照)  繰り返し強調しておきますが、大腸がんは、早期発見で治る可能性が高い。大腸がんで命を失わないために、ぜひ記憶にとどめておいて下さい。
NO.179号掲載 乳がんの乳房温存療法
 

40代だけでなく60代も

Q  女性のがん罹患率トップが乳がん。40代に多いがんだけに、結婚、出産、そして働き盛りでもある時だけに発病はつらいですよね。
 確かに他のがんと比べると若い人に多いのですが、危険区域の山は40代だけでなく60代もあります。長生き社会では80代の方の乳がん患者さんもしばしばおられます。

Q  最近はセンチネルリンパ節生検という手法が広まり、リンパ節をあまりとらない手術が主流になってきたそうですね。手術法はどのように変わってきたのでしょうか。
 センチネルリンパ節とは、リンパ管に入ったがん細胞が最初にたどりつく腋窩リンパ節のことで、がんのリンパ節への転移を見張ってるという意味で見張りリンパ節″とも呼ばれます。センチネルリンパ節生検は、手術の前に乳がんの近くに色素を局所注射し、これを目印にして、手術中に脇の下のセンチネルリンパ節を探しだして摘出し、このリンパ節にがんが転移していないかを調べることをいいます。
 これまでは、センチネルリンパ節生検でリンパ節転移が見つかれば、周囲の腋窩も広めに手術する<以下郭清(かくせい)>という考えが主流でしたが、現在は1〜2個までの転移なら放射線照射で対処し、腋窩郭清は行わないのが世界的な主流になりました。先月発表されたASCO(米国腫瘍学会:アスコ)ガイドラインでもリンパ節転移が1〜2個までなら郭清をすべきではないと明示されています。
 当院は2001年のセンチネルリンパ節生検を始めた時期からすでに転移があっても郭清は行わず、放射線を当てることで対処してきました。
 実際に、これまでリンパ節転移が見つかった130人の患者さんで郭清していなくても腋窩リンパ節再発は1人もいません。


治療効果を高める分子標的薬が次々と

Q  でも、放射線照射は髪の毛が抜けてしまうのでは。
 脳転移のため頭に照射する場合を除き、髪の毛は抜けません。
 転移で一番多いのは骨で、背骨、骨盤、大腿骨などで、まず骨折の予防が不可欠です。
 その他、肺や肝臓、脳と乳がんは全身に転移するので、薬による治療が主になります。
 今、抗がん剤と比べると、副作用の少ない分子標的薬が次々と保険適応になっており治療効果が上がってきました。

Q  抗がん剤、ホルモン剤、分子標的薬の使い分けは?
 他のがんより進化しているのが乳がんの分野で、がん患者さんのタイプに合わせて薬を使い分けます。

Q  そうなると、やはり主治医は専門医に。
 そうです。専門医の腕の見せ所です。
 それに再発がんは治癒が困難です。たとえば骨に転移していても全く無症状で元気な方も結構おられます。当院ではそういう方に、強力な抗がん剤でがんを小さくして進行を予防するような治療はあまりしません。なるべく痛みも少なく、生活の質を優先して普通の生活ができるようにいたします。
 それに乳がんは表面にあるので進行した乳がんの場合、出血したりバイ菌が付いて臭いがする場合があり、手術でそのような不快な症状を取ることもあります。
NO.178号掲載 乳がんの乳房温存療法

最新鋭の内視鏡登場!

吉田 光学診療部に最先端の内視鏡が導入されましたが、従来の内視鏡と比較しその特長は?

遠藤 まず、解像度が非常に良く、ハッキリ見えます。さらに80倍まで拡大できるので、粘膜表面の構造や毛細血管の異常を見ることができ腫瘍の診断に力を発揮します。 その他に患者さんにカプセルを飲んでもらい診断する機器や、バルーンがついた小腸用の内視鏡があり多くの小腸検査をしています。

吉田 カプセル内視鏡や6〜7mもある小腸の全部を見ることができる小腸バルーン内視鏡を行っている病院は全国でも珍しいですね。


小腸の病気、クローン病に威力発揮

遠藤 今、どんどん増えている潰瘍性大腸炎やクローン病は腸に炎症が起こる病気です。
 大腸だけに起こるのが潰瘍性大腸炎で、クローン病はすべての消化管に潰瘍をつくりえます。
 小腸を直接見たり、内視鏡下で拡張する小腸バルーン拡張術など小腸内視鏡を使った診断・治療はクローン病の先端医療です。

吉田 従来は、小腸狭窄がひどくなると腸閉塞を起こして物が食べられなくなるので、手術するしかなかったが、バルーン拡張術によってそれが回避できるのですね。

遠藤 流動食しか食べられなかった患者さんが普通に食べられ、仕事ができると喜ばれる姿を見ると医者冥利につきます。
 炎症を起こした大腸を切ってしまえば治る潰瘍性大腸炎と違って、クローン病は手術で治る病気ではありません。
 狭窄部分を手術しても、その後再び潰瘍や狭窄が出来て、何度も手術しなければならない病気です。ですから内視鏡を使って腸を切ることはできるだけ避けたいのです。

良くなったり、悪くなったり、経過は長い

吉田 そのような検査を受ける場合の症状は?

遠藤 便秘、下腹部痛、体重が減る、血便、貧血、そして思春期から20代の若い人に多く見られます。
 内視鏡、血液・組織検査結果などから総合的に診断します。
 良くなったり、悪くなったりを繰返す経過の長い病気で、長期の治療が必要になります。

吉田 超過が長いということは、治療を続けないといけないですね。再発の予防は?

遠藤 症状が良くなっていると思っても腸の潰瘍が悪化して狭窄が進行することはよく経験します。
  内視鏡やMRIの検査で治療が適切か否かをモニタリングしながらしっかり潰瘍を治すことが重要です。
 専門医の治療なら1〜2ケ月で退院し、支障なく社会生活も送ることができます。



NO.177号掲載 乳がんの乳房温存療法
Q  ある日突然、片方の足が付け根から先まで腫れあがるのは。
 深部静脈血栓症ですね。放置すると肺動脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)を合併する可能性があります。病気で長期間の寝たきりや、長時間の手術などではリスクが高まります。
 また、がんの患者さんなどは、普通の人に比べ凝固系の異常をきたしやすく、発症しやすいと考えられています。

Q  なぜ足が腫れるのですか。
 主に足のふくらはぎの深い静脈にまず血栓が発生し、いったん発生すると連続性に進展して増大し、太ももから骨盤内、さらには下大静脈まで進展することがあります。脚から心臓に戻る血液が診瀞し下肢全体が腫れあがるわけです。

Q  治療法は?
 まず、超音波(エコー)検査で血管が詰まっているかどうかを検査し、診断がつくと血液をサラサラにする薬で血栓の進展を予防します。それだけですと、血栓がはがれて心臓に流れ、ひどい場合には命にかかわるため、早急にIVR(血管造影検査室)にて下大静脈内にフィルターを留置し、血栓の心臓への流入を予防します。
処置そのものは30分程度で終了する簡単なものです。

Q  フィルターはずっと入れっぱなしに?
 現在では、一時的に挿入してあとで取り出すことも可能ですが、がんの患者さんなどは今後も起こす可能性が高く永久に留置することが多いです。
 また、脳出血、胃潰瘍からの出血の既往などがあり、血液サラサラ薬が使えない人に対しては永久留置が必要となります。

Q  狭心症や心筋梗塞というと命に関わる怖い病気ですが。
 心臓を養っている冠状動脈に動脈硬化が起こり内腔が狭くなると血流の供給が不足して胸が苦しくなるのが狭心症です。完全に詰まってしまうと急性心筋梗塞を発症し、時に命にかかわります。

Q  治療法は手術ですか。
 治療には薬物療法、カテーテル(細い菅状の治療器具)治療と冠動脈バイパス術があります。カテーテル治療は大きく切開することなく、手首や足の付け根の動脈からカテーテルを入れて、病変部をバルーン(風船)で拡げ、ステント(管状の金属)を植え込み補強します。

Q  再発はしないのですか。
 近年は、免疫抑制剤を塗布した薬剤溶出性ステントを使用するのが一般的で、多くの症例で長期にわたり再発(再狭窄)を防ぐことができます。

NO.176号掲載 乳がんの乳房温存療法
Q  IVR(アイ ヴィ アール)というのはどんな治療法ですか。
 IVRを訳すと放射線診断技術を治療に応用したものですが、一般的には「血管内治療」とも呼ばれています。
 当院は平成22年より社会医療法人として公益性の高い病院づくりをめざしていますが、この地域のニーズとして呼吸器、循環器、脳卒中の受け皿としての役割を求められていることがわかりました。
 いずれもIVRの血管造影システムで、リアルタイムに死角が少なく全部を見ることができ、手術を必要とせず治療に応用できるのですよ。

Q 手術しないで治療できるということは、体への負担が少ないということですか。
 そうです。病変のある局所にのみ注入するので体にやさしい治療です。
 それに医療というのは、時間との勝負でもあるんです。それなのに「様子をみましょうか」というのが一番危険。サッとスクリーニングし、精度の高い検査をし、その結果を治療に結び付ける、IVRはこれができるのです。
 住民に密着した救急医療、信頼される外来、入院後の診断治療はもちろんですが、より高度の治療が必要な場合は、最高の病院を紹介できる病病連携も整えています。

Q  65歳以上の方が早期胃がんで治療し、その結果合併症で亡くなった場合、治療しない方が良かったという見方もありますが。
 そのような結果にならないように、当院は臓器の治療ではなく、一人ひとりの患者さんに最も適した治療法を見つけようと、週1回の腫瘍カンファレンスを放射線診断、内科系、外科系の専門医が集まって検討しています。
 この度のIVR導入でさらに一歩進んだ治療が可能となりました。

Q  進行したがんや肝硬変など肝機能の悪い場合は手術できないといわれますが、切らずに治せるIVRの治療法とは。
 まず右足のつけ根に2〜3_の傷をつけ太い血管に細いワイヤーを入れ、血管が枝分かれして細くなるにしたがってカテーテルも細くし、肝がんの場所にできるだけ近づけます。レントゲンや造影剤で透視しながら手作業で進めるのですが、リアルタイムで鮮明な画像が立体的に見えるので、細かい血管が深部までわかります。
 肝がんの近くまでカテーテルを進めたら抗がん剤を注入し、ゼラチン等でそのがんを養っている血管を塞いでしまうので、がんは薬漬けと兵糧攻めで死滅してしまうのです。

Q でも、その血管もだめになるのでは。
  いいえ、肝がんは肝動脈から栄養を摂るのがほとんどですが、正常の肝細胞は栄養豊富な門脈という血管から栄養を摂っているのです。
 治療直後は正常な肝臓も一時的な障害を受けますが、1週間程度で回復し、塞いだ動脈もゼラチンが溶けたら再び血液が流れますが、すでにがんは死んでいます。

Q 肝がんは再発しやすいとも聞きますが、1回で終わりですか。
  いや、何回でも可能です。ただ、この治療法は、肝硬変からできたがんのようにアチコチの血管から栄養を吸い取っているがんの場合は、一回に全部やると肝臓の負担が大きいため長期間に分散してやりますす。

Q  悪性新生物の中で患者数は胃がんがトップですが、死亡者数のトップは肺がん。そのわけは。
 肺がんの早期発見と診断は非常に難しい。肺がん発見時には、すでに進行しているケースが多いのです。症状が出にくい上に、従来のレントゲン検査では発見できない場合もあります。それに増殖が早く、転移しやすい肺がんも多いのです。

Q CT検診も普及していますが‥。
  その通りですが、CTでせっかく異常を見つけてもがんか否かの判断は専門医でも難しい場合があります。

Q それを確定するにはどのような検査を。
  一般的には気管支鏡(内視鏡)を挿入し、レントゲンをあてながら位置を確認し、鉗子を使って、病変の細胞を採りがんの有無を調べます。しかし、肺は風船のようにふくらんでいて、立体的ですので、正面から見て正しい位置でも前後にずれてしまっていることがあります。
 今回導入されたIVR機器はCT透視が可能であり、リアルタイムで立体画像がわかりますので、この弱点が克服できます。私は血管内治療のみでなく、小型肺がんの診断率向上に応用できると期待しています。

 


 
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