(22)
no162掲載
 
   高齢化に伴う生活習慣病の増加とともに関節痛や筋肉の減弱、骨の減弱化などで悩まれている方が増え、健康食品業界ではロコモティブシンドローム予防関係の売上増に期待が高まっています。
 ロコモとはロコモーションのことで運動に関わる器官(骨、関節、筋肉など)、シンドロームは病気、疾患のことで、すなわち「運動器症候群」と略されています。
 アルツハイマーなどの脳機能の障害と並び運動器の機能低下で寝たきりや生活の質の低下に悩む方が増加しています。運動機能は、短期間の入院でも著しく弱まることはご存知の通りです。筋肉は使わないとすぐに退化、高齢者ほど回復に時間がかかります。高齢者で一番の問題は筋肉が落ちてしまうことで、この筋肉減弱症(サルコペニアと言います)をいかに予防するかが大事です。
 それにはただ歩いていてもだめ。高齢者は食事の量も少なくなり、消化吸収も悪くなりますので、心してたくさん食べる工夫が必要です。特に高タンパク質の食品を摂らないと筋肉(タンパク質)減弱を抑えることができません。
 グルコサミン等関節に関わる健康食品は、多くの方が利用していますが、ロコモは複合的な問題で単一の健康食品を摂っても解決は難しいでしょう。
 むしろタンパク質をしっかり取る食生活と十分な睡眠(睡眠中に成長ホルモン多く分泌され筋肉や骨の補修をする)、そして適度な運動(骨に物理的な刺激が加わることで骨の修復が高まる)この3点セットが大事であることをしっかりとご理解下さい。
 
(21)
no161掲載
 
   新聞やテレビの通販番組でよく出てくるサプリメントに「オルニチン」があります。シジミ何百個分とか、シジミのみそ汁何十杯分という宣伝文句をご覧になられた方が多いと思います。昔からシジミは眼精疲労や二日酔いに効果的とされ、シジミのみそ汁が飲まれています。
 シジミは、タンパク質やビタミン類、ミネラル類を豊富に含み、特にタウリン、アラニン、アルギニン、オルニチンというアミノ酸を高含有しています。これらのタンパク質やアミノ酸類は、肝臓の機能を助ける作用があるためです。
 シジミ100g(30個前後、味噌汁1杯分程度)でオルニチンとしては10〜15mgに相当します。肝臓は、健康長寿にとって肝心要の臓器。よく緊張したりするとストレスで胃が痛む方が多く、神経性胃炎等といわれますが、肝臓は痛みを発信しませんが、解毒作用やあらゆる代謝機能を司るもっとも重要な臓器です。
 ストレスや過度のアルコール摂取、過食、睡眠不足などでその働きが低下することは知られています。健康長寿のために肝臓を丈夫にすることの大切さを訴求した健康食品として健康食材であるシジミに注目したのが「オルニチン」です。
 オルニチンは、体の中でもアルギニンと言うアミノ酸から作られていますので必須アミノ酸ではありません。
 シジミ以外にも魚介類に比較的多く含有されています。健康食品として販売されているオルニチンは、シジミから直接抽出したものではなく、発酵法などで造られたものです。ストレス社会を乗り切るには生活習慣の見直しを心掛け、健康食品も賢く利用して上手くストレスに対処しないと胃肝臓(イカンゾ)ですね。
 
(20)
no160掲載
 
   私達の身体は食事から摂取した栄養成分を消化吸収し、60兆個もある細胞内で代謝して水と炭酸ガスにして排出しています。その際にできるのがATP(アデノシン3リン酸)という物質で、細胞のエネルギーのもとになります。細胞内のミトコンドリアがこのATPを作り出す時に必要となるのがQ10(補酵素)です。
 Q10は、細胞内で作られますが、心臓に最も多く存在し、肝臓・腎臓・筋肉等エネルギーをたくさん必要とする組織にも多く存在しています。細胞はコレステロールの合成と同じ経路でQ10を作っているので、血中コレステロール値を下げる薬であるスタチン系の医薬品などを服用しているとQ10が作られにくくなり、なんとなく元気がなくなってくることが知られています。
 かつては心臓疾患用の医薬品として登録されていましたが、現在では食品としての使用が認められています。
 運動、特に有酸素運動がダイエットの必須条件でもあり、アスリートたちがQ10を使用し、基礎代謝を高め、脂肪の代謝を促進することからエネルギー増強、ダイエットやアンチエイジングサプリメントとして注目された成分です。
 このQ10は、20歳過ぎから加齢に伴い減少します。特に40代以降の方は、Q10を補うことでより元気で行動的な活動に役立ち、健康長寿を目指している方には有効なサプリメント。
 また、ペットも高齢化していますので補酵素Q10は、ペットにとっても有効な健康成分。ペット用アンチエイジングサプリとして市販されています。
 大切なペットと共に元気で健康長寿を目指しましょう。
 
(19)
no159掲載
 
   私達の身近な食品には、納豆の納豆菌、ヨーグルトの乳酸菌、パンやビールの酵母菌、味噌、醤油、お酢、漬物も乳酸菌・酢酸菌等の微生物の力で醗酵させたものや、植物の菌糸体によって出来たものにシイタケやマツタケなどの茸類があります。これらは、健康食品としてのイメージも定着し、サプリメントとしても抵抗感はあまりないようです。また、藻類であるクロレラやミドリムシ(へマトコッカス)やカロテノイド類であるアスタキサンチンも藻類のタンク培養等で大量生産されています。ではこれらの微生物は、健康食品として効能効果があるのか。
 発酵食品は、毎日食べることで腸内細菌のバランスを保ち健康に良い食べ物と言われていますが、その食品から発酵に関与した微生物だけを取り出して大量培養したものが果たして艮いか否かは別の話。ヒトでの十分なエビデンスが認められているかが問題です。健康食品として長く利用されているクロレラ等にはそれなりの機能性が確認されていますが、多くのサプリメントになっている微生物由来の商品にも原材料と同じ効能効果が確認されているのかが大事な点です。広告で何十種類の栄養成分が取れると言うのも要注意です。分析では確かに何十種類もの成分が検出されるでしょうが、各栄養成分の含有量がどの程度なのか、体で不足していないような栄養成分では食べても役に立ちません。とにかく健康食品は薬ではないので試してみる価値はありますが、人での有効性が確認されているかをメーカーに問い合わせるのも賢い消費者です。

 
(18)
no158掲載
 
   クリルオイルと言うものをご存じでしょうか。多くの方はご存じないと思いますが、今アメリカで人気急上昇のサプリメント。3月中旬開催の「健康博覧会2012」でも2,3社が展示しておりました。
 クリル(Krill)とは、オキアミのことで、南氷洋でクジラのえさになる小さなエビの形をした動物性プランクトンです。
 このオキアミには、抗酸化成分で知られるアスタキサンチンやエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)といった育味の魚に多いω3(オメガスリー)系の高度不飽和脂肪酸を含有。しかし青味の魚と少し違うところが今注目されているのです。 それはEPAやDHAがリン脂質に結合して存在しているのです。リン脂質は油ですが、水とも油とも親和性が高く乳化剤のような作用をします。 このオキアミから抽出・精製された脂質(油分)は脳血液関門を通過し脳細胞に取り込まれることがわかってきました。
 高齢化に伴い増加しているアルツハイマー症や脳梗塞等の生活習慣病等の脳機能改善効果が期待されているからです。
 まだ人での効果を示す研究報告は十分ではないが、動物試験では記憶の改善効果や脳神経細胞の再生等のデータが報告されています。高齢化は世界中の問題で、各国研究者が注目して研究しており、近々多くのエビデンスが示されると期待しています。青味の魚による血液サラサラ効果は世界中で定着し、サプリメントが販売されています。EPAやDHAには、がんの発症抑制効果やアレルギー反応の抑制効果も知られています。もっと摂取する必要がある健康成分です。
 
(17)
no157掲載
 
   身近な野菜のトマトに多く含まれているリコピンは、ベーターカロテンやアスタキサンチン等と同じカロテン類。体内でビタミンAに転換されるものからそうならないものまで、いろいろな生理活性がある中で、最も代表的な機能に活性酸素を除去する抗酸化作用があります。
 すべからく植物は、太陽からの紫外線を浴び続け、動物のように日蔭に逃げられませんので、日焼けを防ぐための工夫がなされています。それが表面に濃い色素を作り紫外線による活性酸素を防御する機能性成分を作り出しているのです。我々人間も含めて動物は、植物を食糧とし、特に色の濃い野菜や果物を食べましょうと昔から言われており、それには抗酸化成分を頂くということがあったのです。
 その一つがリコピン。トマトに多く含まれ、色が緑から赤に変わるに従って含有量が多くなることが判っています。体内で発生する活性酸素の中でもっとも強烈な一重項酸素の除去作用が一番高いことも知られています。一般にカロテノイド類は抗酸化作用が高く、抗がん作用等も知られてきています。がんの発生は正常細胞内の遺伝子が紫外線や体内で発生する活性酸素種等によって酸化されたり傷ついたりすることが引き金になり変異することが知られています。我々は生きる上で酸素を必要とする以上活性酸素が出来てしまうことは避けられない宿命にあります。抗酸化成分を含む野菜や果物等をしっかりととることが大事ですが、どうしても野菜や果物嫌いの人はサプリメント等で補充しておくことも意味のあることです。

 
(16)
no156掲載
 
   人も動物も初乳には赤ちゃんの免疫機能の確立や感染予防に必要な成分、成長に必要な栄養成分等が高濃度で含まれています。初乳の成分分析から感染防御成分の一つとしてラクトフェリン(ラクトとは乳、フエリンとは鉄のことです)が含まれています。鉄の結合性を持つ乳中の糖たんぱく質の一種で、機能性についても沢山の論文が出ています。赤ちゃんではなくて成人での有効性についてはまだ臨床試験が乏しいですが痛に有効であるという基礎的な研究結果も出ています。
 現在市販されているラクトフェリンのサプリメントは全て牛乳から取り出したものです。乳牛でのラクトフェリンと母乳でのラクトフェリンには違いがあるとする報告もあります。鉄分を吸着するので貧血の方は使用しない方が良いとするものから、鉄分を吸着するのでバクテリアなどが増殖できなくなるために抗菌作用があるというものもあります。まだ研究中で効果効能については総合的な評価が定まっていません。
 今日ホットな話題では、国の研究機関である放射線医学総合研究所が、マウスでの実験でラクトフェリンを食べさせると放射線障害を低減できるという報告をしています。またダイエットにも有効とするデータも報告されますが、データの積み重ねが必要です。今後いろいろな分野で明確なエビデンスが出て来る可能性のある食材でもあり、大いに期待したいところです。基本的に牛乳成分ですから食経験はあるので安全性については心配ありませんが、牛乳アレルギーの方は注意が必要です。

 
(15)
no155掲載
 
   PMS(月経前)症候群や閉経に伴うホルモンバランスの変化が女性のQOLを低下させ、特に更年期で骨粗しょう症が女性ホルモンの減少に影響することはよく知られています。ホルモン補充療法が欧米では一般的に医療機関で行われていますが、日本ではまだ受けている人は少ないようです。
 健康食品として女性ホルモン用の働きが注目されている成分として大豆イソフラボンがあります。大豆の胚軸部分(芽が出るところ)に多く含有している成分です。女性ホルモン(エストロゲン)に化学構造が類似しているため、体の中で減少したエストロゲンの補充をするのではないかと期待されているのですが、エストロゲンと比べるとその作用力は1000分の1以下と言われています。これで本当に効果があるのでしょうか?
 多くの研究データがありますが、効果ありと効果なしの両方のデータがあることも事実です。近年の研究で、体に吸収されたイソフラボンが特に効率的に働くタイプの人とそうでない人がいることが解ってきました。遺伝子の問題ではなく、イソフラボンをエクオールという成分に分解する能力を持った腸内細菌を保持しているか否かによるのです。欧米人に比べれば日本人はこの腸内細菌を持っている人が約50%いることが判ってきました。
ですから効果の出る人とそうでない人が出るのです。薬ではないので健康食品は全てそうですが、何かを食べればそれで効果が出るという単純なものではありません。生括習慣全体を適正化することを心がけないと、効果は期待できません。

 
(14)
no154掲載
 
   今回はサプリメントをお休みして、誰もが心配している放射性物質による健康問題について少し考えてみたいと思います。
 福島原発事故による不幸な事態にさらされている福島県とその周辺の方々には、風評被害も含めて特に深刻な問題が続いていることは大変お気の毒なことです。今回の事故は20年前に発生したチェルノブイリ原発事故と同レベルのものとされています。チェルノブイリ20年後の結論と教訓について小林泰彦氏「放射性物質の基礎を学ぶ」によると、作業した消防士ら134人に急性放射線障害、3か月以内に3人が死亡その後20年間に19人が死亡している。危険を知らされずに放射性ヨウ素で汚染されたミルクを飲んだ子供たちの中から、通常の10倍の頻度で小児甲状腺がんが発生し、発見された患者数は約4,000人以上。多くは手術で治り、20年間の死亡患者は9〜15名だそうです。また白血病も含めて、その他の病気の増加は確認されていない。
 しかし最も深刻な被害は、社会経済的な影響、不安ストレスなど精神的な障害、不必要な妊娠中絶の増加が起きたとされています。今の日本では、交通事故やいじめなどによる自殺で亡くなる子供の数のほうが深刻な気がしますが如何でしょうか。妊産婦や乳幼児・未成年者はできる限り放射線障害のリスクを回避する必要がありますが、成人特に中高年については、ご自身の余命と放射線障害で発生する癌などのリスクを考えると私は何も心配する必要はないと思いますが。
 福島県の温泉旅館が風評被害で気の毒な状態になっています。中高年の元気なお金持ちの方は、どんどん福島県に旅行することをお勧めします。今なら大変お得なサービスを受けられるうえに社会貢献もできてしまいますよ。
 
(13)
no152掲載
 
   近年高齢化に伴い健康食晶の販売が増加、トクホを含めて2兆円の市場になっています。健康食品の正式な定義はなく、厚労省も「いわゆる健康食品」と言っています。欧米ではそれなりに法律も整備され、認識されています。しかし日本では、口から入るものは食品と医薬品に分類されているだけで、健康食晶は単なる食品なのです。唯一トクホだけが機能性を表現できますが皆さんが使用しているサプリメントとか健康食晶と言っている商品については確かなエビデンスがあるとしても食品ですから薬事法の関係で表示できません。
 健康食晶の素材であるコラーゲンとかコンドロイチンなどその多くにエビデンスが認められますが、その素材を使って販売されている商品について信頼できる人試験は少ないのが実情です。ましてや病人での試験はほとんど行われていません。したがって健康食品は、病人が使用することは止めるべきです。病気を治してから健康補助的に使用することをお勧めします。食品とは言え、素材には機能性がありますので、医薬品との相互作用(薬の効果を強めたり弱めたりするもの)があ.ります。医師に内緒で健康食晶をとると治療に悪影響を与えることがありますので必ず医師に伝えなければいけません。また、がんに有効といわれているβ−カロテンも喫煙者がとると肺がんを促進するという報告もあります。
 健康人や健康に多少不安のある人も健康食晶は、治療食でも治療の補助食でもないことをぜひ理解してください。
 
(12)
no151掲載
 
   健康飲料としての日本茶は今やコンビニの定番商品で、家でお茶を飲まない若者もコンビニのお茶飲料は飲んでいます。人気の秘密は、お茶の渋みの成分であるカテキンが健康機能を持っているからでしょう。カテキンの作用は、抗酸化、抗菌、腸内細菌改善、コレステロール上昇抑制、抗肥満、抗ガンなど幅広い機能が確認されています。
 お茶の産地である静岡県は胃がんの発生率が低いことが疫学調査で知られています。また科学的な調査はありませんが、茶道の先生にがんの発生が低いとも言われています。
 カテキンとは、植物ポリフェノールの一種で、お茶や柿などの渋みの成分であるタンニン類でもあります。
 体の中で発生する活性酸素を消去する抗酸化作用によって多くの生理機能を発揮しているのです。
 動脈硬化は、活性酸素が原因による血管の損傷です。カテキンが高血圧や糖尿病などによる動脈硬化の予防に有効である研究報告も多く見られます。
 また、多くの研究がなされているのが抗菌・抗ウイルス作用で、風邪の予防にお茶でうがいをすると効果的です。最近では、脳のリフレッシュから痴ほう症の予防にも有効ではないかと言われています。
 多くの研究からみて、成人で1日5〜10杯程度の緑茶を飲まれると良さそうです。少し熱いお湯で入れるとカテキンが多く出ます。ぬるめのお湯ですとテアニンと言う気分を落ち着ける成分が多くなります。朝と夜で飲み分けることも賢い飲み方になります。
 生活習慣病対策にお茶は最高の飲み物です。日本でのお茶のルーツは、鎌倉にも関係しています。臨済宗の開祖栄西禅師が普及したもので「喫茶養生記」(1211年)を残しています。
 
(11)
no150掲載
 
 

 テレビのショップチャンネルの人気サプリが「グルコサミン」。高齢者が元気で階段を上る様子が出てきます。加齢に伴い膝の関節が痛んだりして階段の上り下りは苦労をされている方が如何に多いかと言うことです。この様なテレビや新聞の広告を見ると悩みを抱えている方は試してみようかと思うのは当然のことでしょう。わが国のサプリメントは決して安い価格ではありませんので良く理解してから試してみて下さい。
 グルコサミンとはそもそも何なのでしょうか。字の通りグルコース(糖質)とアミン(アミノ酸)の化合物です。キノコ等の微生物やエビ・カニの穀から工業的に抽出したものです。とり立てて珍しいものではありません。私達の体内で常に作られている成分です。軟骨や結合組織に存在し、コンドロイチン、ヒアルロン酸、コラーゲンなどと一緒に軟骨細胞を形成している構成成分の一つです。加齢に伴って減少することは事実です。

 特に女性の場合は、更年期のホルモンバランスとの関係で影響が大きいと言えます。
 現在流通しているグルコサミンのサプリメントは、他に色々な成分が複合されているものが多いです。グルコサミンが有効に働いているのか否か明確ではありません。サプリメントは薬ではありませんので効果を期待しないでください。
 1カ月くらい試してみて継続するか否かを判断されたほうが良いでしょう。
 加齢に伴う体の変化は、生活習慣をきちんとすることが先決です。体重管理、適度な運動、バランスの良い食生活(特にたんぱく質をしっかり摂ること)、十分な睡眠に心掛けて下さい。そのうえでサプリメントを検討することが大事です。
グルコサミンは、エビ・カニのアレルギーのある方は要注意です。

 
(10)
no149掲載
 
   少し前にスーパーの鮮魚売り場で繰り返し流れていた「さかな・さかな・さかな…」の呪文の様な歌声が聞かれませんね。その昔、魚を食べると頭が良くなると言われ、子供に食べさせようと話題になりました。その後、マグロの兜焼きが高級料亭で人気になりました。この現象の要因がDHAなのです。DHAとは、ドコサヘキサエン酸という脂肪酸です。脂肪は動物性脂肪と植物性脂肪が知られていますが、これらの脂肪を構成しているのが脂肪酸です。脂肪酸は、リノール酸、リノレン酸、DHA、EPAといった多価不飽和脂肪酸と動物性脂肪に多い飽和脂肪酸、そしてオリーブ油に多いオレイン酸等の一価不飽和脂肪酸があります。それぞれ体の機能を保持するために必要なものですので、動物性が悪く、植物性が良いというような単純な分類は間違いです。どちらも多く食べればカロリー過多で肥満のリスクを伴います。
 さて、DHAですが合成できませんので、魚を食べる必要があります。特に記憶力など学習能力の改善、アレルギー等の炎症抑制、血液の凝固抑臥脂質代謝の改善など多くの機能性が研究報告されてきています。サプリメントとしても販売されていますが、この脂肪酸は抽出した場合、酸化されやすい弱点があります。酸化を防ぐ工夫をした品質の良いものを選ぶことが大事です。
 1日の摂取量としては1000mg程度が良さそうです。DHAは脳の血流改善作用がありますので認知症の改善が期待されています。しかし、頭が良くなることは決してありません。学習能力が高まることからそのように過大評価されていますが学習しない方には効果がありません。
 
(9)
no147掲載
 
   ポリフェノールと言う言葉は聞かれたことがあろうかと思います。これは単一の成分名ではありません。フェノール基を沢山持つ成分の総称です。お茶の渋み成分であるカテキン、赤ワイン、ブルーベリー、ルイボス茶、ナス等の色素であるアントシアニン、大豆のイソフラボン、紅茶やウーロン茶のテアフラビン等がポリフェノールです。最近知名度の高い甜茶の機能成分もポリフェノールです。ポリフェノールは、カロテノイド類と並ぶ抗酸化機能を示します。
 特に植物に多いのは動物のように移動が出来ないため、絶えず外部の環境の影響を受け続けます。植物にとって太陽光は、植物の成長成分である澱粉を合成するので大切ですが、大量の紫外線にさらされ続けています。紫外線は活性酸素の発生源でもありますので、植物にとっても必要以上は防がなくてはなりません。抗酸化成分としてポリフェノールを多く作り出しています。
 特に葉の表面や果実の表面に多いのが理解できますね。また紫外線の強い南国の物に色の濃い野菜や果物が多いのはそのためです。私達は、外部からの紫外線は、メガネ、衣類などでかなり防御出来ますが、体内では絶えず呼吸や食事を消化吸収しエネルギーに変えるときにも活性酸素が発生しているのです。過剰に発生した活性酸素を消去する仕組みは出来ていますが、ストレスなどで十分消去しきれない場合が問題になります。生活の中でこの植物の恵みを上手に利用しましょう。
 
(8)
no146掲載
 
   補酵素Q10とはどのような健康成分なのでしょうか。コーエンザイムQ10、とかCoQ10とか呼ばれています。かつては心臓疾患用医薬品としてしか使用が出来ませんでしたが、現在は食品でも効能効果を標模しなければ使用できる成分です。私達の体は、おおよそ60兆個の細胞から成り立っています。その細胞内には、ミトコンドリアという器官があり、そこでエネルギーのもとを生産しています。体は、食事から摂取した栄養成分を消化吸収し、細胞内で代謝して水と炭酸ガスにして排出していますが、その際にできるのがATP(アデノシン3リン酸)という物質で、これを細胞のエネルギーとしているのです。このATPをミトコンドリアが作り出す時に助ける補酵素としてQ10が必要なのです。
 細胞は、コレステロールの合成と同じ経路で補酵素Q10を作っていますのでコレステロールの合成を抑えるような薬(スタチン)を飲んでいる方は、Q10が作られにくくなりますので、元気がなくなってくることが知られています。
 また加齢に伴って低下することも知られていますので、アンチエイジング用のサプリメントとして人気があります。
 この補酵素Q10の発見は米国の学者ですが、医薬品として製造法を確立したのは、日本の企業で、かつては日本産が世界で使用されていました。
 加齢に伴う活力の低下を補う機能や抗酸化機能も認められています。最近では化粧品としても使用されています。
 
(7)
no144掲載
 
   トクホ商品で最大の売れ筋はおなかの調子を整える商品です。平たく言えば便秘の解消ですが、「便秘」は医学用語ですから薬事法に抵触しますから商品の宣伝には使用できない用語です。おなかの調子を整える素材としては、乳酸菌類、乳酸菌の増殖促進としてのオリゴ糖類、食物繊維などがあります。
 今回は乳酸菌についてお話しましょう。スーパーでの乳製品売場でヨーグルトは売れ筋商品で、たくさんの商品が並んでいます。この中に国が認めたトクホマークがついたものがあります。通常は500g入りのプレーンなヨーグルトですが。これらはメーカーに関係なくいずれもおなかの調子を整える機能を人試験で確認しているものです。毎日一定量を食べることで便秘を防ぎ、大腸内の環境を有用菌優先のよい環境に整えてくれます。便秘がちや下痢など、お腹が弱い方、便が非常に臭いとかお腹の膨満感が気になる方などに適しています。
 乳酸菌は、糖類を利用し乳酸発酵をすることで乳酸を生成します。この乳酸が腸内の殺菌作用を発揮します。また乳酸菌の菌体膜が腸管免疫を活性化しますので、生体防御機能が高まることが知られています。生きて腸まで届くということを強調している商品もあります。しかし生きて腸まで届いたという証明をどのように確認しているのでしょうか。
 免疫機能の増強は死んだ乳酸菌でも生きていても同じで乳酸菌の膜が重要因子なのです。また乳酸菌の種類にもたいして関係ありません。普通の500g200円程度のトクホ商品であればいいでしょう。
 毎日食べることが重要です。腸の元気は若さのもとです。
 
(6)
no143掲載
 
   老いも若きも女性であれば年令詐称?してでも若く見せたいと言うのが人情でしょう。そんな女性心理にマッチしたのがコラーゲンです。コラーゲンとは、豚の皮や鳥の骨・皮あるいは魚の皮・鱗から抽・出したものです。
 原料としては、豚皮が最も多く、次いで魚(テラピアやコイなど)の鱗です。コラーゲンは、全ての動物の骨、皮膚、筋肉、腱、血管等を形成しているたんぱく質の一つです。
 皮膚の弾力が年齢と共にたるんでくるのはコラーゲンの老化現象です。赤ちゃんのほっぺの弾力と4、50歳代の方の弾力ではかなり違いますね。コラーゲンは20歳ごろをピークに加齢に伴って皮膚などでの生産が減少してきます。また骨がもろくなるのも骨のカルシウムを接着しているのがコラーゲンなので、これが減少することで脆くなるのです。
 魚や肉の煮付けを翌日食べようとするとゼリー状に煮汁が固まっています。これはゼラチンですが、このゼラチンを酵素で低分子化したものが現在健康食品として販売されているコラーゲン商品なのです。粉末状のものからドリンクまで様々な商品が販売されています。
 飲んで皮膚の弾力が改善されるのでしょうか?最近の研究で、低分子化したゼラチン(コラーゲンペプチド)には、消化管に入ったときに皮膚の繊維芽細胞等、体が製造しているコラーゲンの生産を促進するシグナルとして作用していることが解ってきました。
 コラーゲンを飲んで若さを保つエビデンスが明らかになりつつあります。但し、生活習慣を正さない限りどんな良いサプリメントを利用しても期待には添えないとお考え下さい。
 
(5)
no142掲載
前立腺肥大とサプリメント  
   前立腺は男性に特有の器官です。加齢に伴い誰もが経験する頻尿、残尿感等があります。
 夜中にどうしてもおしっこが出たくて目が覚めてしまう経験はありませんか。しかし毎晩となると睡眠不足になることもありますので一度は専門医の診断を受けてください。前立腺の肥大の程度や、前立腺がんの心配がないかを診ていただくことが先決です。
 軽度の前立腺肥大でたいしたことがないということなら、欧米では医薬品として認可されているサプリメント原料の「ノコギリヤシ」が頻尿の改善に効果がみられています。
 精巣でつくられるテストステロン(TS)という男性ホルモンが前立腺内に取り込まれて強いホルモン作用をするジヒドロテストステロン(DHT)に転換され、前立腺細胞を活性化しています。ノコギリヤシ抽出エキスには、TSからDHTに転換するための画素の働きを抑える作用があり、そのためDHTが作りにくくなるので前立腺肥大を抑制するわけです。
 ですが、生活の質の向上に役立つものの、治療するような薬効はなく、だれにも有効というわけではありません。
 しかし、頻尿でお悩みの方は、試してみる価値のあるサプリメントです。
 その場合、信頼されるメーカーか品質や原料・製品規格の第三者認証を得ているものを選びましょう。

 
(4)
no141掲載
 
 

 サプリメントを利用する目的は様々ですが、病気を治すために利用していると言う方が結構います。サプリメントは薬ではなく栄養補助食品、健康補助食品。病者用食品ではないので医師の適切な治療を阻害することもあります。健康な方が健康年齢を長く保持するための補助にとか、半健康状態の方のQOLの改善の補助に使用するものです。このことを前提に具体的な解説をしていきます。
高齢化社会にあって一番気になるのは、ボケ防止、寝たきりにはなりたくないと言うことでしょう。ボケ防止と称して沢山のサプリメントが販売されています。病的なボケ(認知症)には大別してアルツハイマー型6〜70%、脳血管障害型が2〜30%があります。アルツハイマー型の認知症を治す薬はありませんが、進行を遅らせる薬は開発されています。

脳血管型認知症の場合は、生活習慣病の予防で脳梗塞等を予防すれば発症を抑制でき、サプリメントも有用でしょう。では、予防的に有用なサプリメントはあるのでしょうか。欧米で医薬品であったイチョウ葉エキスが有名ですが、これとて万人に有効なものではなく、個人的には有効という事例は多く見られます。
脳サプリ等と言う素材としては、イチョウ葉、DHA、テアニン(アミノ酸の一種)、フェルラ酸、GABA(ギャバ)、リン脂質、CoQ10、ビタミンE・C、アスタキサンチン等の抗酸化成分、ビタミンB群等が有用ではないかと言われています。しかし商品化されたものについては、量と質の面で様々で、有用とは言えないものもありますので注意が必要です。


 
(3)
no140掲載
 
   サプリメントの日本語訳は、健康補助食品あるいは栄養補助食品と専門家の間では訳されていますが、一般的には、健康食品と考えています。厚生労働省も「いわゆる健康食品」と表現し、定義が明確ではなく法律もありません。
 米国、EUでは法律もあり、定義も明確です。米国ではダイエタリーサプリメント(DietarySupplement)といい、1994年にDietary Supplement and Health and Education Act(DSHEA、ドシェ法)が制定され、食生活の補助を目的としてビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハープ類が対象です。
 EUではフードサプリメント(FoodSupplement)といい、2005年に指令。施行では通常の食事を補助する目的で、栄養学・栄養生理学的に有効な一つ以上の食品成分を渡縮した錠剤、カプセル、粉末、アンプル等の形で少量摂取できるものとしています。ビタミン、ミネラルが主体で、2007年からアミノ酸、ハーブ類、脂肪酸、食物繊維についても認められています。
 いずれも、食物形態ではなく、錠剤やカプセル状のもので栄養成分を補給するものをサプリメントといいます。
 日本は、非常に複雑で、国が認めた健康補助食品としては、特定保健用食品と栄養機能食品からなる保健機能食品があり、その他は一般食品として定義されています。皆さんが日々摂取しているグルコサミンとかコラーゲン等サプリメント(健康食品)は定義上では曖昧なのです。実際には沢山の商品が販売されていますがなんだか変ですね。

 
(2)
no139掲載
 
 
 健康志向の強いアメリカでは、オプティマム・ヘルス(Optimum Health)という健康観が広まっています。日本語にすると「最適な健康」と訳されます。
 即ちベストな状態で健康を維持することと言う意味です。つまり健康であるということは単に病気ではないという状態ではなく、積極的にライフスタイルを見直し、自分にとってベストな体調・状態を継続していることを指すのです。
 予防医学の進歩に伴って考え方も変わってきました。オプティマム・ヘルスの実現には、適切な食生活と運動習慣と言ったライフスタイルの改善が基本となります。またサプリメント等健康補助食品を上手に使うことも賢い手段と言えます。
 特に欧米では、日本のような健康保険制度が少なく、医療費が高額になるために健康志向が強いこともオプティマム・ヘルスの考えが浸透しているのでしょう。そのために街中に沢山のビタミンショップ等のサプリメント店があります。そこで自分に合ったサプリメントを購入して常用しています。サプリメントも様々です。医薬品に近い効能効果をもつものから単なる健康イメージだけのものまであります。自分に合ったものを探すということは容易なことではありません。ましてや病気で医師の診断と薬の処方を受けている方が、サプリメントを探すのは基本的に間違いです。先ずは医師の治療に基づいて疾病を治すことに専念しなければいけません。サプリメントは健康補助食品であり医薬品ではありませんので誤解しないでいただきたいのです。

 
(1)
no138掲載
 
     
  「鎌倉生活」をご愛読の皆様心身共に健康で充実した生活を送られておられるものとお喜び申し上げます。
 本紙創刊当時からシリーズで「Dr.関本の食べ方学」として約15回連載いたしました。現在は、話題のトクホ食品を含めた健康補助食品全般のアドバイザリースタッフである日本食品保健指導士会会長の職にあります。
 このたび編集者から健康食品について情報提供のチャンスをいただきました。健康食晶について一緒に考えていきたいという思いでスタートする新たなシリーズ。内容へのご批判など忌憚のないご意見をお寄せください。勉強になります。
 巷には沢山の健康食品と称するものが販売されております。新聞紙上でもテレビでも広告宣伝の大半はいわゆる健康食品です。
 健康食品とはなんでしょうか? 不健康食品はあるのでしょうか? 口から入るものは原則「食品と医薬品」しかありません。食品には全て何らかの機能性があることは昔から知られています。しかしながら近年、いわゆる健康食品に錠剤、カプセル等の形状が許されたために、形の上で医薬品と見た目が変わらないものが販売されています。有効成分と称するものが濃縮されて含有しています。
 世の中に安全な食べ物はない。安全な食べ方があるだけなのです。賢い生活者であることを期待しています。続きは次号で。
 
 
 
 
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