NO152 掲載 鎌倉生活ー街のお医者さん
     
 

 人生90年どころか今や100年時代。しかし、避けて通れなくなったのが介護の問題。厚労省の平成19年「国民生活基礎調査」によると、要介護原因の第1位が、関節疾患・骨折・脊髄損傷と整形外科の病気で、4人に1人の割合。高齢者中心社会のキーワード、健康長寿を左右する骨粗しょう症治療の最前線について三松興道先生に取材しました。

何もしなくても骨折の可能性が
ある骨粗しょう症

Q  骨粗しょう症は、とくに65歳以上の女性の履患率が50%と非常に高いのですが、どんな病気ですか。
  骨の密度が下がって、骨が粗く(孔があいている)、少なく(軽い)、もろくて骨がスカスカになっていること。
 骨粗しょう症と診断されたら、転んで骨折するのではなく、何もしなくても骨折の可能性があると宣言されたようなもの。骨粗しょう症で最も多い骨折は背骨の骨折で、無自覚のままいつの間にか骨折していて背中が丸くなっていることもあります。

Q  骨折していても痛くなく進行するとしたら検査が大事ですね。
  そうです。検査法はいろいろありますが、当院ではDXA(デキサ)法を導入しています。一番折れては困る腰椎で測りますが、誤差は1%程度と精度は高いのです。
 診断の基準は、骨が一番充実している20〜44歳の平均値より骨密度が3割減ったら骨粗しょう症と診断します。

 治療は骨が壊されるのを抑える薬が中心

Q  なぜ、歳をとると骨密度が減るのでしようか。
  骨も生きていて、骨の細胞を造る骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞がバランスをとって、古くなった骨を壊しては新しく造りかえて(代謝)います。ところが、老化で破骨細胞の活動性は変わらないのに骨芽細胞の活動性が低下して追いついていかない。あるいは閉経後破骨細胞の活動性が元進し、骨代謝回転が高くなる。当院の患者さんのデータでも、この骨代謝回転の速い人の骨折が多いですね。
 一般的には、骨代謝回転が高回転に傾いて骨密度が急速に落ちるのが女性ホルモンが出なくなる閉経から5〜7年の間の骨密度低下幅は最大20%にもなり、59歳ぐらいがピークです。

Q  骨密度の落ちこみを止めるには。
  薬物療法です。薬は骨密度だけでなく、血液や尿検査で代謝状態を調べる骨代謝マーカー検査をしてその患者さんに合った治療薬を選び、その効果を判定したりもします。現在は、骨が壊されるのを抑える薬が中心で、骨折が1/3以下になるという強力な効き目があります。骨密度は年に1〜2%ずつ減っていくので、これまではそれを抑えるために薬を一生飲み続けないといけない。止めるとすぐに元に戻る、あるいは服用前より悪くなったりする場合もあったのです。ところが最近のお薬は途中でやめてもしばらくは効く。
 しかも5年以上服用すると、骨量で10%位の差が出て、骨折率は半分以下と低くなります。

 骨の強さはコラーゲンの質がカギ

Q  最近、骨密度は問題ないのに骨折することが話題になっているそうですが。
  整形外科領域でのトピックスですね。
 これまでは骨粗しょう症というと骨密度オンリーで、骨密度を上げることが骨折予防につながるとされてきました。
 しかし、骨の強度のうち骨密度が関係するのは70%で残り30%は骨の材質の良し悪しが関わっていることがわかってきました。骨には、カルシウムが大切ということはご存知かもしれませんが、実はコラーゲンも大切な要素であることはあまり知られていません。カルシウムが骨を硬くし、コラーゲンがしなやかな骨を作る役割をしています。骨はコラーゲンが網目のように張りめぐらされていて、そこにカルシウムなどのミネラルが沈着してできています。鉄筋コンクリートの鉄筋がコラーゲン、コンクリートがカルシウムと考えると分かりやすいのでは。
 骨折しにくい強い骨とは、コラーゲン分子をつなぎ止めているコラーゲン架橋が規則正しく連結してしなやかなコラーゲン線維を形成し、古くなったコラーゲンは速やかに分解され、新しいコラーゲンに置き換わっていることをいいます。
 ところが、無秩序にコラーゲン分子をつなぎ止めてがんじがらめにし、コラーゲンからしなやかさを失わせて、骨を過剰に硬く、もろくする悪玉架橋が問題です。ですから、コラーゲンを上手に摂ることが大事です。

 生活習慣病も骨折リスクを増加

Q  悪玉架橋は老化現象で増えるのですか。
 老化現象の場合もありますが、骨粗しょう症の方の血液や尿には、アミノ酸の一種であるホモシスティンやベントシジンの値が高いのです。ホモシスティンは、2型糖尿病や動脈硬化を引き起こす酸化の原因の一つで、ベントシジンは悪玉架橋の原因物質です。

Q  つまり、生活習慣病の患者さんは骨折も起こしやすいということですか。
  そういうことですね。骨粗しょう症と生活習慣病との関わりは、今の最新のテーマとなっています。
 
 
 
     
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