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NO118
2008/4/10掲載
 
 よく効く、カゼの漢方薬 
 
  山澤養志子 先生

大額田記念病院 
内科医師
鎌倉市大町4丁目6ー6
TEL:0467−25−1231
▼漢方は自然と人間の関わり合いを重視する医学です
 

 
   最近はカゼに漢方が良く効くということで漢方薬を希望する人が増えているそうですね
A  はい。漢方薬はいくつもの成分が相互に作用し、多彩な症状にマイルドに効くからでしょうね。
  一口にカゼといっても時間の経過と共に症状が刻々と変化します。また、体力のある人からヤセ型の
高齢者のカゼまでいろいろです。
漢方薬は、人それぞれに合った処方が出来ます。
吸収を良くする漢方薬の飲み方
●食前または食間で、胃の中が空っぽな状態の時に飲む。
●胃酸を薄めるために、飲み水は多めに飲む。
●冷水より、ぬるま湯や重湯などを薄めた物に溶かして飲むとよい。
  一般に西洋医学では、カゼ症候群には総合感冒薬や非ステロイド系抗炎症薬、消炎酵素剤、去痰剤、鎮咳剤などの対症療法が主体で、2次感染を合併していれば抗菌薬を併用します。そこで、少し西洋医学と東洋医学の違いについてお話いたしましょう。西洋医学と漢方医学では生体を捉えるものさしが異なります。
  西洋医学は細胞、組織、臓器単位で検査を行い、異常があれば病名を決定し、これに基づいて治療を行います。一方、漢方医学ではまず「証」を診断します。証とは病名のことではなく、身体の状態のことを指す。独特の概念で、“陰陽”の二元論、“虚実”、“表裏”、“寒熱”に分けて考えます。疾患のステージは刻々と変化し、病気を六病位で分類します。
  また、西洋医学でいう臓器とは異なる概念で、物質代謝や精神活動と関連した五臓六腑を機能単位とします。この不調和は「気血水」の異常となります。これらの要素が滞りなく、循環してバランスをとるように停滞や不足を補う処方をします。ですから、同じ病気でも患者さんにより処方が異なります。また、証が同じなら異なる疾患にも同じ薬を処方します。

 ではカゼの場合は。
A カゼは@急性期、A亜急性期、  B回復期と、その刻々と変化するステージに合わせて処方が違います。
  頭痛や発熱を伴う、ひき始めのゾクゾクした@の急性期のカゼでは、発汗させるために葛根湯、のどの痛みが強ければ麻黄附子細辛湯などを処方します。しっとりと汗をかいている場合は桂枝湯です。
Aの亜急性期になると、熱が残るので、口が渇いたり、せきやたん、食欲不振などの症状が出てくるので今度は小柴胡湯や柴胡桂枝湯、小青竜湯などを使います。
  小柴胡湯は何となく胸のあたりがさっぱりしない時に良いのですが、副作用の問題もありますので注意が必要です。くしゃみや鼻汁が強い時に小青竜湯を使います。
  Bの回復期には、消耗した体力を回復させるために補剤を用いたりします。せきが長引き、カゼがこじれた場合には、麦門冬湯や参蘇飲、竹茹温胆湯などを用いることもあります。特に麦門冬湯は粘膜を潤す作用があるのでたんの少ない乾いた咳こみに用い、たんが多く粘っこい湿性の激しいせきには清肺湯や柴朴湯を用います。誤嚥性肺炎には半夏厚朴湯も良いと思います。その他にもいろいろな薬があります。

 先ほどの補剤というのは?
A 体の働きを補う薬のことです。
   1ヶ月以上カゼが治らないとか、よくカゼを引きやすい時など、特に高齢者の方は免疫力の低下が考えられますので、補剤である補中益気湯や十全大補湯で食欲を増進させ、体力を回復させて身体の抵抗力を高めるようにしますね。特に気力の回復には人参養栄湯も良いです。

 他にもありますか?
A 胃腸が弱く小声でボソボソ話す方のカゼには香蘇散も良いと思います。これはシソや香附子、ミカンの皮など香りの良いものが含まれ、気の巡りを良くし、精神的にも元気になります。これらは皆一人ひとりの証に合わせて処方します。
 漢方薬の副作用はありますか。
A 体質や症状に合わない処方を使用したり、大量に服用すると好ましくない作用が出ることがあります。 自分の症状には漢方薬が適しているのでは?と思ったら、まず主治医に相談しましょう。一例としてカゼをとりあげました。漢方医学は自然と人間の関わり合いを重視する医学です。西洋医学と東洋医学の融合がこれからの研究課題です

 
     
 
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