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NO126
2009/2/10掲載
 栄養状態が悪いと
いい技術、いい薬をほどこしても
治療効果は上がらない 

▼床ずれや感染症を予防する 
 栄養管理 
 
小島淳一先生 

佐藤病院
外科医師
鎌倉市御成町9−5
TEL0467−23−1111
   

 
   メタボが問題になって、世の中過栄養の時代″と思っていたら、高齢の入院患者さんの4割は低栄養状態とのことで驚きました。
A  そうです。栄養評価に使われる血液中アルブミン値やBMI(体格指数)が基準値以下の方が多く、外来の患者さんも高齢者の約10%は低栄養状態です。
 
 入院の患者さんとの差はどこにあるのでしょう?
 入院患者さんは点滴などで栄養不足が改善されないのですか?

A 一般的に点滴と言って行なっているのは、前腕の静脈に針を刺して行なう末梢静脈輸液ですが、ほとんどが、脱水状態の改善やミネラルなどの補給が目的です。栄養を目的とした場合でも500mlで200カロリー位までしか栄養補給はできませんので、食事が全く摂れない患者さんには、腕からの点滴では十分な栄養補給はできないのです。
  また入院している患者さんは病気で食欲も低下しており、定期的に栄養評価をしないと入院しているのにどんどん栄養状態が低下している″ことになってしまうのです。
  お年寄りが肺炎などで入院されて、適切な抗生剤で治療を受け退院されても、栄養状態が悪いとまたすぐに入院される。栄養状態によって再入院率は随分違います。いい技術や、いい薬を使って治療しても、栄養状態が悪ければいい結果は得られません。すべての治療の基盤に栄養管理があると思っています。

 入院時、看護師さんが残菜などで喫食状態を調べるのはそのためなのですね。
A はい。しかし、きちんとした栄養管理をするためには、医師、看護師、栄養士、薬剤師や、リハビリスタッフ、臨床検査技師など多職種で構成された栄養サポートチーム(NST)医療が必要です。
  そうしたNSTに取り組む病院が全国的な広がりをみせており、成果をあげています。私は昨年4月に当院へ赴任しましたが、今まで5年間のNST活動を通じてその効果を実感していますので是非、この地域に広めたいと思っています。

 市内の入院患者さんはかなり高齢者が多く、独居のお年寄りも多いのでそうした栄養管理まで指導する行き届いた医療へのニーズは高いですね。具体的にはどんな事をするのですか
A まずは、簡単に栄養状態を調べる事ができる方法(身体測定や問診)で栄養状態が悪そうな人を見つけ出し(スクリーニング)ます。
  スクリーニングに引っかかった人に対して、血液検査などのデータをもとに栄養評価を行います。栄養状態を把握したら、その状態にあった栄養プランを立てます。
  その時に大切なのは第1に、口から食べることができるようになる事″を最終の目的とすることです。食事の時などに誤って気管に入り、肺炎を起こしてしまうような人に対しても、食べたり飲んだりする能力を見る検査(嚥下(えんげ)機能検査)を行い、評価をした上でリハビリを行う事によって正常の機能になる人は大勢います。
  第2は、胃腸の機能が正常であれば使ってあげる事です。高カロリーの輸液を行う方法がありますが、栄養補給としては生理的でないために長期間になると合併症が多く、特に細菌感染が起こると致命的になります。そのため食べる事のできない人に対しての栄養補給の方法は胃ろう(本紙NO.114参照)など、消化管を使った経腸栄養法を原則としています。免疫力を高めるためにも経腸栄養は有効です。
  さらに、栄養補給法が決まって実行した後、そのままにしておくのではなく定期的に栄養評価をし直します。とにかく栄養状態が悪いまま退院させないように気をつけて、外来でもフォローしていくということの繰り返しです。

 栄養管理が行き届くとどんな変化がありますか。
A 私が実際に経験したのは、療養型病棟に入院中の褥瘡(じゅくそう=床ずれ)が激減した事、入院中に感染症になる院内感染が減少した事、入院死亡率が減少した事があげられます。褥瘡はできてしまうと、治療する手間と費用は大きいですからね。全国的には、高カロリー輸液に伴う合併症の減少、在院日数の短縮、抗生剤などの医療費の減少が認められています。
  適切な栄養補給法で栄養状態を高める事によるメリットは計り知れないものがありますので、栄養管理の重要性をぜひ認識してもらいたいですね。


 
     
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