NO114
2007/11/10掲載
 胃に直接管で栄養を補給する
 胃ろうは第2の口 

  比較的長期間、口から食べられない人の栄養補給
  Dr.ueno 上野文昭 先生

大船中央病院
理事長・内科医師
鎌倉市大船6−2−24
0467−45−2111
介護の負担も軽減
 

 
 

 胃ろうって何ですか。
 瘻孔という医学用語があります。瘻孔とは体にできる穴のことで胃ろうとは、おなかの外から胃に通じる穴のことで、それを造ることを胃ろう造設術といいます。 胃ろうは、比較的長期間口から食べられない人の栄養の補給に役立ちます。

 というとお年寄りや寝たきり状態の人が対象ですか。
 老衰の他に脳卒中のマヒなど神経筋疾患で飲み込みがうまくできない、認知症などで食べる意欲がない、食べるとムセたり、肺炎を繰返す、がんの治療中で食べ物が通過できないなど口から物を食べられない人が大勢います。今、年間18万人くらい胃ろう造設術が行われていると推測され、一番多いのは70代以降の高齢者ですね。

 点滴や鼻から管を入れる栄養療養法との違いは。
 まず点滴ですが、ちゃんと働いている胃や腸を使わずに静脈に直接注射するのは若干誤った医療ですね。
  それに長期間になると十分な栄養が摂れません。
  鼻から喉を通って胃までチューブを入れるのは、潰瘍や食道炎をおこしたり、胃の中の物が逆流したりと管理が厄介です。
  それに加えて、これらの方法による栄養管理は家庭で行うのは困難ですから、長々と入院しなければならない。ですからひと昔前は何年も入院しているなどはあまり珍しくなかったのですね。
  海外では全くそういうことはありませんでした。

PEG(ペグ)とは
  アメリカをはじめとした海外では、口から食べられない人には外科的に開腹手術を行う。胃ろう造設術が一般的に普及していた。
  ところが、おなかと胃の間はわずか数センチの距離なため、内視鏡を入れて中からと外から操作し合って体の表面と胃を細い柔軟性のある管でつなぐ内視鏡的胃ろう造設術。P(皮膚を通して)、E(内視鏡を使った)、G(胃ろうを造る手術)の略称で呼ばれ、より簡単で安全、患者の負担も少ないため大ヒット。現在の胃ろうは殆どPEGで行われるようになった。

 人口の高齢化で、胃ろうへのニーズが高まったわけですか。
 いや、長期間入院しないで、療養病棟や養護施設と段階的に移って在宅へという医療制度の変更と、正しい医療を行わなければならないという意識の向上が大きいでしょうね。
  PEGという新しい内視鏡治療技術が考案されたのは、1980年頃ですが、日本では1983年に私が手がけたのが最初です。
  胃ろうの患者さんは、点滴のように栄養剤の袋から長い管をつないでおなかの穴から胃に流し込むので、確実に栄養補給ができます。
  ふだんはフタをしてガーゼでも当てておき、1日数回、栄養剤、お湯、薬などを胃ろうから入れるだけで、日常生活への制限は殆どありません。お風呂にも入れますよ。

 管理が簡単だと、介護も楽ですね。でも、胃ろうの合併症 はないのですか。
 胃ろうは内視鏡を使った手術です。高齢者は心臓の病気を持っていたり、感染症が有ったり、元々状態があまりよくないわけですから、合併症は決して少なくありません。しかし、合併症が怖いからと食事ができない患者さんを放っておくことはできませんから。総合的に判断して、胃ろうを入れるのが一番適切な場合が多いですね。
  胃ろうを入れたあとは、トラブルを起こさないためにも、最初の2週間程度は、胃ろうをよく知っている病院とか、医師がキチンと管理しなければなりません。
  胃ろうというのは、造っただけでは何の意味もなく、“おなかから直接ご飯を食べる”わけですから、栄養剤・とろみ調整食品の使い方などをその間に患者さんやご家族がマスターします。

 胃ろうは一度造ったら一生そのまま続けるのですか。
 口から十分に食事が摂れるようになって体力も回復したら胃ろうの管を抜くことができます。5〜6_の傷ですから、抜いた後の穴は1日程度で塞がります。
  また、PEGで栄養のベースができていれば、好きな物を口から食べることもできます。

 
     
 
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