NO110
2007/6/10掲載
  加齢とともに肥大する前立腺 
 50代の50〜60%が排尿障害 

  手術の出血は、自己血輸血で副作用を予防
  中野 勝 先生

大船中央病院
泌尿器科部長
鎌倉市大船6-2-24
TEL:0467-45-2111
眼精疲労対策としては、やはり生活改善
 

 
 

 この4月から大船中央病院は泌尿器科を医師3人体制で充実を図りましたが、やはり患者さんの最も多いのが前立腺肥大症ですか。
 そうです。前立腺は男性にだけあるクルミ大の器官で、膀胱の底部に接して後部尿道の部分にちょうど襟巻きで首を巻くように前立腺が取り囲んでいるのです。
  精子は、前立腺が分泌する精液で運動する栄養を与えられ、卵子に到達できるわけですから、子孫をつくる必要がなくなる年代になると前立腺が大きくなってきます。

 不要になって萎縮するのではなく、大きくなるのですか。
 前立腺は男性ホルモン(テストステロン)優位の器官ですから、加齢を共に下がる血中のテストステロンを取り込もうと上皮細胞を増殖させ腺腫をつくるのです。50代の50〜60%は、肥大化するといわれています。

 とりわけ肥大症を進行しやすい条件はありますか。
 一つは、食事の欧米化で肉類やチーズなどの動物性タンパクや脂肪の摂取が多く、魚介類や野菜、漬物をあまり食べない人。
  若い頃から性活動が旺盛で60代になっても旺盛な性活動の人もいわれていますが、その真偽のほどはわかりません。(笑)

 年をとるにつれて大きくなるとしたら、治療の対象になるには。
 肥大した前立腺が尿道を圧迫して陰部の不快感や頻尿(特に夜間頻尿)、排尿まで時間がかかる、いきまないと尿がでにくいなど、QOL(生活の質)が下がってきて「病院で診てもらおう」となるようです。
  ただ、前立腺がそう大きくなくとも、このような排尿障害を訴える人は多いですよ。
  もちろん、肥大だけでなく、膀胱に石がある場合や、前立腺ガンも同じ症状ですから調べないといけません。

 どのような検査をおこなうのですか?
 まず直腸診を行い、前立腺の大きさや形、固さを診てガンとの識別、さらに超音波、尿の流れや残尿を調べます。

 治療は、手術ですか。
肥大症は良性の疾患ですから、尿が出なくなるなどの重症でなければ必ずしも手術する必要はなく、元の大きさに戻せばいいのです。薬物療法と手術をどうやって分けるかというと、手術は@前立腺の大きさにかかわらず、患者さんが薬を飲んだりするのはイヤだという場合。Aは、正常の場合は10ccですが、残尿が50cc以
上あると腎臓を悪くするなど合併症を起こしやすい場合、またいつも残尿があり尿も汚れている。B は、前述の尿閉の場合です。
  手術といっても、昔のように開腹して前立腺を抜き取る手術ではなく、経尿道的前立腺切除術(TUR)で、内視鏡を入れてとび出ているところの前立腺を電気メスで削り取るものです。TURのメリットは、出血が多いときや血圧が下がるなど具合が悪くなったら一時止めて、再度行うことができること。癒着などの後遺症の心配もありません。

 年だから手術が不安ということは・・・。
 今は、麻酔が非常に良くなってきました。それに前立腺の大きさから出血量を予想して、前もって本人の血液を採っておいて手術を行う自己血輸血を行い、予期しない副作用を予防します。今は元気なお年寄りの患者さんが多いのですが、それでも低侵襲にこしたことはありません。
  手術には、いろいろな方法がありますから、私は手術を受けようという患者さんには、当院だけでなく別の先生の意見も聞きたい場合、どこでも紹介しますと患者さんに言っています。どんな手術を選ぶかは患者さんが納得されて決めることがいいのですからね。

 
     
 
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