Q 数ヶ月も咳に苦しんで、2、3カ所の医療機関でそれぞれ診察・検査を受けたのですが、実は蓄膿症であったとのことで、そちらの治療をしたら咳がとまったという話を聞きました。
医者を選ぶのも養生のうち″という言葉がありますが、失敗しないお医者さんの選び方とは?
A 患者さんは、病名を持って・来てくれるわけではありませんからね。医者の間では、「後医は名医」という言葉があります。時間が経過して、複数の症状がそろってはじめて診断できる場合も多いのです。後になればなるほど病状(情報)がハッキリしてきますから後医は有利なのは当然です。3週間以上続く咳の症状でも、気管支炎、副鼻腔炎、胃酸の逆流が原因の咳、ぜんそく、心不全といろいろな病気が考えられ、単純なものではありませんから、周辺の複数の病気の知識を持っていないと診断が滞ることはありえます。
Q ということは症状をできるだけ説明した方がいい?
A それはそうですが、ありがちなのは、頭が痛い、咳も出て、3年前から腰も痛いなどと、病院に来たのだからこの際ありったけすべて治療してもらおうと10余りの症状を訴える方がいます。何が問題なのかがかえってぼやけてしまうので、あまり賢いやり方とは言えません。今一番困っている症状(主訴)がいつから、どのように始まって、どんな経過をとったかを時間を追ってメモしておくのがよい方法です。その時に自分は○○だと思うからこの検査をして欲しいなどと決めつけるのは百害あって一利なし″です。
それと、市販薬も含めて普段どんな薬を飲んでいるかも伝えるようにするといいでしょう。
患者さんからお話を聴くことを「病歴をとる」というのですが、主訴をもとに「咳で夜間目が覚めることがありますか」等と診断に重要な情報を引き出す「病歴聴取」というのは診療技術でも経験の差が大きく出るところなんです。
Q パズルを解くかのように検査結果を並べて患者さんの顔もみないお医者さんもいるそうですが。
A 適切な病歴と身体診察を行えば、体の中で起こっていることの7割ぐらいは見当がつくといわれています。私達はただやみくもに検査をするのではなく、病歴から考えて必要と思われる検査を行うように心がけています。逆に患者さんの方から○○の検査をしてくれないのかと要求されて困ることもあります。検査が多くなるのは患者がそれを望むからという側面がない訳ではないと思います。私ども総合内科はフレッシュマンの研修医の教育も大切な役割です。また、ドクター対象の公開の勉強会も昨年は4回開催し、近隣の先生だけでなく遠く他県からも参加いただきました。
Q 総合内科と一般的な内科とのちがいは?
A もともと内科は、小児科を除く大人の体全体を診る科です。まさに開業医の先生はその役割を果たしていますね。
近年、大学や規模の大きな病院に多く開設されるようになったのが総合内科、あるいは総合診療科です。例えば、紹介状のない患者さんが「胸が痛い」と来院したときに、循環器科、呼吸器科と院内をたらい回しされたり、それぞれ違った薬を処方をされたりという過度の細分化の弊害に対する反省から、ここ10年ほど前から設置されることが多くなりました。
臓器別ではなく、患者さん全体を僻撤して診ることに重点をおいているのが特徴です。
Q 患者としては、大病院は専門性も高く、検査設備も整っていて安心と思いますが。
A いくら設備が立派でもそれを使いこなすのは、1人1人の医者です。私自身は適切な病歴と診察をもとに少ない検査を活用して診療できるのが医者の力の見せ所だと考えています。
建物が大きい病院だから安心というわけではありません。
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