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鎌倉生活最新号
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NO122
2008/9/10掲載
乳がんは、手術第一から
再発を防ぐ全身療法の時代へ
土井 卓子 先生
(どいたかこ)
湘南記念病院
かまくら乳がん甲状腺
センター長
鎌倉市笛田2−2−60
TEL0467-32−3456
▼治療法が多く、迷う患者さんの 医療満足度を上げるには
Q
今、女性のがんは乳がんが子宮がんを抜いたとか。
A
はい。女性ホルモンの分泌が増えると乳がんも増えるので若い人がかかりやすく、30歳から6歳では女性のがんのトップとなっています。年間4万人がかかりますから別人に1人の女性が生涯で経験するということですね。
Q
そんなに多いのですか。人ごとではないですね。
乳がんというと以前は、命には代えられない″と乳房とリンパ節を取って再発を防いだそうですが、今は乳房を温存した手術が主流のようですね。
A
乳がんはしこりが壊れるくらい大きくなっても命に関わるという危険はありません。乳がんで命を落とすケースは、そのがん細胞が骨や他の臓器、肺、肝臓などに転移するからです。
そこで、乳がんの治療法もものすごく変わりました。昔はおっぱいを取り、その下の筋肉から肋軟骨も3本切っての郭清(かくせい)が標準治療でした。ところが今は、筋肉を残す、おっぱいを残す、おっぱいの周囲の腋窩(えきか)リンパ節を残す、さらにはがんそのものも取らないというように治療の方法はどんどん変わっています。
命を守るためには、リンパ管や血管を通って流れたがん細胞が他の臓器に転移しないような治療が必要ですが、それは手術ということではありません。抗がん剤、ホルモン剤、放射線療法などその人に合った治療法を上手に行い、がんの増殖因子を抑え込むことが命を救うことになるのです。
Q
病気によって患者の医療満足度に大きな開きがあるという調査が2年前に行われ、乳がんは「最先端の医療技術が提供されていない」という不満が出ていました。その背景に、そうした治療法がいろいろあるということも関係しているのでしょうか。
A
そうです。胃がんや大腸がんの治療は標準的なガイドラインで、患者さんが選択する必要が少ない。ところが、乳がんは非常に幅広い選択肢があります。
治療内容もすごくバラツキがあるんですよ。そこで、この治療法で良かったのかしらといった疑問も出てくるのですが、それは、手術のうまい、へたではなく、手術の仕方も含めて医師のポリシーということだと思います。
Q
お医者さんは必要な説明を行ったと思っていても、患者さんはもっと説明してほしいというギャツプをどううめていく…。
A
手術の方法も含めて外来で患者さんに納得するまで医師が説明するには限界があります。また、退院後の再発、転移などの不安は、医師よりも体験者の方が話しやすいことから、当院のセンターには体験者も含めての相談コーナーを設ける予定です。
そこでは、例えば抗がん剤で安全が何%高まるかといった医療情報なども、患者さんが混乱しないように医学知識のあるコーデネーターがアドバイスします。そのようなサポートがあれば、患者さんは乳がんとのつきあい方も納得できて、治療法も選べるようになると思うのですよ。
Q
乳房温存療法でも、最大限乳房を傷つけず、転移の見落としも少ない方法があるとか。
A
センチネル(見張り)リンバ節生検といって、がんが発生した場所からがん細胞がまず最初に流れ込むリンパ節だけを調べる方法です。そこに転移がなければ95%の確立で腋の下にも転移はないとしてそれ以上傷つけずに済むことがわかりました。
生命予後に関係しないのであれば、できるだけ傷つけず、術後のむくみや外見上も違和感が少ないから、患者さんのQOLを高めることになりますが、まだ標準療法として保険適用となっていません。
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