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シンガーソング絵本ライター 中川ひろたかさん |
― 経歴をみると、大学を中退して保育士になっていますね。
中川 興味があったんです。子供って、マンホールの穴を見つけると石を入れたり、電車が通り過ぎるとバイバイと手を振る。これって
おかしいじゃないですか。でも、僕だって子供の頃はしていたと思うんです。人間の本質がそこにあるのではないか。それが、大人になるに従い、常識とか体裁を身につけて、そんなことはしなくなる。でも、僕はその人間の本質的なところを見たい、教わりたいなと思ったのですね。母は、大学3年で中退して保育園からやり直しね、と言っていましたけどね。(笑)
― その保育園時代に歌も始められた?
中川 曲は子供の頃から遊びで作ってはいたんです。曲を作る人は詩を書く人をいつもさがしているんですね。その保育園に童話を書いている上司がいましてね。童話が書けるんなら詩もかけるんじゃないですか、僕が曲をつくりますから一緒にやりましょうといったら、翌日、13もの詩を書いてきたんですよ。(笑)で、それに僕がバーっと曲をつけ、歌っていたんです。
遊び歌ですけど、それが結構受けましてね。全国からこの歌を教えてというオファーが来まして、それから次第にそちらへシフトしていったということです。
― やがてご自身も詩を書き始め、シンガーソングライターに。
中川 自分で作っても、誰も歌ってくれない。それなら自分で歌うしかないと、ライブハウスのオーディションを受け、歌ったんです。
他の連中が「青春は〜!」などと声を張り上げ歌っているのに、ぼくは奥さん(中川いつこさん)作詞の「おーいかばくん」など歌っているんですからね。そうしたら、偶然僕の隣に「ピンポンパン」のプロデューサーの知り合いがいて、面白いからと紹介してくれ、年間4曲の放送が決まったのです。ところが、その人が配転になって、結局2曲で終わりました。(笑)
― 「ないた」では、日本絵本大賞を受賞するなど、シンガーソングライターとしての活躍はもちろん、詩集や絵本も数多く出版されていますね。肩書きもシンガーソング絵本ライターに。
中川 絵は描けないので、絵本ライターと言っているんですが、歌も絵本もいい詩人や画家との出会いが大切なんです。僕は、これも作家の仕事の一つだと思っているんですよ。
― 中川さん作曲の「世界中のこどもたち」は、小学校の音楽教科書にも載っています。
中川 これも同じ保育園に勤めていた新沢としひこの作詞です。3年前、日本の103人の絵本作家がこの歌をテキストに平和の絵本を作ろうという話になったんですね。それが「世界のこどもたち103」という本なんです。日本のトップアーティスト103人が描いた本なんて初めてでしょう。うれしいですね。
― それはすごいですね。去年ですか?由比ヶ浜通りにお店を?
中川 ええ、「ソングブックカフェ」という絵本とコーヒーのお店です。せまい店ですが、みなさん落ち着くって言ってくださって。ケーキもおいしいですよ。
― ところで、鎌倉文学館企画展「中川ひろたかと『ともだち』展」も14日からスタートしますが、こどもたちに何を訴えていきたいですか。
中川 企画展では、絵本を一緒に作った絵かきさんたちとの「往復アンケート」。これは、お互いどう見ているかが知れて、面白いですよ。その他「ともだちおみくじ」や友達に手紙を書いてそれを壁に貼っていく“友達の木”などもあります。
1人ではできないけど、友達と一緒ならできることっていっぱいある。友達がいるから、楽しいことや面白いことがある。それを僕たちの作品や活動をみてもらうことによって感じとってもらえたらなと思いますね。