大町四つ角から逗子へ抜ける街道（県道）の脇に、祇園山を背景に持つ浄土宗安養院のツツジは、初夏の鎌倉の花めぐりの見事な風景である。
安養院のツツジは、現住職の祖父が植えられ約80年経っている。
ツツジは古くから園芸品種として交配され、美しい品種がたくさん生まれた。満開の時には桜の時季の終わった各所にあでやかで圧巻である。
西洋にもアジアから常緑のツツジが持ち込まれ園芸化され、アザレアと呼ばれる鉢花として生産されている。
県の花として指定されているのは、福岡や静岡。県内では川崎市、葉山町の花ともなっている。
ツツジは公園や道路傍などに植え込まれ、国内でもこの季節に多く見かけられる。また俳句では、春の季語であり、和歌にもたくさん詠まれている。

　大町四つ角から名越四つ角の間にある祇園山の下に、時宗の別願寺という小さな寺があり、桜花到来をしたためた持氏公の書状が残されている。

桜花度々到来、悦入候。恐々謹言
持氏
三月四日
別願寺聖

　室町時代の桜を扱った直筆の書状は他にない。
鎌倉公方四代持氏公(T398〜1439）に別願寺の住職がたびたび桜を届けた、その礼状である。
『吾妻鏡』には花見や桜の風景の描写は多くあり、また東国の文化の土産に桐ケ谷桜（材木座）を京都御所に届けた古事が伝えられている。
現在もささやかな境内には、春になると和やかな桜が往時のの名残のように咲く。（書状は鎌倉国宝館保管）