鎌倉生活 2014年 11月10日号 1ページ  
 

  2025年には団塊の世代が75歳以上に。3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、超高齢化時代がやってくる。そこで国が音頭をとって地域包括ケアシステムづくりが始まった。さて、全国に先駆けて高齢化社会を迎えたNPO鎌倉市の場合は。

   男女合わせた日本人の平均寿命は84歳で、世界一の長寿国。だが、喜んでばかりはいられない。というのも、後期高齢者とされる75歳以上の5割は何らかの疾患、障害を持っているとみられている。平均寿命と健康寿命の差も10年位あり、今後は、支援・介護のニーズはグンとアップする。しかも、8割の人が病院で亡くなるという時代だ。
 そこで政府は、病院中心の医療体制では急増する高齢者を受け入れられないと、住み慣れた地域や在宅で支える「時々入院、ほぼ在宅」の仕組み、つまり、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体となって提供される地域包括ケアシステムづくりをめざす。(タイトル図参照)

  ■医療の場合は
    「時々入院、はぼ在宅」へ

  その一つとして登場したのが、地域包括ケア病床。湘南記念病院ではいち早くこの10月から地域包括ケア病床(17床)を新設した。経営企画室長地域担当の渡辺司さんによると、「在宅療養への橋渡しをするのが地域包括ケア病床で、専従のリハビリスタッフを置き、寝たきりにならないようにリハビリをしてお帰りいただきます」。入院限度は60日。

  ■介護・予防の場合 
   課題は地域ケアづくり

  できれば在宅で治療したいと望む人は多い。しかし、在宅医療は2割程度といわれる。このギャップは、介護する家族の負担と、病状が急変した場合の不安があるから。
 では、この家族の負担と不安を軽減し、安心できるようにするためにはどうするか。「医療と介護の連携に加え、自治会・町内会、NPOなど、地域の活動団体が一体となって自宅で生活する高齢者を支えていこうというシステムをつくることです」と鎌倉市高齢者いきいき課の伊藤元敦課長。
 昨年から始めたのが“顔の見える関係づくり”。市内の入院設備のある病院のメディカルソーシャルワーカー、看護師、地域包括支援センターによる意見交換会を設け、行政の考え、活動内容を説明し、退院後の患者さんの支援について話し合いを重ねている。今年度は、新たに市医師会、歯科医師会、薬剤師会、訪問看護ステーション、かまくら地域介護支援機構や介護事業者が参加する会議を立ち上げ、今後安心して介護サービスを受けられる体制を構築していく方針だ。

  ■認知症
    住み慣れた環境で 暮らし続けるために

  高齢化によって、65歳以上の一人住まいや夫婦の世帯が増加するため、日常生活自立度U以上の認知症高齢者も増える。
 これまでの認知症対策は、行動や心理面で“危機”が発生してから、施設の利用や精神科病院などが対応する事後的なものだったが、これからは“危機”の発生を防ぐ「早期・事前的対応」とする。そのため、自治体または地域包括支援センターに認知症初期集中支援チーム(専門医、保健師、看護師、介護・社会・精神保健福祉士等)を設置し、認知症治療のポイントとされる早期の診断を行い、総合的に判断し、本人・家族のサポートを行い自立生活を支援していこうというもの。
 さらに、地域包括支援センター等に保健師や看護師などの認知症地域支援推進員も配置し、認知症の人が住み慣れた良い環境で暮らし続けられるように、情報提供・相談・指導・助言を行う。

 市民も積極的に参加を

 地域包括システムづくりはまだスタートしたばかり。それは、超高齢社会をいち早く迎える鎌倉の新しいまちづくりでもある。市民の積極的な参加が必要だ。


 
 
 
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