わが国唯一といわれる段葛が、約50年ぶりに大改修される。由比ガ浜まで一直線に延びる若宮大路の約半分に段葛があり、これほど親しまれる参道は他にないのでは。それだけに新装段葛が待ち遠しい。
政子の安産を祈り築く
鎌倉のメインストリート若宮大路は、鶴岡八幡宮から由比ガ浜にまっすぐ延びる八幡宮への参詣道。当時、この地帯は湿地。そこで、「左右の両線を葛石で固め、その内部に土盛りし周囲より一段高くした道」を築いた。これを段葛という。
「吾妻鏡」には、頼朝は妻の北条政子が懐妊し、安産を祈って築いたと記されている。当初は、全長300丈(900m)、由比ガ浜から八幡宮三ノ鳥居まで一直線に延びていたと想定される。ところが、明応3年の大地震と洪水で損壊し現在の下馬付近までとなり、明治21年の横須賀線の工事により若宮大路は分断され、二ノ鳥居から南の段葛は取り壊されてしまった。従って、いまある段葛は二ノ鳥居から北、八幡宮前一ノ鳥居までの465m。
鎌倉市民はもちろんだが、観光客はじめ鎌倉を訪れる人は、この段葛をさまざまな思いを抱いて通り、八幡宮に参詣する。とくに桜の季節ともなると、まるで桜花のトンネルをくぐるよう。夜は両側の提灯が灯り夜桜見物もまた楽しい。
この段葛大改修が始まる。これまでの大改修は昭和40年頃というから、ほぼ50年ぶり。人々の関心は高まるばかりだ。
左右の堤、道路は
ではどのような工事が行われるのか。
段葛は若宮大路中央を走る「道の上に道を置く」形式の古参道。そのため左右の堤は石積みとなっている。それをコンクリート擁壁の上に石積みする構造にし、積石の孕みや崩落を防ぐ。また、参道路盤は硬めの浸透性土系舗装とし、雨水の吸収と路面の荒れを抑制。参道路盤下には、貯留槽と基盤材を埋設して、桜の根の育成スペースを確保する、など。
今は、ところどころ凹凸があり、雨が降ると水たまりができたが、完成後は境内の馬場のような道となるようだ。
桜は統一、約180本に
関心の高いの桜並木はどうなるのか。
現在の段葛には桜、つつじなどが植わっているが、工事期間は移植することになる。248本ある桜は、移植後も育成が期待できるものは平家池周辺を中心に境内に移植、育成困難なものは除伐される。つつじ類は、桜との共存は難しいため段葛から除かれ、境内に移植や宮城・福島・岩手各県の交流ある東日本大震災被災地へ移植する。
つまり、改修後は、「今後の生育管理と景観形成を考慮して、樹種・樹齢・樹形を可能な限り統一した」新植の桜とし、樹幹を確保(ほぼ5m)するため左右千鳥配置の並木となり、これまでの3分2、180本程度になる。
工事着工は11月。12月頃から桜の移動が始まり、新植施工までの間(平成27年冬まで)は仮囲いとなる。竣工は平成28年3月の予定。平成大改修後の段葛はどのように新装なるか楽しみだ。
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