夜7時、会場の「メンタルホスピタルかまくら山」(岡田昇院長)には、「かまくら認知症ネットワーク」代表の稲田秀樹さん等5人のメンバーが次々集まる。病院側は、岡田さん始めスタッフ6人が参加。第1回目の意見交換会が始まった。
相談できる医師が身近にいないと
稲田さんが進行役となり、現場で直面した様々なケースが紹介される。
在宅介護支援のケアマネージャーからは、認知症の妻(91歳)を92歳の夫が介護しているが、その夫もケガで入院。残された妻も入院させるには費用がかさむので24時間対応の訪問看護となった。しかし、夜間せん妄の妻に看護師は薬の処方はできないため、24時間対応の内科医師に連絡をとり、やっと対応できたケースが報告された。
過剰な介護はADLを低下させる
認知症病棟の看護師からは、患者さんのADL(日常生活動作)を維持していきたいが、転倒防止等を防ぐために安全第一となると過剰介護になって逆にADL低下のジレンマがあるという。
ところが、独居の訪問介護の例では、ADLは比較的良好に保たれていることが多く、介助をどこまで行うか、介護サービスの質の見極め、認知症の人の価値観を尊重し、対応するにはなど、現場ならではの切実な問題が話し合われた。
家族の対応も問題が
アルツハイマー病は2人の患者をつくるという。1人は患者、もう一人は介護する家族。
24時間365日の介護により慢性の疲労や不安状態にある家族への対応はどうすれば、という問いかけには、「まず訴えをよく聞いて理解してあげることから」と往診担当の医師がアドバイス。
本人や家族がなかなか認知症と認めないで、一層症状を進行させてしまってからの入院が多いという報告も。
暴言や暴力、不眠や徘徊がさらに進行し、家族による介護が限界に達してから入院する前に受診をと病院担当者。
また、入院治療で急性期の症状が落ち着いて、ADLが比較的保たれても独居のため退院させることができない、あるいは家族が在宅介護を拒否するというケースも比較的多いという。
公的サービスは早目に 欠かせない地域の協力
5〜15年と認知症介護は長期にわたる。介護者が一人で背負い込むのではなく、ゆとりのある内にデイサービス、ショートステイ、グループホームなど、地域の公的サービスを早目に利用することや、ご近所の見守り、配食など地域ぐるみの協力も必要。そのためにも、医療、介護、地域のつながりが欠かせない。
厚労省は二年前に「認知症施策の方向性」の中で、「介護が必要になっでも本人の意思が尊重され、住み慣れた地域で墓らし続けることができる社会を目指す」と発表したが、実現するには問題が多く、しかも複雑だ。
ここに紹介したのは、ほんの一部。「ザックバランな話で、いろんな問題が見えてきた。このような機会を増やしていきたい」と岡田院長、「次回は、うまくいったケーブを中心に」と稲田代表。次回の日程も決め、2時闇にわたるこの日の熱のこもった意見交換会は終了。
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