今の医療レベルなら在宅診療、看取りも可能
病気などで体が衰え、介護の手が必要になっても、この住みなれた土地、わが家で最期を迎えたいと誰もが思うのでは。
ところが、いま病院で亡くなる人が80%に対して、在宅死は12%。
「戦前は近所のお医者さんにかかりつけ医として家族が病気になるとすぐ診てもらい、看取りまでお世話になるのは当たり前でしたね。」と井口和幸鎌倉市医師会副会長(井口内科医院院長)。
当時に比べると、現在の医療レベルは、病院でできることは在宅でも可能。医師、看護師が以時間サポートするには限界があるものの、緊急の場合でもすぐに駆けつけてくれる信頼できるかかりつけ医″がいるなど条件が揃えば、在宅診療は十分可能という。
問題は、介護にたずさわる家族の負担軽減。訪問看護、ケアマネージャー、ヘルパーなど介護保険の活用とともに、家族を支える地域の助け合いがあれば心身ともに家族の負担は和らぐと指摘。
国も日常生活圏域において医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく、適切かつ一体的に提供される地域包括支援ケアシステムを推進している。
そこで、高齢化率27・7%(平成24年3月末)の超高齢都市、鎌倉の先進的な取り組みをみると…。
「やってもらう」から「皆で支えあう」へ
昭和51年から分譲の団地に住む樽井彰子さんは自分たちの老後を考え「このままでは地域で助け合わないと暮らしていけない。」と「西鎌倉たすけあいの会」を28年前に立ち上げた。
まず始めたのが昼食の配食。要介護にならないためには何より食の確保が必要と考えたからだ。
高齢化が進む中、最重要課題となっているのが介護を必要としない健康寿命と平均寿命の差(約8年)をいかに短縮するかである。
若年者の体組織に比べ、高齢者は年とともに筋肉量と骨量が減少してゆく。その原因は栄養状態にある。低栄養や食事バランスが悪いと筋肉の減少が進み、一生懸命リハビリや運動をしても、生活習慣病や要介護原因1位の骨関連の病気予防にはつながらない。
そこで、樽井さんが理事長のかまくら地域介護支援機構では、4年前から食支援サポーター養成のための講座を開設した。内容は、栄養管理、食形態、摂食介助などで、「サポーターによる栄養相談が地域に根づくことで介護カアップにつながれば」と樽井さんは期待する。
この他、家事援助、見守りなど「困ったときはお手伝いしましょう」と地域の仲間と福祉活動にも取り組むなどその輪は拡がっている。
認知症ケアを通じて住みよいまちづくりを
高齢化率42・7%という超高齢地域の今泉台住宅地に認知症対応型デイサービス「ケアサロンさくら」がある。北鎌倉台商店街の空き店舗を利用し、2011年7月にオープン、3年目に入った。施設長の稲田秀樹さんは、かまくら認知症ネットワーク代表でもあり、この場所に開設した理由を「認知症ケアを通じて地域のつながりやまちづくりにつなげたい思いがあったから」と語る。
道路に面する施設はガラス張り、道行く人が笑顔で通り過ぎ、散歩で訪れる近くの公園では子供たちとの交流もある。
かまくら散歩″と称し、フラワーセンターや鎌倉中央公園などを散策、また、かまくら磨き″では、鎌倉学園の学生たちと鎌倉駅地下道路の清掃活動も行っている。「自然に触れたり、社会的な活動に参加することは認知症の発症防止、進行を遅らせるためにも効果的なんです」と稲田さん。
また、ケアサロンさくらの利用者で認知症に加え末期がんの方が寝たきりとなりデイサービスに来られなくなると、他の利用者とその人の家をお見舞いに訪れる逆デイを実践。医療関係者や介護職、地域住民の協力などによって、在宅での看取りをサポートした。
「つながり」を大事にする稲田さんは、利用者、家族、地域、世代を超えたコミュニケーションづくりに積極的に取り組んでいる。
それが住みよい、温かいまちづくりにつながるとの熱い思いがあるからだ。
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