鎌倉生活 2011年5月10日号 1ページ  
 

  篤志家の寄付で誕生 

 鎌倉に図書館が誕生したのが、明治44年(1911)7月20日。100年前のこと。多くの篤志家の寄付により、今の第一小学校の前身「鎌倉小学校」校庭の一角に、鎌倉町立図書館として呱々の声を上げた。
 なかでも当時坂ノ下に住む東郷慎十郎氏(1866〜1930)は、図書館建築費に1千円、図書1千冊を寄付している。
 この図書館は、関東大震災で全壊、小学校の講堂の一角に間借りし活動を継続していた。その後、大町蔵屋敷の御用邸跡(後の御成小学校の敷地内)に新図書館が建設されたのが、昭和11年(1936)。この時も、実業家間島弟彦氏の遺志により未亡人愛子さんが寄付して建設されている。
 別荘地、保養地として開け、鎌倉文士が集まった鎌倉ならではのエピソードといえよう。
 しかし、当時の図書館は有料で、利用者も限られていた。原則無料となったのは、昭和25年(1949)の図書館法施行によるもの。広く一般市民が利用するようになったのも、この頃から。
 現在の中央図書館開館は昭和49年(1973)10月。市内には、この中央図書館を核に、腰越、深沢、大船、玉縄に地域の図書館が配置され、知のオアシス、勉学の場として親しまれ、今日に至っている。
 100周年記念事業実行委員会事務局担当、腰越図書館長の中田孝信さんによると、「鎌倉図書館は神奈川県内の公共図書館の中では最も古く、全国でも78番目になる」という。

  「100年史」「100年の歩み」 発行 

 この100周年に向け2007年3月に「鎌倉市図書館畑周年記念事業準備委員会」(2010年、実行委員会に)を設準 2008年より市民活動団体提案協働事業「図書館とともだちのなろう(図書館振興)事業」も加わり各種イベントやPR活動が続けられてきた。
 そのメイン事業が「鎌倉図書館欄年史」など出版物の発行。
 「100年史」編集は、2007年秋よりスタートした。
 市の広報で公募した市民5人と職員4名の9人が資料収集から執筆、編集を担当、途中から専門委員2人がアドバイス(監修)として加わり、3年半をかけてこの春に完成。
 「450頁、300部を印刷。図書館など関係機関に寄贈します」(中田さん)。
 同時に一般市民、図書館利用者向けに写真や図版による「鎌倉市図書館100年の歩み」も発行する。

  復刻版絵葉書の発売も 

 また、観光地である鎌倉では絵葉書も多数発行されてきた。「これらを集め、鎌倉の絵葉書集を作ろうということで主に明治、大正時代の絵葉書の収集も行ってきたのです」。古本屋や骨董品屋から購入したり、一般からの寄贈を受けるなど、かなり珍しい絵葉書も集まったという。
 この「鎌倉絵葉書集」を1千部発行。こちらは寄贈だけでなく市販される。さらに、それらの中から、30種を選び、「鎌倉玉手箱」と銘打ち6枚1組、5シリーズの復刻版絵葉書も発売されるということで楽しみだ。

  作家藤沢周等の講演も 

  100年目の7月20日(水)には、生涯学習センターで100周年記念式典が開催される。午前中は市長、国会図書館長、日本図書館協会理事長、神奈川県図書館協会等の祝辞、表彰が、午後は鎌倉市在住の作家・藤沢周氏の「電子書籍・鎌倉・図書館」(予定)、続いて文化庁長官・近藤誠一氏の「文化と図書館」と題する講演が行われる。

  変わる図書館機能 

 現在鎌倉図書館の蔵書は約60万冊にのぼるそうで、まさに知識、情報の宝庫だ。しかも、図書館は誰でも自由に出入りでき、開館時間内なら何時聞いてもよいし、無料なのである。
 しかし近年、活字離れがいわれて久しい。インターネットの普及で利用者が減っているのではと思ったら、「いや、増えていますし、これからの図書館は変わりますよ」と中田さん。
 例えば、IT化は着々進み、コンピュータから予約注文もでき、必要とする本の検索もできる。今後は講座、講演、集会活動、展示などにも力を入れていく。市民からの「こんな資料はないか」などの問い合せにも答えるレファレンス機能も強化して行く方針。
 それどころか、「図書館は企業家のヒントになる資料の宝庫で、ビジネス支援にも役立つはずで、他機関との連携もあるのでは」という。古い資料を後世に伝えるだけでなく、さまざまな面で求められるニーズにも柔軟に対応していこうというわけだ。「さすが鎌倉といわれ全国からも注目されるようになりたいですね」と中田さん。そのためにも「まず、図書館に足を運んで欲しい」という。

 
 
 
 
 
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