鎌倉生活 2010年5月10日号 1ページ  
 

 木彫りの野鳥作品展が小町通りのギャラリーやまごで開催される。製作者はいずれもシニア。10年間の作品がズラリ並ぶ。 木彫りのバードウオッチングに足を運ぶのも楽しいのでは。

 一片の木から彫る野鳥彫刻  

  5月5日こどもの日の午後、笛田の鎌倉市教養センターに三々五々シニアが集まる。いずれもバードカービング(野鳥の木彫り)を趣味とするヤマセミの会のメンバー達。毎月第1、3水曜日に教室を開いており、この日は5月最初の集会だが、和気あいあいの雰囲気の中、いつもとは違う緊張感が。というのも、会にとって初の作品展が2週間後に迫っているからだ。各自、席に着くと、早速出品する作品の仕上げにとりかかる。  バードカービングとは、一片の木から切り出しナイフや彫刻刀などで鳥を彫り出して彩色し、作品に仕上げていく野鳥彫刻のこと。野鳥の姿をリアルに彫刻するため、大きさも本物と同じに、ただし1m以上は3分1が原則とか。

 会のメンバーは同期の講座受講生たち 

  60歳以上を対象のここ教養センターが、年間講座「野鳥の木彫り・バードカービング」の講座を開設したのが平成12年度。ヤマセミの会は、第二期生(20人)平成13年度の受講生たちのうち15名がメンバーとなっている。 「いずれも全くの未経験者、まさに60の手習いで始めたのですが、1年間の講座終了とともに解散というのはさみしい。これからも一緒にやりましょうということで生まれた同好会なんです」と作品展プロジェクト幹事の佐藤公保さん。以来、講座の講師、藤井昌子さんに引き続き指導を仰ぎ、ヤマセミの会も10年に。そこで、この際、10年間の成果を発表しようということになった。  「といっても皆年金生活でしょう。各自毎月千円を徴収、2年間積み立て今回の作品展となりました。60の手習いが70代に。まあ、最初で最後の作品展ですね」  と会長の高野慎太郎さんは笑うが、それだけにメンバーの思いは強いようだ。

 まさにシニア向け趣味 

  メンバーの何人かにバードカービングを始めた動機を聞くと、「ボケ防止」という答えが返ってくる。半分は謙遜なのだろうが、佐藤さんによると、「まさにシニア向けの趣味」だそうだ。  というのは、シニアは時間がたっぷりある、小刀、彫刻刀があれば彫れるので、経費もそれほどかからない。そして、野鳥を彫るには本物の観察が欠かせない。皆で野山をバードウオッチングして歩く。鎌倉近郊は自然に恵まれ、約制種類の野鳥が確認されるそうだ。野山でのお弁当、歓談これがまた最高。繊細な彫刻には、刃物の切れ味が肝心だから、小刀を研ぐ。野鳥をデザインする、色付けするなど…、作品に仕上げるまでの工程が非常に多い。一つの作品を仕上げるのに3、4カ月はかかるそうだ。 「この会は、みなさん元気だし、熱心。上達も早いですよ」と講師の藤井さん。

 約200羽を展示 会場は野鳥の楽園に 

  木材は、主にマレーシアやインドネシア産のジェルトンを使用する。その角材からスズメやヤマセミ、シジュウカラ、オオルリ、セキレイなどの野鳥、なかにはシマフクロウ、オオワシ、トキといった大型の野鳥も彫り出す。
 作品展には、メンバーか丹念に彫り彩色し、小枝や岩などにそれぞれ場面に合った台座に固定した、この10年間の傑作が展示される。約200点にのぼるということで、会場は野鳥の楽園となるにちがいない。「1人で10点以上を出品するのはあまりないですね。いかにみなさん熱心に作られたかということです。10年間のそれぞれの成長の過程を見るのも楽しいと思いますね」 (藤井さん)。

 子供達、若き″シニア にも見てほしい 

  会場には、稲束、かかしにスズメ50羽を遊ばせたオブジェも展示する。 「近年、スズメが激減している。野鳥が育つ環境の大切さを訴えたい。」(佐藤さん)。  また、多くの子供たちが見に来てくれればと、市内の各学校にもポスターを配布した。  会場には、野鳥の写真も展示。また、メンバー手作りのブローチなども格安販売。売上金は野鳥保護に寄附される。  そして何よりも期待するのが、「若い世代の参加です。次のシニアにバトンタッチしていきたい。そのためにこの作品展に興味をもってもらえたら嬉しいですね」と高野さん。その日、メンバー達は、総仕上げに向け黙々と取り組んでいた。

 
 
 
     
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