鎌倉生活 2010年3月10日号 1ページ  
 

 2人展が30人展に 

  「最初は私と阿曽沼さんとの2人展の予定だったんです」
 と語るのは、今回の「猫展」を立ち上げた徳富直子さん。それが「あれよあれよという間に」30名のアーチストによる一大イベントに発展していった。「猫がとりもつ縁というか、猫つながりですね」と笑う。
 2人展とは徳富さんと阿曽沼一司さん。徳富さんは石と和紙による創作人形作家。固い石に和紙をちぎり絵のように貼り合わせはんわりとした作品に仕上げる。昨年2月、鎌倉古陶美術館で個展を開いた。片や阿曽沼さんは石猫作家。テレビ朝日の「徹子の部屋」にも登場している。ある日、阿曽沼さんが教えるカルチャーセンターの生徒から、徳富さんの作品がとても良かったという話を聞き、すぐに電話。会って話すと意気投合、2人展をやろうということになった。しかし、猫好き作家は多い。それならグループ展にしよう。この話を聞いた鎌倉古陶美術館副館長の長谷川幹晃さんも、大の猫好きだ。「全館使ってやりましょう」ということになった。ネットで参加者を募ると全国から応募者が相次ぐ。
これが2人展から別人展へと発展した「あれよあれよ」の顛末というわけ。

 熱の入った作品300点超 

  テーマは「猫のかわいらしさ+アートとしての質の高さ」。参加するアーティストのジャンルも多彩だ。油絵・水彩・リトグラフ・ドローイング・版画などの絵画から、石塑・陶器・石・樹脂・布などの人形や立体作品、さらに切り絵、ミニチュアシルバー、彫金、有線七宝、タツセル等々、さまざまな猫作品が、美術館のあちこちに登場することになる。
 当然ながら、作品づくりにも熱が入る。「当初は気軽に考えていたが、今までで一番力を入れている」という阿曽沼さんは、海の石だけで作品を仕上げる「海猫」に挑戦。それも13匹、どれも原寸大というのだから大変だ。しかも13匹のほとんどはお世話になった人の猫がモデル。例えば、捨て猫だった徳富さんの愛猫つらら″や、長谷川さんのアカメ″などで、「皆さんにプレゼントするつもり」とか。
 徳富さんは猫100ボーズに挑戦中で、石塑、粘土、和紙でつくった愛らしいボーズの猫を出品する。
 沖縄から参加する徳尾聡さんは、琉球焼による猫を出品。相模原出身なのに沖縄に魅せられ、大学卒業後渡沖、読谷村で修行。今は独立し、うるま市で十九三窯″を開窯し、琉球焼のシーサーや仏像、陶器等を制作。
「サイトで猫展を知りすぐに応募しました。猫も好きだし鎌倉も好きなんです」と徳尾さん。小物を入れると20〜30点の出品になるのではと、こちらも制作に汗を流す。
 「出品作品は全体で300点を超えるのでは」と徳富さん。

 全館あげての描屋敷″ 

  会場となる鎌倉古陶美術館は、福井や横浜から幕末の豪農の家屋を三棟分移築し建築されたもので、荘厳感が漂う。もともと焼物の美術館で、通常、個展に使われるのはギャラリーの一室だが、今回は、「常設展示場も含め、すべて開放します。猫屋敷、猫御殿になるかもしれませんね」と長谷川さんも笑うが、同館にとっても初めての試み。会期も約1ケ月間、幟も揚げてムードを盛り上げる計画。さらに、横須賀線を挟んだ旧鎌倉街道沿いで経営する陶器販売・お食事処「かまくら陶芸館」も協賛し、陶器の猫製品をずらり並べるそうだ。

 さまざまなイベントも 

  また会期中は、作家作品が当たるくじびきや、お子様向け「アート体験教室」(やさしい猫小物づくり)/5月2日(日)13時〜15時、無料。先着10名 要予約。阿曽沼一司さんの「石猫教室」/5月3日(月)13時〜16時(要予約)、蝉丸さんの「絵付け体験教室」/土・日・祝日11時〜15時(予定)、出展作家による「かわいい猫小物教室」(4月28日〜5月5日13時〜15時。詳細は問合せを)といった楽しいイベントも用意されている。
 入館料も通常より安くし、大人300円、中高生200円、小人100円に。
 「猫いっぱいの夢の世界にしたい」(徳富さん)。
 「どれも芸術性の高い作品。できたら恒例化し、街のイベントになっていければいいですね」(長谷川さん)。
 のどかな春の一日、まねき猫に誘われて、猫展めぐりも楽しいのでは。

■「猫展」問合せ・予約TEL090-1652-9046(徳富直子さん)

 
 
 
     
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