鎌倉が生んだ日本の伝統工芸「鎌倉彫」。
この秋、市内各所で鎌倉彫のイベントが開催。鎌倉彫に親しみ、通になるのは絶好の機会です。
800年を超す鎌倉彫の歴史
鎌倉彫の歴史は源頼朝が鎌倉に幕府を開いたことにさかのぼる。宋から伝わった禅宗が広まり、建長寺、円覚寺など禅宗寺院が相次ぎ建立され、独特の様式の仏像をつくる鎌倉仏師も活躍した時代だ。当時中国からは堆朱や堆黒など、漆を何回も厚く塗り重ね、その層に彫刻した彫漆工芸品も盛んに輸入された。仏師は、それに倣って、木に直接文様を彫刻し、漆を塗る方法を考えつく。これが鎌倉彫として発展していった。800年を超える伝統を誇り、県内で最初に国の伝統的工芸品の指定を受けている。
この伝統ある鎌倉彫の造形美、魅力を知ってもらおうという展示や、もっと親しんでもらおうというイベントが。(⇒参照)
貴重な鎌倉仏師の彫像から意匠まで
開催中なのが、鎌倉芸術祭参加の「博古堂 二百年の仏像と鎌倉彫」と「鎌倉彫意匠展」。
現在鎌倉仏師の流れを受け継いでいるのは後藤家と三橋家だけ。その後藤家は、博古堂として鶴岡八幡宮前に店と工房を構えてきた。今年3月のリニューアルオープンを機に開催された展示会。1階は戦後の鎌倉彫を支えた先代(28代)の後藤俊太郎の作品飾額・椿など6点ほかを展示。また、2階展示室では、26代目当主の後藤斎宮(いつき)作十二神将(申)像や27代目運久作の閻魔王座像などが並ぶ。興味を引くのが、「一百年間保証券」と書かれた1枚の保証書。漆が剥落するようなことがあれば新品と引き替えることを百年間保証するというもので、職人の自負を見ることが出来る。
鎌倉彫会館で開催中の鎌倉彫意匠展は、後藤・三橋両家に伝わる文様から現代の作家のものまで、鎌倉彫の命ともいわれる意匠(デザイン・文様)が展示されていて興味深い。
同会館1階には、室町時代から現代までの名作を約400点所蔵、数ヶ月ごとに企画替え展示、歴史と製作工程のビデオの放映も行っているので、併せて鑑賞されることをおすすめする。
参加大歓迎のイベントも
鎌倉彫にもっと親しんでもらおうというイベントが、お馴染みとなった鎌倉彫工芸館まつり。鎌倉彫というと高級、難しいといったイメージがある。「そんな固定観念を払拭し、もっと身近な物として皆さんに馴染んでもらいたい。また、次世代の若い人にも鎌倉彫を知ってもらおうというイベントなんです」(伝統鎌倉彫事業協同組合理事・小園敏樹さん)。木工ロクロの実演から、お皿や小鏡、アクセサリーなどを体験してもらおうという体験教室(参加料2000円)、鎌倉彫の器でお点前というお茶会(一服200円)、そして掘り出し物市。職人たちの蔵出し品や見切り品、セットくずれなど、製品だけでなく木地までが廉価で販売されるとあって大人気。この他、鎌倉彫が当たるお楽しみ抽選会や漆器相談も。
最新の傑作も展示ー創作展
また鎌倉国宝館では、同事業協同組合主催の第35回記念鎌倉彫創作展が開催される。鎌倉彫作家の応募作から創作大賞、準大賞、神奈川県知事賞、鎌倉市長賞などが決定、作品が展示される。鎌倉彫の芸術性、可能性などを知る上でも興味深い催しだ。
「鎌倉彫と世界遺産登録に関する講演会」では、鎌倉国宝館館長の三浦勝男さんの「鎌倉彫を世界遺産に」、元神奈川県工芸指導所鎌倉支所長 「伝統工芸“鎌倉彫”中性のかがやきを今に」などの講演が。
このようなイベントが一同に開催されるのも、鎌倉彫を生んだ鎌倉ならではのこと。鎌倉彫に親しみ、通になるには絶好の機会。晩秋のひととき、鎌倉彫ざんまいというのも楽しいのでは。 |